6.三谷奏多
「何か乗りたいものある?」
「そういうのは、みんなと、乗ろう」
「じゃあ休憩してる?」
「いや、ええと……」
好きな子から絶賛避けられ中の俺。
友達として仲良くはしてくれるけど
妙に距離を置かれてることに気付かないわけじゃない。
《Case6.お化け屋敷~Another Vision~》
ほとんど一目惚れだった。
仲良くなってもっと好きになった。
でも、何か、二人きりになることを怖がられているらしい。
「はぁ……」
隣から小さくため息が聞こえる。
二人きりになると、いつもこんな感じ。
(俺何かしたっけなあ……)
ずっと考えてきたけど、本当に身に覚えがない。
そんな引かれるほどアタックしたつもりもない。
っていうか、避けられててそんなアタックできない。
もちろん、強引に何かしようとしたことだってない。
とりあえず普通に会話がしたくて
次のアトラクションを考えようと提案すると、素直に乗ってくれた。
「お昼食べれそうなところ結構あるね」
「レストランとフードコートからすでに迷う」
「ファーストフードもあるよ」
「スイーツも食べたいな……」
いつの間にかお昼の話になりあれこれ迷っていると
ユキが何かを見つけたように一点を見て。
「……三谷ってお化け平気?」
と、尋ねてきた。
その視線の先には、お化け屋敷の文字。
(……そういうのはあんま怖くないんだけど)
ただ、ここのお化け屋敷は大分怖いと聞いたことがある。
どんなものか詳しくは知らないけど
怖くないと言いながらいざ入ってビビるのはダサすぎる。
それだけはぜってえ避けたい。さすがに。
「あまり?」
俺の返事を聞いたユキが
「お化け屋敷とか、どうかなーとか……」と
様子を窺うように聞いてくる。
超かわいい。
そんなの、OKに決まってる。
しかも、みんなを待つと言っていたユキが俺だけと入ってくれるんだって。
それがどんな理由であれ、断る要素はどこにもない。
向かったお化け屋敷は列も短く、そこまで待たずに入ることができた。
ヨシキのほうはまだ並んでそうだなと思うくらいには早くて
少しゆっくり歩いても問題ないかもしれないと思った。
前の人が進むと同時に、映像を見せられる。
どうやらかなり作りこまれているらしい。
これは確かに怖いと言われそうだ。
特殊メイクとかもかなりはりきってる。
「こ、怖くないの?」
画面を見ていると横からそう尋ねられた。
「怖いよ?」
そう答えると、ユキが疑いの眼差しを向けてくる。
確かにユキのほうが怖がってそうではあるけれど。
何が起きるのかわからないんだから怖くないわけがない。
でも、ユキと一緒だから、正直わくわくしている。
「楽しいのもあるからかな」
俺の言葉にユキが少し眉をひそめ、ふいと顔を戻される。
(……俺何か変なこと言ったかな)
険しい顔で懐中電灯を握りしめるユキ。
ただ怖がってるだけとかならいいんだけど。
廊下に入ると空気がひやりとした。
キンキンになるほどではないけれど
迫ってくるような冷たさ。
廊下を挟むように立つのは
木造建築を演出するような壁と鎖で封じられた教室の扉。
所々にお札が貼ってあり、血のような赤い絵の具が飛び散っている。
(何があるかな~)
懐中電灯を動かしながら仕掛けっぽいものを探してみるが
これといって何もない。
隣のユキは小さく震えながらきょろきょろしている。
――怖い?
