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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
雪の森
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雪の森 ⑧海獣の登場

 雷帝丸の行動は早かった。全身が痛い。それもそのはず、少なく見積もって100か所は骨に異常があると言われたくらいだった。それでも雷帝丸は防具を着込み、レプリカの武器を携え、コートを羽織ってツリーハウスを出た。外は吹雪いていた。全身に叩きつけられる雪が身体に染みる雷帝丸はその染みる痛みに耐えながらシクロを探していた。

「婆さんとの世間話で言ってたがリュウスイは漁業が盛んだったが一部地域がこの大雪で漁に出られなくなっていたってなぁ」

 雷帝丸はツリーハウスを出る前にリュウスイについておばあさんから聞いていた。大雪で漁ができないこと。漁ができないということは調査船を含めたそのほかの船も出しにくいこと。大雪になる少し前から炎の海獣のウワサがあったこと。そして……

「『海獣はいつ暴れ出してもおかしくなかった』か」

 海獣。魔獣の一種であるが、海にいるものがそう呼ばれる。生態がわからない種も多い。今回はその生態がわからない海獣の一種が来ていたというが、大雪で充分な調査ができなかったのだ。今回の大雪の一件が国を跨いで被害が出ていること、すなわち大規模な事件になっていることを雷帝丸は実感した。ある程度進むと木がなぎ倒されていた。残骸のいくつかはこの吹雪の中なのに燃えている。その木の残骸の中に少女シクロが仰向けになって倒れていた。

「シクロ? おい! シクロ!! だいじょうb」

 雷帝丸は痛い身体に鞭を打ち、倒れているシクロに駆け寄った。しかし雷帝丸は雪が固まって出来ている氷に足元をすくわれ、倒れているシクロの放漫な胸に顔から突っ込んだ。

「ひゃん!? 」

 少女の胸はバインッ!と特有の弾力とその音を出すにふさわしい大きさがあるからこそ出せる効果音を出し、雷帝丸は一瞬天国かのような世界を覗くことができた。が、その直後に頭に鈍痛が走り、吹き飛ばされて大きなたんこぶができた。おかげで雷帝丸は吹雪の森の中でお花畑も見ることになった。しかしすぐに意識が戻った。雷帝丸は開口一番にこう言った。

「ただいま。あぁ、ナイスな一撃、いや、ナイスなおっぱいありがとう! 」

「帰ってくんな! 」


 シクロは座ったまま大きく振りかぶって雷帝丸のたんこぶの上に追加でたんこぶを作った。シクロは寒さなのか恥ずかしさなのか顔を真っ赤にして涙目だった。しかしたんこぶを2つ作られた雷帝丸はしぶとく生き続ける。

「まぁ大丈夫そうだな。よかったよかった」

「全然よくない! というかなんで私の名前を知ってるのよ!? なんでここにいるのよ変態!? 」

 シクロが問いただすと急に10メートルほど離れた雪と木の残骸の中から赤い何かがズモモと膨らんできた。それを見たシクロは怯えて雷帝丸に言った。

「ひぃ! アイツにやられたんだ! 逃げよう!! 」

「あ、あぁ! 」

 雷帝丸はそう言ってシクロの手を取った。が、シクロは立ち上がれない。

「おい! やられるぞ!? どうした!? 」

「どうしよう、腰が抜けた……」

 ぎょっとする雷帝丸。涙目のシクロ。雷帝丸の後ろでは赤い何かが膨らみ続け、気が付いたら5メートルほどになっていた。

「ちきしょう!今は殴るなよ!! 」

 雷帝丸は殴られること覚悟で赤い何かを背に、シクロを覆うようにぎゅっと抱いた。すると赤い何かはカチンッと音がして爆発した。ドカンと響く轟音と共に爆風が2人を襲う。

「ひぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 」

「っ!!? 」

 雷帝丸は吹き飛ばされると同時に悲鳴をあげ、シクロは驚いて声すら出てこなかった。そして二人は雪や木の残骸と共に吹き飛ばされた。




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