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SubEarth!(サバース!)  作者: 33ポンド
砂漠の章
3/6

第三話 砂嵐

衣料店に入ると、かなりの数の服や布が陳列されていた。この気候で繊維産業は成り立たないから、たぶん輸入品だろう。こんなに多くの衣服を見たのはいつ以来だろうか。


商品の中の一つが私の目に留まった。

そこには黄色い砂漠用迷彩の防塵服があった。

大きな金属製のファスナーが生地の開口部をすきまなく繋ぎ合わせて、全身を砂塵から守る造りになっていた。

「わあ。丈夫そうで良いなあ。」

《これって良いやつなの?ポケットの位置以外今のと変わんないでしょ》

ラーツェは無駄遣いはするなとでも言いたげだ。

「今着てるのはかなり傷んでるし。裾とかぼろぼろだよ」

《じゃあ買い換えたいだけって事ね?》

「いや、あーそうかも・・・そうだね。」

《それならあっちの方が収納多くて良いんじゃないの?》

そういってラーツェが示したのは機械整備用の作業着。至るところに収納が施されているようだ。

「あれは防塵服じゃないでしょ。防塵じゃないと繊維に砂が入ってすぐだめになるから・・・」

かつて海底だったというこの地。

その特殊な砂塵に(さら)された布地はまたたく間に摩耗し、擦りきれ、ぼろぼろになってしまうのだ。


《そうなんだ。じゃあその防塵服でいっか。》

「そうだね。

すいません、これ買います」

『25000ティールになります。』

ティールは通貨の単位。一九五八年まで流通していた日本円の、名前が変わったものだ。ほぼ全世界で流通している。



「食糧って買ったっけ?」

《一番最初に買ったよ。必需品の補充はもうできてる。》

昨日の戦利品のお陰で、かなり安く済ませられた。しかも今回は、SES(サバースシステム)が高く売れるから間違いなく黒字だ。

「じゃあ後は船に戻るだけか。」

《・・・待って》


「どうした、敵襲か?」

《気候が変わった。》

「ハァ?何言って─────


ビュウ と、風が轟いた。

島民の喋り声が消え、風の音だけが響く。


建物の幌が大きくはためいて、乗っていた砂がこぼれ落ちる。


《これは・・・》

「・・・マズいな」


途端に、大きな風切り音は絶え間ない嵐の音へと変わり、巻き上げられた砂塵が街道に流れ込んだ。

《砂・・・らし・・・!?・・・わ・・・通・・が・・!・》さっそく通信機のレシーバーにデータが届かなくなってきた。サーバーからの距離は僅か十五メートル。雨と違って不透明な砂は、電波を遮り視界を奪う。

「ッぐ、何も見えない」

どっちを向いても同じ景色。自分がどっちを向いているのかすら分からなくなってきた。

この街の地図は、当然持ってない。

咄嗟に通信機の位置情報をオンにする。でも、反応なし。

方位磁石を起動する。これは何とか使うことができた。

(砂の帯磁が強くなくて助かった。とにかく、船を目指そう)


建物の壁沿いに進む。

時折ミシミシと嫌な音がするが、恐怖に構っている暇などない。


(welc・・・wel・・arh、湾のゲートか?)

看板には砂が積もっていた。

殆どわからないが、湾のゲートまで来たらしい。

ここまでは建物があったから良かったが、湾内には遮蔽物がない。ふき飛ばされないように気を付けなくては。


「ラーツェ、サーチライト点灯!」

《了・・い!・・チ・・イト点灯!》


辛うじて見えた。


細い光を頼りに進む。


「甲板に着いた。ラーツェ、ハッチ開けて」

《ハ・・チ解・・ー!》


「よし、船内に入った。SES(サバースシステム)起動、急速潜航して。」

《だめ、吸気口が砂で塞がりかけてる!圧搾空気のタンクも石がぶつかって穴が開いちゃったし・・・》

「まずい、空気がないとSESは使えないのに」

砂の下から空気を送ると、砂が液体のようになる。そして、サバースシステムはそれを利用した装置だ。

だから大量の空気がなければ、船は身動きがとれない。


《このままだと潜航は無理そう》

「仕方ない、艇内の空気を使って。潜るだけなら出来るはずだから。」

《そしたらテセイアはどうするの?》

「私はエアロックに行くから大丈夫。早く!」

《りょーかーい、急速潜航!》

エアロックは船殻のすぐ側にあるので、ズゴゴゴ・・・という砂の動く音が聞こえる。

《潜航完了。大丈夫だった?》

「余裕だよ。エアロックの中だし。でも、服はぼろぼろだ。内側に砂が入ったっぽい。」

《マジかー。新しいの買っといて良かったね。おっと、艇内環境チェック完了、気圧〇・〇八》

「あー、やっぱギリギリだな」

《砂嵐が止むまではここで待機するしか無さそうだねー》

「だよねー・・・」

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