そう聞こうとした時、ユキが「ひ!!」と声を上げた。
「大丈夫?」
「つ、冷たくて!」
「ああ、確かに冷たかったね」
足元からふうっと冷気が送り込まれたのは感じた。
夏だったら丁度良さそうな施設だなと少し思う。
「!!」
今度はジャーンと音がした。
ピアノの音だ。
ユキの体がびくりと跳ねた。
「あ、あはは、何だろうねー今の音」
何か無理して笑ってるみたいだけど
お化け屋敷苦手なのに入ったんだろうか。
事あるごとに反応するユキ。
なんというか、すごく可愛い。
これあれだ。萌えってやつだ。
俺、萌え死ぬかもしれない。
クッソ可愛い。
少し進むと、行き止まりになった。
目の前には扉。
木でできた引き戸で、鎖はついていない。
「お、開きそうだよ」
取っ手に手をかけると、ユキが勢いよく腕を掴んできた。
ちょっとドキッとした。
「どうかした?」
「いや、えーとっ」
怖いんだろうなとは察しているけど
言いたくないっぽいから聞くのもどうかと思うし。
何より頑張ってるのが可愛くてもうちょっと見てたいし。
ちょっと意地悪な感情を抱きながら、ユキに尋ねる。
「開けてもいい?」
何か言いたげに口をパクパクするユキ。
めちゃくちゃ可愛い。
何でこんなに可愛いんだろう、ユキって。
「ど、どうぞ!!」
力強くそう言って、俺の腕を離す。
ちょっともったいなかったかなとか思いつつ
ゆっくりと扉を開ける。
ユキが少しだけ怯えたように扉の先を凝視する。
(勢いあるのとどっちがいいんだろう)
でもどっちにしても怖えよな、と考えていると
俺の胸ポケットに入っていたスマホが震えて音を出した。
「きゃああああああああああああああああああああ!!!」
その音にびっくりしたのかユキの叫び声が響き渡る。
携帯であることを教えて電話に出ると
ユキが泣きそうな顔で俺を見て。
「もしも――」
「こういう時はマナーモードにするのが常識じゃん!!!」
胸倉をつかまれてがくがくと揺らされた。
驚いたことが嫌だったらしい。
涙目で俺を見上げるユキはとてつもなく可愛いんだけど。
電話の向こうからは困惑したように俺の名前を確認するヨシキの声。
「あーごめん、今の気にしないで」
『いやお前ら何してんの』
「何でもないよ、大丈夫」
言ったら多分、ユキがもっと怒りそうだし。
そういう怒られ方は嫌われそうだからやりたくないな。
「何?」
『ああ、オレたちちょっと何回かジェットコースター乗るかもって』
「!?」
「はーい、了解でーす」
さっさと電話を切ろうとすると
ユキが手を伸ばして俺のスマホを取り上げようとする。
「ちょっと待って!!勝手に了解すんな!!」
思わず俺も手を伸ばしてそれを避けて。
ユキがそれを追いかけてくる。
超可愛い。
「ちょっとそれ貸してって!!」
「もう切ったよ」
「あああああああああああああああ!!」
ガーンという効果音が合いそうな反応。
話したところで早く戻りようもないんだけどなあ。
ヨシキはヨシキで茉莉といたいだろうし。
あ、これ内緒なんだっけ。
「とりあえず早く出ようぜ?」
「そ、そうだけど……!!」
ずっとくっついてくれてるのも嬉しいんだけど、と内心思うものの
早く進まないと他の客にも迷惑になるし
何より、ユキが結構本気で怖がってるみたいだし。
すると今度はガタガタっと音がした。
「な、な、何?」
怯えた声で俺の背中に隠れるユキ。
懐中電灯を照らして音がしたほうを探していると
その音がどんどんと近づいて来て。
「いやああああああああ!!」
「ユキ!?」
その音から逃げるようにユキが走り出して
慌てて俺も追いかける。
ただのボール入れだしそんなに怖がることじゃないと思うんだけど。
(あれがフチの鋭いポリバケツとかなら怖いと思うけど……)
そんなことを考えながら見つけた扉を開けて逃げ込むと
