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SubEarth!(サバース!)  作者: 33ポンド
砂漠の章
2/6

第二話 フローターランド

シーウィード級の残骸に塩を撒き、水をかけた。

海が消えてから生まれた、新しい風習だ。


「二〇年前に消えた海って、どんな感じだったのかなー・・・」

《昔の記録によると、青くて塩からいらしい》

「青い?水なのに青いのか。不思議だな」

青い水の上に船があるなんて全く想像がつかない。船は砂の上にあるものだ。


「それはそうとして、撃沈した船のサバースシステムを早く売らないと」

Sub() Earth() Sistem(装置)。岩の塊をくずして、その場の地面を、液体のような船が航行できる環境にするための一番大事な装置。

船殻という船全体を覆う大きな外板に直結している。

《部品とか獲らないの?》

他の装置なら、例え壊れていても修理用に大事な部分だけ抜き取ったりする。

「サバースシステムは船殻に合わせて造るから代えがきかないの。ネジ一本シャフト一本さえもね。」

大型艦のサバースシステムは、大きな船殻全体に力を伝えなければならない故、大きかったり複数あったりする。実際にこのシーウィード級には大型のものが二基ついていた。

「近くに都市ない?」

《今探してる……あった、二里先にフローター都市が一つ。》

「ビーコン信号を確認。滅んではなさそうね」

《よーし、エンジン始動!》

フローター都市とは、文字通りフロートの上に建設された都市。


昔の街のように地面に直接建てられたものだと、近くを船が通ったときその航跡波(ウェーキ)によって建物が破壊されてしまう。

そこで開発されたのが、航跡波を受け止める『フロート』だ。


フロートに囲まれて航跡波の影響を受けないようにした街の事を、孤島(アイランド)とフロートから名をとって浮き島(フローターランド)(ある)いは単純にフローター都市と呼ぶ。


「今晩中につくかな?」時計はもう十時をまわっている。

《急ぐ?》

「いや、十一時になったら停泊しよう。エンジンを冷やす。」

《ちなみに到着予想時刻は二二一四(フタフタヒトヨン)ね》

「なんだ、もうすぐじゃない」


二二一六(フタフタヒトロク)。夜のフローターランドは岩山のように静まり、灯台と港の赤い光だけが船乗りたちの夜目を刺激していた。

赤い灯に照らされた人工の湾内に、大小様々な船が停泊している。私達もそこに船を停めた。


湾のゲートが閉まっているので、今日は町に入らない。船で一晩を明かし、明日から行動しよう。


__________


《おっはよー!現在の時刻は〇六〇〇(マルロクマルマル)でーす。起きてー!湾のゲートが開いたよー!》

「うーあー!もう起きたから!艇内放送は止めてえ!」

・・・。

夜は気付かなかったけれど、『WELCOME TO WELZWARH』と書かれた看板があった。

「読みはウェルザー、かな?まあまあ歓迎されてるみたいね。」

《ここって通信して大丈夫?》

「町限定のローカルネットワークがあるみたい。それを使えって書いてある。」

《良かったー。スタンドアロン化って結構怖いんだよね。あ、AIは入れるのかな》

「『通信だけ』から『機械人形』まで良いって。その辺は色々と寛容みたい。」

《ほほー》

「じゃあ出発ね。店はもう決めてるんだ」

ゲートを(くぐ)ると、屋根が幌で覆われたたくさんの建物が建ち並ぶ商店街に直結していた。

《チェーン店なの?》

「そう。国家の目が届かない裏ネットワークで繋がってるんだって。だから私達みたいに国から狙われてても安心。」

《ふーん。私は見るの初めて》

私達は商店街を横切り、都市のさらに奥、店舗検索サービス区画へと足を運んだ。

「これね。」

《この対面通信機が?》

「そう。パスワードによって色んな店へ繋がるやつ。」

22桁もある番号を入力すると、目的の店に繋がった。ディスプレイにガレージが映る。

『いらっしゃい』

作業中なのか画面には映っていないけど、声はしっかり聞こえる。ハキハキとした女性の声。

『ああ、可潜艇のコか。』

「久し振り、ローゼンさん。今回のはスゴいよ。」

『へえ、砲台でもつかまえた?』

SES(サバースシステム)。62年製イーぺルクスだよ。ほら、排気孔のノズル」

『すごい!シーウィード級のか。売る先は何処にする?』

「いつもの。トクセロス工廠(こうしょう)で。」

『!今から取りに行くよ。売上げはあんたの口座に振り込んどくから。それじゃあまた!』

通信が終わり、ディスプレイの表示が消えた。

「よし、終わり!」

《これだけ?もう売れたんだ》

「私は御得意様だからな。信用されてるんだ。」

「ところで、さっき商店街で良さそうな防塵服見つけたんだけど、見に行こうよ。」

《いいよー。私は必要ないけど。》

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