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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
雪の森
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雪の森 ⑩リベンジの幕開け

 雷帝丸は外にいた。小さいメタンガストパスは見つからないだろうが、それでも外の様子を確認したかった。雪は止んでいて太陽が顔を出す。雪からの照り返しが強い中で歩みを進めると爆発跡に着いた。しかしここにはいなかった。雪が止んでいることもあるが地面に積もっているであろう雪がない。土が見え、少し濡れていて、可燃性ジェルがあちこちで凍っている。凍ったジェルは洞窟で生成される尖った美しい鉱石のように幻想的で美しい。メタンガストパスがいないことに少しほっとしたのか雷帝丸は剣と盾のセットを降ろし、なぎ倒された大きな木の残骸に座り込んだ。

「ふい~っと。さっきのところだな。しかしまぁ、小型魔獣の一種だからそんなに強くないって思ってたけど、実際めちゃくちゃ強かったな。こんなに大きな爆発をしても、婆さんの話じゃまだ平然としてるんだろ?自爆してるのに本体が無事だって反則だろ……近くにヤツをおびき寄せておいてシクロが点火してくれれば自爆するだけで相手は死ぬんだし」

独り言をつぶやきながら周りをよく見ると雪に埋もれているにも関わらず木が燃えている。可燃性ジェルは雪の中でも燃える性質があるようだ。本来は海にいる海獣である。当然であると言えば当然だが、空気がない水の中だろうが雪の中だろうがお構いなしに燃えるようなジェルになっているらしい。

「それにしても、どこにいるんだろうなぁ、あの海獣。いや、一回探索をやめてあの採掘所に戻るか」

 少し隙を見せたのがいけなかった。降ろしていた武器を拾おうとして武器に目をやると、雷帝丸の盾にメタンガストパスが張り付いていた。

「いっ!? やば!! 」

「ずももももももももも! 」

 体内にガスを貯め始めた。膨らむ速度は雷帝丸が最初に見たときよりも遅い。直径は70センチほどである。

「ま、まだ行けるか!? 」


 雷帝丸は足元に転がっていた木の枝を拾い、メタンガストパスを突き刺そうとした。しかしメタンガストパスは体内に少しだけ貯めたガスを嘴から噴射して勢いよく盾から離れ、木の枝の攻撃を回避した。

「ずももも……」

 メタンガストパスは少し疲労しているようだ。雷帝丸はそれを見逃さなかった。しかし、雷帝丸はすでにかなりの手負いである。全身の骨が折れているほど殴られている雷帝丸。痣だらけの身体で先ほどの爆発の衝撃も受けている。その場に左膝を着いてしまい、実は体力の限界を迎えていたことを嫌でも思い知らされるのだった。

「いっ!? いたた……あぁ、あとちょっとなのにぃ!! 」

「ず、ず……ずももももももももも!! 」

 絶好のチャンスを逃したところでメタンガストパスが再び膨らみ始める。メタンガストパスが疲労していることはわかっているが、雷帝丸は身体が思うように動かない。ここまでのダメージが大きすぎる。雷帝丸は木の枝を捨て、盾と剣を回収して一応防御の体制を取るが、左膝が地についている。

「今のヤツはスタミナ切れ、疲れてるんだ。でもこっちが…動けよ、動いてくれよ……! 」

 少しずつ膨らむメタンガストパスを前に何もできない雷帝丸。ゆっくりゆっくり膨らむその姿は罰ゲームのような感覚で恐怖を与えていくが罰の規模が違いすぎる。3メートル、5メートル、7メートルと膨らんでいくその海獣はまるで死のカウントダウンを数えているようだった。メタンガストパスは次で仕留めるつもりである。今度大きな爆発をしてしまえばひとたまりもない。一撃で勇者の丸焼きの完成である。それを阻止したいのだが、もうどうすることもできない。この短い期間で何度も雪の中で死にかけているが、今回は本当に死を覚悟した勇者雷帝丸。

「ここまでかよ! ちきしょおぉぉぉぉ!!! 」

 せめて最後は仲間に看取られたかった、そう思った時だった。トントントントンと何かの音が近づいてくる。雷帝丸は思わず後ろを振り向くが何もない。しかし何かの影が雷帝丸の頭上を通り過ぎた。その陰は大きくなっていくメタンガストパスに近づいていく。影は空高くから滝のように勢いよく落ちていく。しかしその陰の姿は落ちていくというよりトントントントンと駆けていくの方が正しい気がするほど美しく、大きく膨らんだメタンガストパスに必殺の一撃を叩き込んだ。

「てりゃあぁぁぁああ!! 」

 その蹴りは深く深くにめり込み、溜まらずガスを吐き出したメタンガストパスは風船のように吹き飛びながらみるみる小さくなっていく。

「…来てくれたんだな!シクロぉ!!!」



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