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ルディとアマンダ

「ルディガー様こんな事になっていたなんて」

明るい陽の光がセザールの極上位魔術により破壊された町並みを照らし出す、巨大な穴が廃墟の真ん中に空いていた、下町の魔術街の真ん中が文字取り消滅している。

「奴は俺たちを狙って街ごと消そうとした」

ルディとアマンダの二人は警備隊の封鎖線から離れた場所から町並みが消えた先を眺めていた、朝になって噂を聞きつけた住民が遠くから野次馬に集ってきたので騒音に紛れてお互い言葉が聞き取りにくい。

だがおかげで悪目立ちせずに済んでいた。

怪しい薬の行商人のような姿のアマンダがルディに近寄ってくる、彼女は豪奢な赤髪を黒く染めていた、なかなか見慣れない姿の彼女をルディはまぶしげに眺めた。

「奴は俺たちを狙って街ごと消そうとした」

「そうですわね、死霊術とは恐ろしい術です」

「ああ、アゼル達が今それを調べている、愛娘殿の力を借りられるのは心強い」

今頃廃屋敷の魔術陣地の中でアゼルとホンザが戦利品の解析をしているはずだ。

「いこうか」

二人は群衆をかき分けながら旧市街に足を向けた。



「やはりセザールを狙いますか?ルディガー様」

アマンダの言葉の端に怒りがにじみ出る、滅びた街の巻き込まれた住民を想っているのかもしれない。

だがルディは頭を横に振った。


「ホンザ殿の推理だが、奴は巨大な魔術陣地をつくりその内部を瞬時に移動しこちら側に出現している、魔術陣地を破壊しなければ追い詰める事ができたとしても逃げられてしまうそうだ」

「まあ、しかしそんな大きな魔術陣地をどうやって維持しているのでしょう?」

アマンダの言う通り恒久化した魔術効果は精霊力を必要とする、防護結界もたえず力を供給しないと維持できない、それは死霊術も変わらない。

現にホンザも魔術陣地の維持に多くの力を流していた。


「愛娘殿が言っていた、ド=ルージュの廃墟にテレーゼ中から瘴気を集めていると、愛娘殿もその瘴気の渦に閉じ込められている」

「では魔術陣地の維持する力もそれでしょうか?」

「確証は無いがその可能性は高い」

ルディはうなずいた、やがて二人は旧市街の城門を抜けるとそのまま北西区に入る。

北西区はハイネの商業区で比較的上層向けの品の良い店が多かった、そしてハイネ魔術学園などがあり学生向けの店が栄えている。


ルディは北東の方角を眺めた、町並みの上にハイネ城の巨大な屋根と大尖塔が見える。

「ハイネ城にセクサドル王国の王族が滞在しているそうだな」

「気になりますか?」

「気になるが今はいい、彼にあまり良い噂は無かったが」

やがて街を東西に走るハイネ魔術学園通りに出た、学生の姿が絶え静かで不気味だ、遠くから馬車の車列の立てる騒音が聞こえてくる。


「あれがセザール=バシュレ記念魔術研究所ですねルディガー様」

アマンダが学園通りの西を眺めている、その視線の先に赤煉瓦の美しい三階立ての新しい建物が見える。

「あそこもいずれ叩く必要がある、セザールを倒し愛娘殿を解放するのだ、その為にも死の結界の情報が欲しい」

二人はそのまま西に向かった、二人の前を北門に向かって絶え間なく流れる馬車の列が横切って移動して行く。

「城の北に水堀があるんだ、その橋にこの道は繋がっている」

アマンダが北を覗き見る、たしかにその先に小さな城門があった。

「まあこの先はマルセランに繋がっているのでしょうか」

「たぶんな・・・この道は使えない、他の城門を見つけ新市街に出るそこから北に向かおう」

「はい」

二人は小さな城門を見つけると新市街に出た、そこでアマンダが息を飲む音が聞こえる。


「ルディガー様あれを!」

ハイネの旧市街は低い丘の上に築かれている、そこから遠くまで見渡す事ができた。

アマンダが指差す先に遥か先に旌旗を靡かせ軍が北に向かって進んで行く、先頭ははっきりとは見えない。

それはマルセランに向かうセクサドル王国軍の軍列だ、終わりの見えない軍勢がゆっくりと北に向かって進軍していく。

「セクサドル王国軍だざっと5千以上いる、全体を見ないとわからんが」

「いよいよですねルディガー様」

いよいよの意味はグディムカル軍と連合軍の決戦の事を指している、ルディはそれをすぐに理解した。

「ああ、さて我々もマルセラン向かう、走るがいいか?」

ルディはいたすらっぽくアマンダに笑いかけた、アマンダも得意げに答える。

「聖霊拳の上達者の力をみくびってもらっては困りますわ、馬と同じ速さで一日走る事ができましてよ」

「たのもしいな」

ルディは朗らかに笑う。

二人は新市街の裏道を北に向かって歩いて行った、やがて水道橋の下を通過する、アマンダは物珍しげに水道橋を見上げた。

やがて水堀が右手に見えてくる。

「まあこうなっていますのね」

ハイネの北の水堀に二本の橋がかけられ、そこを馬車が北に向かいひっきり無しに流れて行く。

その濃い水面が城の姿を映していた。

「古地図を見たが、昔はハイネ全体が水堀で囲まれていたらしい」

「まあ」

やがて二人は市街の北の端に達する、その先は畑と小さな林が点在しているだけだ。


「アマンダ行くぞ」

ルディが僅かに力を解放すると全身に力が満ちた、それが素晴らしい速度を生み出す。

アマンダも精霊力を解放し全身を駆動させると、苦もなくルディを追いかけた。





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