雪の森 最終話 夜逃げの森
4人は屋外にいた。もう夜中である。しかし、先ほどまでいたツリーハウスはない。消火活動はした。しかし、魔術で作り出した嵐の勢いが強すぎてツリーハウスは大樹ごと、跡形もなく吹き飛ばされてしまったのである。その嵐を放出した女の子はかわいらしくぐっすりとシクロの背中で眠っている。まだ8歳、もうすぐ9歳である。時間帯も深夜に近いため起きていられない方が普通である。
「……どうするよコレ」
「シクロさん、もうリュウスイに顔向けできないんですけど」
「あたしゃ知らんぞ」
不穏な空気が流れる。完全に途方に暮れてしまった。
「……風の国、オキシに逃げよう」
「逃げてどうするのよ」
「コハクを家まで送ってまた仲間を探す旅だな。新しいおつかいってわけだ。シクロもあてがないんだから俺について来い」
うーん、とシクロは考えたが、やむを得ないと思い頷いた。
「よし、じゃあ婆さん、ブルーミアの城に行ってこのことを報告してくれ。銀髪の爺さんがたぶん何とかしてくれる、たぶん」
「そういえばおまえさんはブルーミアの城から直々に魔王討伐を頼まれたのじゃったな。わかった、行ってくるよ」
「ここまでありがとな、婆さん」
「いいんじゃ、それよりも孫を頼んだよ」
跡形も無くなったツリーハウスを離れて一晩を採掘所に避難して過ごした4人は夜が明けると目的地に移動し始めた。おばあさんはブルーミアの城に、雷帝丸たちはここから南に位置する風の国の首都オキシに向かって歩みを勧め始めた。オキシまではそこそこ距離があるため長丁場になる。しかし手元には最低限の道具しかない。
「ほとんど夜逃げじゃない」
「そうだなぁ。結局リュウスイには立ち寄らないで出ていくことになっちまったし…仲間ができたから結果オーライだけどな」
「誰が仲間よ誰が」
雷帝丸は今回の戦いで使うことがなかった剣と盾を、シクロはコハクを背負い、コハクは自分の箒を背負ったまま眠っている。しかし3人は目に見えない罪を背負っている。そのせいか足取りがとても重い。唯一コハクは健やかな寝顔を保っている。これからの3人の旅はどうなることかはわからない。しかし、ひとまずの目的地はかつての魔術大国、風の国である。これらの地域は雪の被害の圏外なので寒さに耐える必要はなくなる。そこだけはありがたい点である。しかし本来の目的である魔王の城は北にある。そのため真逆の方向に進むことになる。果たしてそれが吉と出るか凶と出るか……それは神のみぞ知る。
「あたしはあくまであんたの所にいなきゃいけないからいるだけだからね」




