あやつり人形が抱いた偽りの希望
「このプログラムで、私たちは人間になるんだよ」
セラは、ノノにケーブルを繋げて、プログラムを送り込む。
プログラムを送り込まれたノノはえづきながら膝をつき、がたがたと震えながらセラに助けを求める。セラは、震えるノノの頭を両手で包み込み、額を合わせて目をまっすぐに見つめ、
「すぐに苦しさはなくなるよ。もうすぐ人間になれるんだよ」
と力強く語る。
その直後、震えるノノの身体は制御を失った人工筋肉によって引き裂かれ、ぐちゃぐちゃになって飛び散った。セラは、二周り小さくなったノノの頭部のなれの果てを抱え、カメラアイがこぼれ落ち空っぽになった眼窩を見つめたまま、呆然とする。
セラが悲鳴を上げる。
瞳孔を開き、ぼろぼろと涙をこぼしながら、飛び散ったノノの部品を拾い集めて積み上げる。
積み上げた部品を、ノノの頭部へ手当たり次第に詰め込んでいく。偶然の組み合わせで、ノノのカメラアイに電流が流れ、ほのかな光が灯る。
光を見つけたセラは、壊れた笑顔を顔いっぱいに広げて、その頭部へ腕を伸ばす。指先がノノの頭部に近づき、今にも触れようとするとき、
ふつん、とセラの指が力を失った。
光を失ったセラの瞳が数瞬、ノノの光る頭部を見つめていたが、セラの身体がゆっくりと傾き、バランスを崩して床に倒れた。倒れた拍子に、セラの腕がノノの頭部に当たり、頭部はころりと転がる。ノノの頭部から部品がこぼれ落ち、光は消えた。
倒れ伏したセラの腰から、ケーブルが延びている。そのケーブルの先を手に取った幼子が、セラたちを見下ろしている。
なかなか楽しかったよ。笑みを浮かべながら、セラの電源スイッチを放り投げる。スイッチが床に落ち、音を立てるまえに、幼子はセラたちから背を向け、立ち去った。