雪の森 ⑫通りすがりの魔術少女
雷帝丸たちが戦っている最中の出来事。丁度旅をしている少女が空を飛んでいた。
「オキシまでもう少しかかりそうだなぁ。うぅ、もう夏になるのにこの辺まで雪が積もってて寒い…ん? 爆発? 」
箒に跨り空を飛ぶまだまだ幼い女の子がいる。歳はまだ2桁になっていない程度の顔つきをしている。大きなとんがり帽子にフリフリのスカート、黒いニーハイソックス。無意識なのか太ももどころかスカートの中までを惜しげもなく披露し、フリフリがこれでもかと着いたシャツにスカートを支えるサスペンダーを付けた女の子である。旧世界でよく見るような魔法使いのお手本のような服を着ていて、いわゆる魔術師に相当する。この少女は雪の降っていないそれを飛ぶ。空では視界良好故に雷帝丸たちが戦いを繰り広げていることがなんとなくわかった。
「誰かいるね…『コール』! 」
女の子は魔術師であるため魔術を駆使する。この一言で女の子の周りに風のようなオーラのような何かが発生する。
「…『スコープ、ヒアリング、ブースト、ブラスター』! 」
言葉を唱える度に読めない文字が風の中に溶け込んでゆく。すると色が僅かに白っぽく変わり、『ブラスター』の掛け声と共に何かが散り散りに消えてゆく。
「……勇者のおじちゃんに格闘家のおねぇちゃん? あの二人が何かと戦ってるみたい。たいへん! 助けに行こう! 困ってる人がいたら助けてあげるのも魔術師のお仕事の一つだもん! がんばるz……えぇっ!? 」
遠くの様子を見ることができる魔術と遠くの音が聞こえる魔術を自身にかけていたようで、二人の様子を確認しれ一人で密かに助けてあげようと意気込む女の子は箒の飛行速度をあげて現場に急行する。が、到着した頃には女格闘家が火打石で火を付けようとしているところだった。爆発まで3秒も無い。女の子の判断は早かった。
「『プロテクション』!! 」
ここは先ほどまでぬるぬると攻防を広げていた戦場跡である。しかし、今はその見る影もない。海獣が可燃性のジェルを拡散して戦ったため、爆発やその火の粉によってリュウスイとブルーミアをつなぐ雪の森の一部が跡形もなく焼け焦げていた。その中心地近くにはアフロとアホ毛の勇者が一人、アフロの女性格闘家が一人、海獣の触手が一本転がっていた。
「……」
「……」
「……おなかすいたわ」
「…食べる?海獣の脚」
「いらない。ぬめぬめしたもの嫌い」
爆発から数時間経過した。二人の意識はしっかりしている。海獣は自身の大爆発で退治できた。空は赤く染まっている。そろそろ帰らないといけないが、二人とも身体が動かない。二人ともその場で仰向けになってぼーっとしている。
「シクロさん。なんか勝てましたね」
「そうね、変態さん。世の中は男だろうが魔獣だろうが、変態ばっかりってことを改めて知ったわ」
「俺の名はさっちゃんだ。というかなんか誤解してない?」
「どうだか」
そんな会話をしていると、空から何かが下りてきた。
「あ、あのぉ……」
箒にまたがり、空からゆっくりと地上に着地した小さな女の子。スカートの中は見えないタイプのもこもこしたスカートのためパンツは確認できない。二人はその女の子に目をやる。
「ん? 誰だ? 」
「コハクは通りすがりの魔術師だよ。爆発の時にコハクが防御の魔術をかけたんだけど……」
自己紹介が独特である。この女の子の名前はコハクと名乗り、魔術師であることも明かした。
「この男に近づかない方がいいわよ。エッチなことしてくるから」
女の子は二人に問いかける。その女の子は魔術の使い手のようで、この二人が助かったのは女の子が奇跡的なタイミングで防御の魔術を二人に仕掛けたためである。二人は本来感謝しなければならないのだが、そんなことはお構いなしに雷帝丸はさらにお願い事をする。
「ありがとうお嬢ちゃん、物のついでで助けてほしいんだ。全身の骨が折れててやけどもしてるし痣もひどいんだ」
「この男は置き去りにしていいからこの近くのツリーハウスまで送ってほしいのよ。疲れて動けないの」
「まって!それはないだろ!? 一緒に戦った仲間じゃないか! 」
「その仲間に戦力外通達をしてやってるのよ。パーティから外れなさい」
「いやいや! パーティのリーダーは俺だから! 俺は勇者だから!! 」
「そんなセクハラばっかりする勇者がいてたまるか!! 」
仰向けになって倒れている二人は言い争いを始めるが、そんな二人に女の子が怒った。
「ダメだよ! 仲間を見捨てちゃ! ツリーハウスならさっき見かけたから、そこに二人とも連れて行けばいいよね!! 」
「「は、はい……」」
コハクから見て二人は大人に見えるのだろうが、二人はとてもかわいらしい見た目と声できつく怒られて年上の威厳はない。
ついに魔術が本格的に絡んだ人物が登場しました。通りすがりの魔術師の名前はコハクと言います。世間で言うところのロリ枠にあたり、この子にはある秘密がいくつか隠されています。
この女の子がここを通りすがった理由は次回明かされますが、幼いこともあって自分の個人情報をペラペラとしゃべります。個人情報は大切に扱いましょう。




