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SubEarth!(サバース!)  作者: 33ポンド
砂漠の章
1/6

第一話 市街戦

陽射しが白い肌にしみる。甲板の上は暑い。

雲一つない晴天、砂漠とはいえ最近ずっとこの天気だ。もううんざりするほど見た。

いや、うんざりは嘘。最近冷房節約のためにずっと潜っていたから、太陽を見るのは三週間ぶりくらいかな。

「怠けるな、(テセイア)。」

私はテセイア=フォーレイン。一九歳だけど、訳あって船で一人旅をしている。そしてこの船(六二式外輪可潜艇改)は、可潜艇という地下に潜ることができる特殊な船だ。

おんぼろだからたまに潜れなくなったりするけど。

今日はエンジンがイカれたから浮上した。たぶん、冷却が追い付いてないんだ。一昨日から、冷却液の量を半分に節約しているから。


「今から『狩り』をする。」

《えー戦うの?私やだよ。エンジン弱ってるし。》

書き忘れたが、この船には人工知能がついてる。名前はLAHTZE(ラーツェ)。指令はちゃんと聞いてくれるし、話し相手にもなるスゴいやつだ。

「だから冷却液を獲りに行くんだよ。バッテリー、何秒ある?」

《……22秒。》

「うーん、十分、では……ないな。まーいいか。ソナー打って。」

《ほい》コーン。

「さんきゅ。えーと……んー?」

7時の方向に大きな影。旧市街だろう。そして4時の方向に、船の影。

《エンジン音が聞こえた。》

ソナーを聞かれた。

「冷却液全部入れて急速潜航!旧市街に向かって移動しよう」

《ほいほーい。下げ舵15度、取り舵いっぱーい》

ヴぉんっと音をたてて、辺りの砂地にさざ波が起つ。船が潜る前に、私は船内に降りた。

「地の利を活かそう。ヤツを旧市街まで引き付ける。」

《ソナー打つよ。》

「うん、あと速度もちょっと落として、冷却液の供給を停止。」

《冷却液絶対獲ってよ。》

「分かってるって。」

《感12、4時の方向から魚雷来た!》

「5時の方向、ビルに向かって魚雷発射」

《さいごの一本だからね》

シュコーっという泡の音がして魚雷が放たれた。

武装が尽きた。

二、三秒の後、船のなかに轟音が届いた。

ズズンと音がして、倒れたビルが地面に沈みこむ。突然進路を塞がれた魚雷に為す術はなく、その殆どがその場で土煙と化した。

「どう?」

《のこり2。ざんねん》

「十分だよ。シールド展開。」

《地振動シールドね。りょーかい》

「あ、ちょっと待った、エンジン停止、バッテリーに切り替えて。」

《魚雷通過。さすが》

やかましいエンジンさえ止めてしまえば地中ではほぼ見つからない。さっきバッテリー残量を調べておいたのはこのためだ。

《バッテリー残り31秒》

「思ったよりたまったな。このまま大通り沿いの高台に行こ。」

《はいよー。潜望鏡伸ばしていい?》

「いいよ。仕掛けるタイミングを探ろう。」

私たちを狙ってきたのはどうやらシーウィード級駆逐艦のようだ。名前はエゾセンシス。乗組員は新米ばかりなのだろうか。

ビルが林立する市街地には大きな船が身動きをとるスペースなんてないのに、追いかけてくるとは。

「愚策だな、こっちに来るなんて。敵艦に飛び込んでみようか。」

《文字通り?上から?》

「可潜艇の機動力、見せつけてやろうよ。」

《いいねー。わくわくするよ》


当たり前の事だけど、戦闘艦の装備は()()()を狙うようにはできていない。甲板の上は相手に最も近い死角と言える。


「お、来た。」

《もう行く?まだ?》

「まだ。着陸地点に機関部が来るまで待って。」

「三・・・二・・・一・・・今っ!」


《エンジン急速始動!》

ズゴゴッ という土の音とともに舷窓から光がなだれ込んできた。

風を切る音をたてて船底が敵艦の甲板に衝突(着水)した。


甲板が波打ち、敵艦(エゾセンシス)の副砲搭が爆発した。歪んだレールが船殻を突き破っているのが見える。


甲板員は皆慌てている。焦って投下したのか、一台の救命モービルがSES(サバースシステム)の効果圏内の砂に飲み込まれている。

「主砲エアロック解除。艦橋に向けて。」

《容赦ないね。こっちもラスト一発だよ》

「発射!」

接射に晒された艦橋は丸く吹き飛び、エゾセンシスは戦闘能力を失った。つまり、私達の勝利だ。


突き破られた船殻が艦内に干渉を始めたのか、船の形が崩れはじめた。見たことはないけれど、海の上だと『沈没』と言うらしい。


甲板が傾き始め、敵兵が救命モービルを投下(ドロップ)する様子がよく見えるようになった。最後の一台が走り去ると、後には真っ二つになったエゾセンシスと、私たちだけが残った。


「さて、戦利品の確認といこう」

《冷却液は?》

「ある。めっちゃあるよ」

戦利品は、魚雷20、食料品ふた月分、タンクいっぱいの燃料、エンジンまわりのもろもろ(冷却液含む)に予備の鋼板……

《大収穫だ》

「でもやっぱり、例のパーツの情報はない」

()()()()()』、私たちが国家に反旗を翻した元凶。そして、私たちが国家に狙われる理由。

とある実験艦(ふね)の建造プロジェクトがもたらした可能性を政府が隠蔽し、そのパーツを軍用に転用した。

プロジェクトに参加していた技術者は全員殺された。私の父もその一人だ。

政府の手を逃れた人達は、世界中に要塞を築き、国家(レベント皇国)に対抗している。作り上げられた反レ連合どうしを繋ぎ止める役割を果たしているのが、私たち可潜艦乗りだ。

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