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闇王国の影

「愛娘殿、精霊王とのつながりは切れたままなのか?」

ルディが机の上のアマリアのペンダントに向かって語りかける。

『うむ、あの日わしのサンサーラ号が座礁した時から接触が切れてしまった、奴は事故で壊れたわしの体を修復再構成してくれた、だが体から魂が遊離してしまったのが原因かもしれん、それから再融合の方法を探ってきたのじゃ、この新しい体のおかげではかどるようになった。

木偶人形やひよこやカラスではできぬ事も多くての、礼を言うぞベルサーレよ』

ちなみに木偶人形とはハイネから境界の世界に招かれたルディとアゼルを最初に出迎えたのが操り人形の様な姿の木偶人形だった、そして境界の世界の魔物を倒した時に現れたのが不格好な姿をした二匹の生物だった、姿がひよことカラスに似ていたのでなんとなくそう名付けられた。

全員の視線がベルに向いたが本人は苦虫を噛み潰したような顔をしている。


「僕の体をかってにコピーして・・・」


『すまぬな、正直に言っても許さんだろうとおもうての』

「許すわけないだろ!」

『じゃがこの年齢の体を動かすのは楽しい、わしとはタイプが違うが、ほほほ』

ペンダントの向こうのベルの体の中のアマリアが笑った、声はベルと全く同じだ。

アマリアの声は少し浮かれていた、それがベルの怒りに油を注いだ。


「何か禄でも無い事しているんじゃないだろうな?」

ベルは更に語気を強めた。

『貴重な渡り石を浪費するわけにもいかん、遊び歩いているわけではないぞ?ワシの遺産を回収するのに人と交渉する必要がある場合があっての、これはひよこやカラスにはできぬ』

ベルはペンダントに顔に近づけて叫んだ!!。

「その姿で人前にでたのか!?」


『木偶人形が出てきたら向こうが腰を抜かすわい、わしは魂の再融合に成功せねば精霊王とのつながりを回復できぬと考えておる。

幽界の門はわしの元の肉体にあるからの、ホムンクルスでは再現できぬ、元の体と再融合に成功すれば精霊宣託を知る手がかりも得られるかもしれんぞ?

精霊王が禁忌を破ってくれるかどうかはその後の話じゃ、そしてセザールの野心を阻み奴の背後にいる存在を探る事もできる、今のままでは魔術すら難しいのじゃよ』

アマリアはゆっくりと説得するかのようになだめるかのように語る。


「アマリア様は魔術の使用が制限されているのですか?」

それはアゼルの声だ、その声には不審と疑いの響きがある。


アマリアの声はわずかに沈黙した、その沈黙がかえって緊張を産んだ。

『お主達なら教えてもよいか・・今のわしの力はサンサーラ号に依存している、わしの魂を保持しているのもサンサーラ号じゃ、機関を修復し現実世界に戻るためにも再融合が必要なのじゃよ。

サンサーラ号は世界境界を越える力を蓄えておる、そのペンダントも木偶人形も玉虫もその力で動いておるのじゃその程度なら半永久的に持つがの』


「疑問の一つが消えました、アマリア様はいままで我々のために通路を開いてくださいました、その力がどこから来ているのかと」

『ああ、お主たちが渡り石を持っていたおかげで力を節約できたのじゃ、あれがなければ千倍の力が必要になるぞ』

渡り石とはラーゼの古道具屋でベルのグラディウスの鞘を買った時に同じ店で偶然見つけたダガーの事だ、二人はそのダガーに何かを感じ取り二束三文で手に入れたのだった、そのダガーは二度に渡る境界越えで使いつくされてしまったが。


「アマリア様、あのダガーは無くなってしまいました」

『アゼルよ、渡り石はわしの残した遺産から回収を進めておるがサンサーラ号の機関に必要でな・・・』

それにルディが反応する。

「愛娘殿、あのダガーはハイネの大神殿の地下の遺跡から発掘された物が横流しされた可能性が高い『風の精霊』の店主が関わっていたたしかエミルだったか、まだあるかもしれん」

