4.斑の仕事
我の役目は多岐にわたる。戦いの神でもある我は、邪や災いを払い、悪を懲らしめる。また善を行う者に財を呼び込み、富を与える。
だが、こっちの世界へ修行に行ってこいと送られてからは、殆どの力を封じられている。その為に穀潰しに成り下がってしまうなど、我には耐えがたい屈辱だった。だから我の力を主となった美加に見せることにしたのだ。
ただその為には魔力を貯めねばならぬ。主の魔力は心地よく、相性も良いらしく、近くにいればよく貯まるので、それはもうすぐ実行できる。
驚くが良い。これが我の実力だ!
斑が真鍋家にきて、はや一週間。毛が抜けないことで鼻炎のアレルギー問題が解決し、問題なく暮らしている。まあ、しゃべる言葉がおっさんであっても、見た目は子猫なのでもふっていたら、可愛さで許せる。
しかもこの地球には向こうの世界と違って魔力が殆どない。特に科学が進歩している場所には、ゼロと言ってもいいらしい。その為魔力を必要とする斑は私の側にいることが一番癒されるらしく、無意識にすり寄ってくるのだから溜まらない。昭博から見ればただペットが主人に甘えている姿に見えるとのこと。
よしよし。中々、ペットらしくなってきたよ。
可愛い奴め。
いつものように肉が食いたいと朝から言う斑をもふり、いつもの時間に会社に出勤する。それはありふれた日常で、変わったところはどこもない。昭博は既に出勤しているし後は私が鍵を掛けてドアを閉めるだけだ。
…なのに、突然湧いて出てきたこの不思議な感覚はなんだろうか。
斑も大人しくケージの中に居るし、ガスも消した。電気も消した。窓も閉めた。大丈夫なことを何度も確認して、鍵を閉め会社へ向かった。
いつものお昼休み。いつものようにお弁当を広げながらiPadでネットを開ける。お弁当の中身も代わり映えはしない。午後からの仕事の為に腹に貯めるべく口を動かす。
全部平らげたが、今日は何だか物足りない。そろそろ周期かな?
時計を見ればまだ時間的に余裕がある。隣の席の同僚に食べ足りないからスーパーでおやつ買ってくることを伝えて、外に出た。
少し前まで日差しが痛いぐらいだったのに、体感は温かい感じだ。空を見上げれば全体的に青く晴れ渡っているが雲は薄く、流れてくる風が秋を知らせていた。
「早いなー。これは食欲の秋の到来?」
思わず独り言が出てしまい、周りを見渡したがちょうど誰も居なくてホッとした。
早く買って帰ろう。
美加は近くのスーパーに小走りで行った。
店内を物色しながら程よい菓子パンを見つけ、ウキウキで会社に帰る途中、軽快な音楽が耳に付いた。
ああそういえば、なんとかの宝くじの発売日だっけ。
ネットで広告が出ていたのを思い出した。買わないと当たらないのは知っている。だけど当たると思えないから、買わない。そう思いながら宝くじ売り場前を通ったが、何故か凄く気になり始めた。
なに、この動悸。
宝くじ売り場を離れようとすればするほど、早くなる。それは店の前に行くまで酷くなっていった。まるで詛いのようだ。
前に行けばどれにしますか?と束を見せられた。
え、宝くじってそんな買い方だっけ?たまに選ばせてくれるという話は聞いたことがあったけど、そんな売り場だったのだろうか。
不思議に思いながらもそう言われては選ばないのも勿体ない気がして、くじ引きのように3つも引いてしまった。
あ、9000円分!
1つだけ買うはずだったのに、これも新手の購買意欲を高める手法なのだろうか。掴んでしまえばこれを買わなければならない強迫観念に囚われて、結局1万円を差し出す。
おやつを買いに来たのに、とんでもない出費となってしまった。
溜息と共にお財布を仕舞い時計を見れば、宝くじを買ったせいでおやつタイムの時間が残されていないことに気づいた。
まずい!
来たときと同じように小走りで会社に戻ることになった。
今日は変な感覚ばかりで、気味が悪い。早く帰って斑で遊ぼう。
その頃斑はケージの中で飛び跳ねていた。
我は良い仕事をした。この結果が出たとき、我はあの肉を所望するぞ!最高ランクの肉と言われる、A5ランクの霜降り肉を!
何故知っているか?それは主の膝に乗ってネットやテレビを見ているからだ。
前に一度アレが食べたいと言ったら、お金がいると言われた。
なんだ。この世界では肉を食うのに金が掛かるのか。
我が住んでいたスフィアでは、山に魔獣が蔓延っていたから肉には事欠かなかった。この地球といわれる世界には自由にとって食べて良い肉がないという。
『では、どうするのだ』
「スーパーとか、お肉屋さんとかで買うよ。斑が食べたい肉は、めったに食べられる肉じゃないよ」
どうやら美味しい肉ほどお金が一杯いるらしい。
だからお金を作ることにしたのだ。無職の我(ちょっと根に持っている)にでも出来る仕事は、それは主の金運をあげることだ。
連休ももう終わりだな-。
これもどこまで書けるかな?
皆さんは台風大丈夫でしたか?