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SubEarth!(サバース!)  作者: 33ポンド
砂漠の章
5/6

第五話 奇妙な磁場

朝起きてまずしたのは、周辺状況のチェック。

観測にはパッシヴソナーを使った。時間はかかるけど、安全だ。

「なんかある?」

《いや、変わったものは何も。民間船だけね》

民間船は船殻の形状が違うので、戦闘艦とは出す音が違う。彼らの船殻は、安価と量産性を追求した丸底だ。

画面上には、それしかない。

「船を音源に指定して、再計測してみて」

《うーん、振動が弱すぎて何も出てこないと思うけど・・・ほらね》

画面上の情報は先程と変わらない。都市を包むフロート群の輪郭が少し精細になった程度だ。


「よし。大丈夫。」

《え?何か探してたわけじゃないの》

「何も無いかどうか、探してたよ。」

《なにそれ。遠征にでも行くような物言いだけど》


「一昨日の嵐の夜、見つけたんだ。コンパスを使ったとき、一瞬だけど磁場を観測してた。」

《初耳。なんで言わなかったの》

「磁場の発生場所が私だったとして、もし発生源が盗聴機だったらまずいでしょ。だから気づいてないふりをしてた。」

《なるほどー、それでパッシヴソナーを使ったんだ》

「そう、もし情報を送っているなら、受けとる側は動いてなきゃいけない。逆探知されたら位置がばれるからね。」


《で、それを言ったってことは盗聴機はなかったのね。発生源は別の場所?》

「たぶんね。沖の方だと思う。磁場があるってことは金属でできた機械のはず。タンクやエンジンがあってもおかしくない。」

《ここに来たときには何も出てこなかったけど、埋まってるのかな。もしそうだったら、どうやって探すの?》

「もう一ヶ所で磁場を観測できれば、場所はすぐにわかるよ。埋まってるといっても、手で掘り出せる程度のはず。」


「だから、ね?行ってみようよ。」

《わかった、右舷ポッド開放。

電池残量確認[九八%]。いつでもいいよ》

「搭乗完了。こっちもオーケー」

《よーし、投下(drop)!》

開いたポッドから落とされたモービルは、核戦争前から普及していた乗り物(モービル)、すなわち自動車(オートモービル)と変わらないその姿を(あらわ)にした。

アクセルペダルを踏むと、搭載された四つの車輪が砂地をしっかりとつかみ、滑ることなく移動を始めた。

《どこまで行くの?》

「二〇分くらい沖へ走ってみて、そこで磁場を観測してみる。万が一を考えて通信は封鎖するよ。」

《おけ。気を付けてね》

モービルはただの電気自動車だ。孤立(スタンドアローン)化したラーツェをつれていくのは危険すぎる。


同じ景色を横目に見ながら、二〇分がすぎた。

二度目の観測は・・・、端的に言うと無意味だった。観測しようと思っていた場所は陥没し、溶けた砂(インパクト・グラス)が散乱していた。


はじめはがっかりした。タンクもエンジンもないと思ったから。

(隕石衝突痕だ。衝突で電磁波が発生したのか)

発生源は()()だったのだ。

どうせならと思って、クレーターの中心を見ようとした。双眼鏡を使おうと腰に手を伸ばしたとき、辺り一面に金属片が散らばっているのに気付いた。


双眼鏡を取り落としそうになりながらクレーターの中心を見てみると、焼け焦げて真っ黒になった円筒があった。


ほぼ間違いなく人工衛星だ。なぜだかしらないけど、低速を維持したまま重力に引かれたんだろう。修理を受けられなくなった宇宙機にはよくあることだし。


特殊なネジに悪戦苦闘しながら外板を外すと、無事な燃料タンクが二本あった。

圧搾空気用ではなく、一液式燃料(モノプロペラント)用だが、問題ない。

重要なのは、宇宙用の燃料タンクは内圧に対して強いということだ。底面を見ると、『内圧一二〇まで』と書かれていた。

(やった!これで直せる)

バルブを開いて中のロケット燃料を『めっちゃ慎重に』捨てると、一目散に逃げた。もしロケット燃料に火が点いたら、すさまじい爆風は私を炭にしてしまうから。


モービルに戻ってきてから、周囲の偵察をした。朝観測をしてからすでに一時間が過ぎている。状況が変わっていてもおかしくない時間だ。

思った通り、小さいが戦闘艦を見つけた。当然シーウィード級の情報は伝わっているはずだから・・・私達の艇のところにたどり着くのも時間の問題だ。


彼らを阻止しなくては。

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