ユキが床に手をついてぜえぜえと息をして。
「死ぬ……!!」
その地面は真っ赤に染まってんだけど
ユキ、見えてんのかな。
「ユキが息を切らすって相当だね」
「叫びながら、全力疾走なんて、したことない、からね?」
息も絶え絶えに会話をしてくれるユキ。
少し休憩してもいいんだけど
これ、次の人の時間とかってどう管理されてるんだろう。
「ユキ、手――」
引っ張って行こうかと思って手を出した瞬間
ガシャーンとけたたましい音が聞こえて。
「きゃあああああああああああ!!!」
ユキがまた叫んで走り出してしまう。
「ちょっと待って!!」
慌てて追いかけて、扉の先でまた休んで
その部屋ではキャストに追いかけられて……。
そんなことの繰り返しで
脱出するまで手も繋げなかった。
(俺、そんなに頼りねえかな……)
置いてかれまくってさすがにショック受ける。
しゃがみこんだユキは大分つらそうで
「大丈夫?」と声をかけたけど反応がない。
覗き込んで見れば顔色が悪くてげっそりしている。
「ベンチ行こう。あそこにあるから」
立たせてベンチに連れていく。
ユキがふらふらでさすがに可愛いとか言ってる場合じゃない。
(何か元気出る方法……)
隣に座ってパラパラとマップを見てみる。
コーヒーカップとか今は逆効果になりそうだし
メリーゴーラウンドはガラじゃないって言われそう。
他のアトラクションはみんなで乗りたいだろうし……。
(あれ……)
アトラクションとは別のグループで見つけた『ゲームセンター』の文字。
ゲーセンといえば、ユキが一番よく行く場所だ。
みんなでいる時も最初にゲーセンを口にするのは必ずユキ。
「こことかどう?」
マップを指しながら見せると、ユキの目が段々キラキラしていく。
「好きかなと思って」
「大好き!!!」
「!!!」
ぎゅっと手を握られる。
言葉も相まってびっくりして
心臓がドキドキと鳴り響く。
(俺、大分振り回されてる)
他の子じゃこんな風にならない。
俺はユキが本当に好きなんだと思い知らされる。
嬉しそうに歩いていくユキを見て、幸せを感じる。
やっぱりユキは、笑ってるのが一番良い。
ゲーセンに入って顔色が戻るユキに思わず笑う。
俺はあんまりゲーセンでできることないけど
もっと何かできれば、もっとユキを楽しませられるんだろうか。
(でもゲームってそんなやらねえんだよな……)
ふと目に留まったのはクレーンゲーム。
ぬいぐるみとかよりは取りやすそうなモバイルバッテリーの台。
「ごめん、ちょっと待って」
つい声をかけてた。
別にそこまで欲しいものじゃないけど
あって困るものでもないし
それに一番は
みんながいなくてもユキに楽しいと思ってほしい。
「ねえ、これ一回やってみていい?」
「え……、あ、うん」
少し困惑したユキが頷いて
隣から覗くように見ててくれる。
(一人でどっか行ったりしないんだよな……)
何だかんだ言って、隣にいてくれる。
俺のこと苦手に思っているみたいなのに。
「結構難しいな」
やったこともないクレーンゲームはうまくいかなくて
景品は動きもしなかった。
だけど、ユキは笑ったりなんかしなくて。
「もう一回いい?」
「うん」
ユキのほうが断然得意なのはわかってる。
よくアズに取ってあげたりしてるのも見てた。
だから、俺が取ってあげるなんてかっこつけるのは違う。
ただ、一緒にできたほうがきっと
ユキも楽しんでくれる気がして。
でも何度やってみても
ユキがやってたようにうまくはいかない。
「ねえ、これって何かコツあるの?」
「え!? あ、えーと」
俺が聞くとユキが説明してくれる。
重心は何となくわかってたけど
アームの強さとかまで言われて驚いた。
いや、考慮って言われてもどうすんだって。
知らないことが多すぎてどう考えるのかもわからない。
