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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
雪の森
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雪の森 ⑬雪と炎と魔術の嵐

 ツリーハウスの中には雷帝丸、シクロ、おばあさん、女の子の4人がいる。おばあさんは女の子が二人を運んできたことに驚いていた。おかげで雷帝丸とシクロは日が沈む前にツリーハウスに戻ってくることができた。二人は女の子に回復の魔法をかけられている。ここに二人を運んできたのも魔術を使用して簡単に連れてきたためである。

「それにしてもこんなに小さいのに魔術師じゃとはのぉ」

「うん! コハクは通しすがりの魔術師だよ!風の国の首都オキシから旅をしてて、歴代最年少の魔術師だから! 」

 エッヘン、と少し自慢げな女の子は自らをコハクと名乗っている。

魔術師は各国で試験を受けて合格した者が名乗れるが、ほとんどは30歳を超えてからでないとその試験に合格することができないくらいの莫大な知識と実力が必要になる。

「マジで!? 風の国なんて魔術大国じゃねーか! しかもそこの歴代最年少なんて天才以外の何物でもないじゃん!? 」

「魔術大国だったのは昔の話なんだ。コハクが生まれた頃には学問の国になってたよ」

 風の国。それはかつて魔術の大国であることで有名だった。しかし、花の国が魔王によって支配された時期と同じころに別の魔王によって支配され、発展した魔術を悪用されたことで大きな事件となった経緯がある。そのため10年前に魔王討伐後は魔術の研究は特別な許可を得ない限りは禁止している。その代わりの産業として新たな道をして学業に力を入れ始めたのである。魔王に支配されていた時期は花の国よりも長いため、花の国の支配よりも風の国の支配の方が世間的には有名になっている。


「風の国ってもう少し南の方よね? 」

「そうなの。コハクはお勉強のために一年間一人で旅してるんだけど、もうすぐ約束の一年が終わるから帰ろうとしてたところなんだ」

「そうなのかい!? これまた大変じゃのぅ。こんなに小さいのに…」

「それにコハクはもうすぐ9歳になるから、ママに会ったらお誕生日をお祝いしてもらいたくて、えへへ」

「あぁん!! めちゃくちゃかわいい~! この子に助けられてほんっとに幸せぇ~! 」

「え、あ、うん、そうだな」

 シクロの目が少し怖い。動けないはずの身体が飛び上がり、コハクを抱きしめておなかに頬ずりをし、背に回した手で背中とおしりを撫でまわしている。雷帝丸はその様子を見て少し怯えている。コハク自身も撫でまわされて怯えている。若干犯罪じみた行動をする孫を横目におばあさんが雷帝丸に話しかける。

「さて、それはいいとして、さっき伝令が来たんじゃ。今回の森の爆発について聞きたいんだそうじゃ」

「あ、さっき戦ったヤツの話か?ここにヤツの死骸があるんだけど、これで討伐したって証明にならないよな……」

 雷帝丸は懐から短い木の枝に刺したメタンガストパスの触手を取り出すがおばあさんは話を続ける。

「そのこともそうなんじゃが爆発で森が一部吹き飛んだことじゃ。大規模な環境破壊を行ったことについて知りたいそうじゃ」

「え? は!? なんでよ!? 」

 予想外の展開である。今回の事件は雷帝丸たちには責任はない。たまたま近くにいたから安全のために討伐しただけの話である。それをいかにも罪人のように扱われては雷帝丸は納得がいかない。


「シクロ、お前も呼ばれているんじゃ。国の借金の話もしたいとな。」

「え? マジで? 」

 シクロは物足りなそうな顔でコハクを離し、コハクは何とも言えない複雑な表情を浮かべている。するとシクロは雷帝丸の持つ触手に気が付き悲鳴をあげた。

「いゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!! なんで持って帰って来たの!? バカじゃないの!? ロープで縛り上げてやる!! 」

「なんでよ! これは戦果だ! ほとんどないけど証拠として国に届けるんだよ! 」

「知るか!! この野郎!! だから男は嫌いなんだよ!! 」

 そういってロープを手に取り暴れ始めるシクロ、逃げる雷帝丸。二人は回復の魔術ですっかり完治したようだ。

「大人ってこんなに子どもっぽいの? 」

「こいつらがおかしいんじゃ。コハクちゃんはこうなっちゃダメじゃぞ……なんか焦げ臭いのぉ」

「それにちょっと煙い。料理焦がしちゃったの? 」

「いや、火は暖炉に入れてあるだけなのじゃ、が……!? 」

 暴れている勇者と格闘家。格闘家が持つロープは半日ほど前まで勇者を縛っていた物である。成人男性一人を縛り上げることができるその長いロープの片方の端はいつの間にか暖炉に投げ込まれていた。しかも火が付いたロープの端は二人が動くことで暖炉から出て床に着火していた。

「おい! シクロ、雷帝丸! お前らのせいで火事じゃ!! 火を消せ!! 」

「え? 」

「は? 」

 状況が掴めない二人は何が何だかわかっていない。しかし、暖炉の外にはみ出た業火を見て慌てだした。


「や、やべぇ!! 水! 水ぅぅぅ! 」

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 炎とか爆発とかもうこりごりよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 」

「外に雪があるから取ってくる! 」

「それじゃ遅いわい!はよバケツを運ばんか!!」

「ここは任せて! コハクが一瞬で火を消すよ! 『コール』! 」

 コハクが炎の前に出た。3人が危ないと声をかける。そのころにはコハクは魔術を発動させるために魔力を高めていた。白いオーラが渦巻く。シクロから放たれた一撃は、想像を絶するものだった。

「な、なんだこりゃ……さっきの回復の魔術とはけた違いな迫力だぞ!? 」

「魔術はからきしわからんが、とても頼もしい女の子じゃ! 」

「今はコハクちゃんに任せよう。頑張って!コハクちゃん!! 」

「『ウォーター、ミスト、トルネード、クレイ、ブースト、……』」

 言葉を紡ぐ度にコハクを渦巻くオーラが青緑色に変色し、オーラの激しさが倍増していく。冷たい風が吹き荒れる。吹き荒れる風の中から魔法陣が生成されて、最後の言葉が力強く発せられる。

「『……ブラスター!! 』」

 解き放たれる雨と風は炎に向かって一直線に向かっていった。その嵐の勢いは一瞬に炎をかき消した。そしてその嵐はとどまることを知らなかった。




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