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エピローグ

夕方、遊園地から出た6人は電車に乗る。

茉莉、梓紗、こゆきは、車両の前側の席に座りぐっすりと眠っていた。


その少し離れた場所に座るのは男三人組。


「ねえ、何で女ってあんなくっついてられんの?」


貴也が不満そうに呟くと、佳貴がにやり。


「何、アズ取られて怒ってんの?」

「ちがう!」

「てかさ、お前ら結局どうなったの?」


奏多に聞かれた貴也は「う」と口をつぐむ。


「何か結局普通な感じだったけど、マジで連れ戻しに行っただけ?」


文句言いたげな表情の奏多。

まあオレ的にはそっちのほうがありがたかったんだけど、と内心思うのは佳貴。


「だって、普通にしてろって梓紗が言うから」


恥ずかしいのを隠すように、小さい声。

奏多は「お、くっついたんだ」と楽しそうな顔で。

そんな奏多に佳貴が問いかける。


「で、そっちは?」


何の話だと首を傾げる貴也。

奏多は無言でピースを作る。

そこに流れる少しの沈黙。


「ちょっと待てどういうことだよ!!」

「え、待って何? お前が好きなのってユキ?」

「そこから!?」


貴也の鈍感さにも驚きつつ、佳貴は小声のまま奏多に尋ねる。


「それは何のピースだよ!」

「ミッションコンプリート」

「はあ?」

「三谷ってユキに避けられてなかった?」


直球な貴也のつっこみに「うっせえわ」と奏多の返事。


「もう避けられねえから」


「告ったの?」と確認する佳貴。

奏多は少し考えて「半分」と答える。


「半分!?」

「何それ!?」


困惑する二人。


「とりあえず、関係修復どころか大分前進したんで」

「マジかよ……」


納得いかない様子の佳貴が口を尖らせる。


「オレなんか、やらかすし、逃げられるし」

「何その話俺聞いてねえ」

「え、お前茉莉ちゃん好きなの?」


佳貴が「お前はどこまで自分のことしか見えてねーの」と苦笑。

茉莉の貴也への想いはばれないように気をつけつつ、事のあらましを説明する。


「バカじゃん」


率直な貴也に笑う奏多。


「でも、逆によかったんじゃない?」

「何で?」

「目が覚めたと思うしさ」


奏多は、邪魔をして全てを壊してしまうのが何より最悪の結果だっただろうと話す。

茉莉が誰にも嫌われることなく、誰を傷つけることもなく解決できたのは良かっただろうと。


「いやでもさ、そんな簡単に諦めつく?」

「諦めなくても幸せは願えるもんでしょ」

「それつらいじゃん」

「ヨシキがいただろ」


奏多の言葉に佳貴が目を見開く。


「ヨシキが近くにいたおかげで、茉莉は立ち直れたんだよ」

「オレが傷つけたのに……?」

「あんだけ楽しそうに笑ってたんなら、お前はよくやったってことじゃない?」


さっきまで否定的だった貴也も、納得したように佳貴を見て。

佳貴は安心したように、離れた場所に座る茉莉へと視線を移す。


「だとしたら嬉しいね」


ぴったりと梓紗に寄り添いながら眠る茉莉。

もしまだ傷ついていたなら、できなかったことかもしれない。

そう考えて、佳貴はようやく緊張がほぐれたのだった。



乗り換えの駅、電車から降りた6人がホームを移動する。

後ろを歩いていた茉莉は、ぐいっと梓紗の袖を引っ張った。


「梓紗先輩」


フリーフォールでのことを思い出した梓紗は、隠している事実をどうしたものかと焦る。

しかし、茉莉は急に頭を下げた。


「昼間はごめんなさい!」

「え……」

「私のせいで、梓紗先輩、色々我慢させてしまって……!」


もっと早く謝ろうと思っていた。

結ばれたであろう関係を隠す二人を見て、自分のせいだと感じていた。

でも、また空気を壊してしまうかもしれないとずっと迷っていた。

どうしていいかわからなかった。

だけど、帰る前にどうしても伝えたかった。

自分だけが前を向くわけにはいかなかった。


「私、いっぱい迷惑かけて、ごめんなさい!!」

「ううん! 私も何も言えなくて……!!」


梓紗は驚きながら慌てて両手を振る。

最初にはっきり言えてたなら茉莉が自分を責めずに済んだと謝り返し、顔を上げるようにお願いする。

優しい梓紗の対応に、茉莉は泣きそうな声。


「私、梓紗先輩も大好きなんです。だから――」


嫌わないでほしいと続けようとした茉莉を遮って、梓紗は茉莉に抱き付いた。


「ありがとう! 私も茉莉ちゃん大好き!!」

「!!」


梓紗の腕の中で半泣きになる茉莉。

全てを受け止めてくれる梓紗に茉莉は温かい気持ちになる。


ぎゅうと抱き合う二人を見て「何してんの!」と貴也がやって来て

こゆきが「あたしも混ぜてよ!!」と楽しそうに声をかけてくる。


少しずつ何かが変わってく。

それでも変わらず遊んでいられる。

今日の思い出は、いつか楽しい日常の一つになる。


バラバラになってたとしてもまた、集まってきっと笑い合える。

そんな約束を結んだような大切な時間。


それは記憶に刻まれる、6人それぞれの大切な日。


END

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