だけどユキに聞くと手を使ったりして教えてくれる。
ユキは楽しいと思ってくれるかな。
それとも、面倒に思ってるかな。
「あ」
大きく揺れてようやく落下する。
ガタンと音を立てて、初めて自分で取った景品
嬉しくてついガッツポーズが出る。
「よっしゃあ!! 取れたよ!!」
「うん、おめでとう! やったじゃん!!」
景品を見せると、ユキも笑ってくれる。
それが嬉しくて俺もまた笑う。
「ありがとう、ユキのおかげ」
面倒だと思われてなさそうで、安心した。
自然と胸が温かくなる。
景品が取れたことも
隣にユキがいてくれたことも
笑ってくれることも
全部が嬉しい。
「そんなにそれ欲しかったの?」
「ううん、クレーンゲームできるようになったらもっとゲーセン楽しめるかなと思って」
ユキの混乱したような顔。
多分通じてないっぽい。
「ユキは好きでしょ、ゲーセン」
「……う、うん?」
反応からわかるのは
俺の下心が出てて引かれてたとかじゃないってこと。
あと、段々ユキの緊張が取れてるってこと。
(ゲーセン様様だな)
次は何をやろうかと他のを見回っていると
ユキが急に立ち止まって。
振り返ると、何かを決心したような顔。
「ねえ、まだ連絡きてない?」
「うん、きてないよ」
「じゃあ、お化け屋敷付き合って!!!」
「!」
びっくりした。
そして、ユキらしいなと思った。
「もちろん」
あの顔を見たらわかる。
お化け屋敷に真っ向勝負しようとしてるんだって。
そういうところ、本当に好きだ。
俺、少しは役に立ててるかな。
誘ってくれたのはたまたま隣にいたからだとしても
少しでもユキの力になれるように俺も頑張りたい。
「どこが怖い?」
並んでる間、お化け屋敷について話した。
ユキが何を怖く感じるのかを聞いて
何が苦手なのかを知った。
相手が有利な位置で自分を陥れてくるのが嫌みたいだった。
もしかして俺のこと苦手なのも
そういうことなのかもと思った。
よく、人の気持ちを弄んでると言われることがある。
女遊びが激しいなんて噂も流れてるのは知ってる。
そんなつもりは毛頭ないんだけど
どうしても、そういう風に見えてしまうらしい。
ユキがそういうのが苦手だっていうんだったら
もし俺がユキに何かしそうって思われてるんだったら
もう少し、知ってもらえればいいのかな。
俺がそんなことしないってこと。
本気だってこと。
俺は、遊びなんかじゃなくて
ずっとユキだけを見てたんだから。
さっき電話がきたあの扉の前にたどり着く。
携帯はマナーモードにしたからもう平気だ。
でも、あれで恐怖が焼きついたのか
ユキが震えてる。
「大丈夫?」
扉を開ける前に確認してみる。
「う、うん……!」と意気込んだ返事はきたものの。
「無理!!」
「無理なんかい」
思わず突っ込みを入れる。
何か、みんなといる感じで話せてる。
今なら、いける気がした。
「大丈夫だよ」
ユキの右手を握る。
驚いた顔で俺を見て、だけど顔からは恐怖が消えてて。
「俺もいるからさ」
それがすっげえ嬉しくて。
「う、うん、わかった」
握り返してくれた手が、熱くて。
扉を開けると暗闇が出迎える。
ライトを当てて道を示すけど
ユキがまったく動かなくて。
何かと思って顔を覗き込んだら目をぎゅっと瞑ってた。
(うわ、すっげえ可愛い……)
何でこの人はこんなにも俺のツボを刺激してくるんだろう。
目が離せなくなる。
「な、何もない?」
「ないよ?」
返事をするとゆっくりと目が開いて、視線がぶつかる。
驚いたようにユキが後ろに飛びのいて。
「ち、近いし!」
そこで初めてさっきの距離に気付いた。
「いや、何してるのかと思って。暗くて見えないから」
ちょっと嘘をついた。
暗くて見えなかったのも本当。
気になったのも本当。
でも近かったのは……。
(やーべえわ……。焦んなよ、俺)
