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エンフォリエ侯爵家の謎

「カメロどうした?いきなりエンフォリエ侯爵家のことが知りたくなっただと・・・いやまてあの女か?」

カメロは眼の前の遊び人の同郷の悪友が見かけによらず頭の回転が早い事に満足した。

カメロは殿下の執務室から形ばかりの連合軍司令部に戻ってくるとそこに詰めていたオレクを呼び出して会議室に連れ込み相談を持ちかけたのだ。


「そうだ、あの女魔術師の弟子でゼリー=トロットと名乗っていた女だ」

オレクはそれに頷く。

「やはりあの女の事か、それで俺に何を聞きたい?」

「残念だがここでは調べようが無いんだ、お前の知っている範囲でいい」

オレクは少し思い出すそぶりを見せていた。

「エンフォリエ侯爵家は名門貴族の家柄だが、魔術師の素質のある者を代々生み出した、特に精霊宣託術に長けている者が多くでた、王家のお抱えの精霊宣託師として王国に帝国に仕えてきたのさ、俺の家はその分家にあたる」

そこまではカメロも知っていた、だがエンフォリエ侯爵家が没落した詳しい事情は知らない。


「エンフォリエ侯爵家はなぜ没落した?」

オレクは友人の言葉に驚いて言葉に詰まった、だがやがて言葉を繋ぐ。


「アルヴィーン大帝がお隠れになり後継者戦争が始まった、エンフォリエ侯爵家は政争に破れたのさ」

カメロは後継者戦争の詳細を思い出す、大帝の死と共に西エスタニアへの遠征計画は取りやめとなった、大帝には幼い息子達がいたが、立皇太子前だった事もあり後継者の指名は混迷を極める。

広大な帝国の後継者をめぐる暗闘が始まりそれはやがて後継者戦争に燃え広がる、そして各地で反乱が起き始めたのだ。

急膨張した帝国は大帝のカリスマに支えられていた、その中心が消えた時から帝国の崩壊は始まったのだ。

だがエンフォリエ侯爵家がどの派閥に属していたのかまでは詳しくは知らなかった。


「侯爵家はどの派閥に属していたのだ?」

オレクはしばらく考え込むそして何かを決断したように見えた。

「『セクサドルの大樹の連枝から次の皇帝が生まれる』と精霊宣告が下されたんだ」

「それは当たり前だろうが?」

カメロは自分でそう言ってから気付いた。

「大帝の直子では無いと言う事か!」

オレクは頷いてそれを肯定した。

「そうだ、それが大きな問題になった、俺のエンフォリエ伯爵家はセクサドル王国の建国王から枝分かれしたホーエンヴァルト公爵家を支持したんだ」

ホーエンヴァルト家は建国王の血を引くセクサドル帝国の名門の家柄だ、今のセクサドル王国の王家になっている。

帝国は崩壊したがホーエンヴァルト家は旧セクサドル王国を復興させ今に至る。


更にオレクはその先を続けた。


「侯爵家はアウデンリート公爵のイスタリア家を支持したんだ、だが詳しい記録が残っていない」

「エルニア大公家か、カシナート帝の次男の家柄だが後継者戦争で傍観を決め込んだ家だ」

「そうだ、そしてニール神皇国に臣従し大公爵となり独立してしまった」

オレクは苦笑いを浮かべた、帝国の宗室を見捨て独立したとカメロの祖国では評判の良くない家だ。

だがそれで継承者戦争から身を遠ざけ生き残ったのだから賢明とも言える、カメロはイスタリア家がセクサドル王国以外の国からそう見られている事を知っていた。

そして帝国に連なる名門で生き残り力を残したのはホーエンヴァルト家とイスタリア家だけだった、家門を残した家はまだ幾つかあるが大きな力を持ってはいない。


「エンフォリエ侯爵家はアウデンリート公爵が帝国を次ぐと信じたのか?」

「ああ、だが帝国は崩壊しセクサドル王国が復興したのだから、俺の先祖の判断のほうが正しかったようだ」

カメロは何かが引っかる。

「精霊宣託はセクサドルの大樹の連枝から次の国王が生まれると言っていたのか?」

「いや言ってはいない、それに帝国は滅んだんだ皇帝が生まれようがない、精霊宣託は誤差や僅かな間違いがあるんだカメロ」

「なるほどそれは良く聞く話だ、それで侯爵家は内戦に破れたのか?」


「いや侯爵家で内紛が起きて自滅したんだ、テレーゼ王国の復興で領地は滅ぼされ分割されてしまった、たしかテレーゼ南西部に領地があったはずだ、テレーゼに子孫がいても不思議じゃないさ」

ここまでは整合性があるようにも思える。


「オレクあの女の目的は何だと思う?」

「女、ああゼリー=トロットか、それがどうした?」

「俺たちの前であのメダルを落とした、それは偶然なのか?お前はエンフォリエ伯爵家の縁者だ」

ゼリーがハイネ城付き使用人の身分証を提示しようとした時に、エンフォリエの徽章が刻まれたメダルを石畳の上に落とした、そこにオレク=エンフォリエがいたのだ、女は親から貰った様な話をしていたがそれは偶然なのだろうか。


「なるほど何か目的があると言うのだな、一番ありえるのはエンフォリエの縁者として取り立ててもらう事だな」

それが一番自然な事なのは間違い無い、だがカメロはまだ納得できなかった、何かが引っかかる。

「なんとかあの女に接近したい、そこでお前に頼めないか?」

「なんだと?」

オレクは不審な目でカメロを睨む、あからさまに警戒している、カメロは更に言葉を続けた。

「お前は城の女官や使用人と仲が良くなるのがうまいじゃないか?お前がエンフォリエの縁者ならあの女に近づきやすいはずだ」

オレクは肩を竦ませてみせる。


「俺もあの女に興味がある、エンフォリエの名前を使って何をしようとしているか興味があるぜ」

カメロは悪友の肩を叩いた。





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