第六話 敵の戦闘艦を攻略せよ!
相手を止めるといったって、かなりハードだ。
武器は電気銃ならあるし、相手は私に気づいていない(はずだ)けど、銃では船殻を破れない。内側から破壊するしかないと思う。
とりあえずモービルで接近してみることにする。
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到着した。この丘の向こうに敵艦がいる。
道中で、モービルにプログラムを仕込んだ。モービルに敵の注意をそらして、その隙に行動する。
これならいける気がしてきた。
(囮モービル、発車!)
モービルは加速して、丘の向こうに消えた。
『不審な車輌が左舷から接近。攻撃に備え、警戒を強化せよ!』
敵船員が警戒をはじめた音がする。
敵の注意が左舷側に集中している今のうちに、右舷側から近付く。
この船は・・・シーウィードより小さいコースト級だ。名前は見えなかった。
船殻付近の砂はサバースシステムで流体になっているので、二メートルほど手前から跳び乗る。
まだばれていない。
船で一番大事なのは、勿論エンジンだ。しかも、機関部は弾薬庫や主砲搭と共にバイタルパートに含まれているので、暴走させれば大爆発が起こる。
つまり、エンジンルームに行けばいいってこと。
構造物の影に隠れつつ下に降りると、すぐエンジンルームについた。冷却液を止めれば燃焼室が破裂する。過給機をいじればもっと威力が・・・と考えていたら、見つけてしまった。
うちの艇のエンジンと同じギアボックス。外してみたら、エンジンが空焚きをはじめた。一石二鳥!
過給機のセンサに外気圧を測定させて、『まだいける!』と勘違いさせた。実際の燃焼室内の圧力はもうすぐ設計限界を超えるんじゃないだろうか。
左舷側から脱出して丘のほうに戻ってきたら、爆発音がした。爆発を観測しようとしたら、こげた通信用アンテナが空中を舞っているのが見えたので、やめた。
モービルにプログラムを停止させて丘のこちら側につれてきたら、もとの外装を全部剥いだ。見た目を変えておかないと追いかけ回されそうだし。
そのままだと砂塵で傷むので、エゾセンシスのとき砂中からサルベージした救命モービルの外装をくっつけておいた。群青色は砂漠では目立つから、後でピンク色と黄色に塗っておこう。今はすぐ艇に戻ることにする。
「テセイアからラーツェへ、一方通信。添付した座標に艦砲射撃お願い。」
八秒ほどして、背後に遠のいてゆくコースト級の残骸に着弾した。
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「ただいまー。」
《おかえ──って何それ。青ってすっごい目立つんだね》
「ここに向かってる戦闘艦を見つけてさ、モービルを囮に使ったんだよ。」
《ああ、艦砲射撃の》
「そのあとそのままの見た目だとまずいでしょ?だから全部予備につけ替えたの。」
《それより、何かあった?》
「それよりって・・・まあいいや、タンクもギアボックスも手に入れたよ。もう出航できる」