心の壁がなくなった感じがして
つい急いてしまっているのかもしれない。
変化が起きると手から伝わるユキの感情。
大丈夫、と教えるようにその手に力を籠めるとユキの強張りが緩んでくれる。
それが、嬉しかった。
「怖かった?」
追いかけてくるボール入れから逃げた先。
ユキから「少しだけ怖くなかった」と返ってくる。
安心した。
その結果に俺は関われているのかな。
そうだったらいいな。
そんな俺の心情に答えるように、ユキは呟いて。
「手、離したら怒るから……」
震える声とその台詞。
喜び飛び越えて、頭おかしくなるかと思った。
冷静に保てるように頭を落ち着かせて
握っていた手を緩める。
「じゃあ、こうしようか」
指を絡めて、握った。
「通称、恋人繋ぎ」
「こ……!?」
恥ずかしいのを誤魔化したくて、冗談めかした。
「さ、次行こう」
悟られないように前を歩く。
さっきみたいにユキは走り出したりしなくて
びっくりしても静かに俺の後ろをついてきて
今度は二人で一緒に出口を過ぎることができた。
「どうだった?」
「……それなりには、怖かった」
隣を見ると、真っ赤な顔をして何か考え込むようにしている。
繋いだ手が離れてなくて、離したくなくて
気付かないふりをして携帯を開いた。
そこに残ってたのは3回のヨシキからの着信。
「何?終わった?」
掛け直すと『おー』とかいう軽い返事。
『お前ら遅いわ。何してんだよ』
「おせえのそっちだろ」
笑ってそう返す。
詳しく聞けば貴也とアズも帰ってきてるらしい。
どうやら俺らが最後。
仕方がないかな。
「アズたちも戻ってきてるって」
「あ、そうなんだ」
「そろそろお昼も食べたいし、行こっか」
手を離して歩く。
ユキは立ち止まったままで
左手の熱が逃げていく。
でもそれは本来今日得られるはずのなかった熱で。
たけど、俺はずっと求めている熱で。
……この少しの時間で、何か変わったかな。
「あのさ」
立ち止まる。
確認したくて。
聞きたくて。
なのに顔が見れない。
「どうかした?」とユキが近寄ってくる。
いつもなら見れるのに
見たいくらいなのに。
(やべえ、今一番怖いかも)
もし否定されたら
怖いと言われたら
嫌いと言われたら
今まで確認しないよう避け続けてきた事実。
言葉として実感するのはさすがに傷つく。
でもやっぱり、聞きたくて。
どうしても、知りたくて。
さっきの手の温もりは嘘ではないと、信じたくて。
「……苦手意識、なくなった?」
意を決して出した言葉。
返事がなくて、心臓がバクバクいってた。
(……まずったかな)
まじでこええ。
お化け屋敷とか比にならないくらい怖い。
これで「は?」とか聞こえたら俺死ぬかもしんない。
でも小さく聞こえた返事は、まったく違うもので。
「うん、まあ、前よりは」
すげえ嬉しかった。
苦手じゃないって言われただけなのに
安心した。
「そっか」
だから思わず零れた本音。
「じゃあ次は、好きになってほしいなーとか」
言い終わって顔が熱くなる。
(何言ってんだ俺)
焦りすぎだ。
引かれたかもしれない。
気付かれないならどうにかなるとしても
もし普通に振られたらどうしよう。
っていうか、この後の空気どうする気だよ俺。
――でも返ってきたのは想定してなかったユキの気持ち。
「……少しくらい、知る努力はする」
「マジで?」
驚いて振り向いた。
赤く染まる頬が可愛くて
意味がわかって言ってくれてるのを実感して
あんなに不安だったのに
顔が自然と笑顔になっていく。
「すっげえ嬉しい」
これからぜってえ惚れさせてやるとか
そんなかっこいいことは言えないけど
そういう気概は持ってるから
俺、引かないよ。
「覚悟しててね」
「っ……!!!」
緩急なんかないくらい、直球だから。
6.三谷奏多《お化け屋敷》 END