「エミルだよルディ、あいつが発掘品を横領して金持ちの物好きに売っていたんだ、コッキーのトランペットもそこから出たんだ」

ベルは尾行してきたエミルを逆に脅して情報を絞り取った事があった。


『なんじゃと!!いやハイネの大礼拝殿はテレーゼの土地女神のメンヤの神殿の上に建てられておったな、そこにあったのならば不自然ではないか』

ペンダントが叫んだがすぐに落ち着く。

「なくしてしまったのです、今は替わりにこれを持っているのですよ」

コッキーがテーブルに近づくと、申し訳なさそうにペンダントの真上に楽器屋から買った年代物のホルンをかざした。


『あれが神の器ならいずれ戻って来るそういう物じゃ、じゃがこのホルンの方が姿は神の器に近いの、じゃが神の器の力はあるまい?』

たしかにその形はメンヤの大地のホルンの形によく似ている、ベルもそれを意識して買ったのだが。

だがコッキーの答えは皆の予想を越えていた。

「だいじょうぶですアマリアさん、音の力は使えるようです」

『そうなのか・・・・』



「愛娘殿、再融合の見込みはあるのだろうか?」

ルディのその声はいつもとは違っていた、遠慮がちで何かを恐れるようだ。


『いろいろやってみたがダメじゃ・・・・最後の方法を試す前にやることがある』

「愛娘殿、最後の方法とは」


『幽界に海がある、原初の海、幽界の羊水とも言われておる、これは妖精族が残した言葉じゃ、魂の分離と融合を成すと言われているが謎が多すぎる、解読された断片的な記録から読み取れたものじゃ』

先程から何かをいいたそうだったアゼルが割り込んでくる。

「幽界に関する記録で読んだ事があります、まさかアマリア様の肉体と魂をそれで融合するのですか?」

『情報が少なすぎる、だが幽界の海は人の子宮と繋がっているとする説があっての、これは新しい説じゃ、わしがここに閉じこもっている間に世の中は進歩していたようじゃな』

「新しい学説ですかアマリア様?」


『うむ、ここ二十年でパルティナ前史の研究が進んでおってな、その研究を足がかりに古代文明の研究が進んだようじゃ』

「それは知りませんでした、お恥ずかしい」

『アゼル気にするな、その時代は聖域神殿の禁忌に触れる物が多いようでな表に出しにくい、聖霊教のこちらでも進めにくく地下に潜っておるようじゃ、それでも研究が進み幽界の羊水は人が現世に転生する触媒の役割を果たすとする説が出てきた、ならば人工的な子宮を用意すればあるいわ・・・だが博打すぎる、そういう事じゃ』


「しかし不思議ですね、今になって古代文明の研究が進むなんて」

『研究者達の噂ではな、二千四百年前の闇王国時代のペリヤクラムの石碑が発見され東エスタニアに持ち込まれたと聞く、西エスタニアの研究者はそれを命がけで持ち出したそうだ』

「闇王国・・・・まってください西エスタニアに神々の怒りに触れ滅ぼされた国の伝説がありましたね」

『アゼルよ伝説ではない、当時は乱世でその一国が死靈術を復活させ闇妖精を呼び出し戦の決着をつけようとしたようでな、それが西エスタニア文明を滅ぼしかけたが最後は国ごと滅ぼされた、その首都があった場所は今は沼になっておってな、その地の名前がペリヤクラムじゃ』


「愛娘殿、彼らが闇妖精を呼び出したとして、その闇妖精はどうなったんだ?」

『原始パルティナ十二神教に封印されたとしか記録に無い・・・・表に出ておらぬだけかもしれぬなルディガーよ』

「研究者達に接触できないだろうか、闇妖精や死靈術の核心にせまれるかもしれん」

『そのことじゃが、彼らの噂では指導者がコステロ商会と繋がりがあるらしい、資金援助なども受けていると噂していた、これを聞き出せたのもわしの知識とこの体のおかげよ』


だがアマリアが密かに期待していたベルの抗議は無かった、みんなアマリアの暴露に唖然として呆けていた。





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