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15.異世界スフィア

仕事の合間に投下。

ああ、良く寝た。腕を伸ばして背中を伸ばしていると、柔らかで温かいものに触れた。

斑?

その毛並みは確かに斑であったが、大きさは違った。

でかっ。

心で突っ込みながらまじまじと見る。

お腹の斑点とか間違いなく斑だ。

これが本当の大きさなのか。これは、肉、肉言うだけあるよ。地球で見る虎よりも一回りは大きい。それにカッコいいじゃない。

「主」

声を掛けられて気が付いた。ここは異世界。ハルに拉致されてきてんだ。どれぐらいの時間が経っているのだろう。

「私どれぐらい寝てたの?」

「…3時間ぐらいか。冷静なんだな」

確かに。いつもの私なら喚いていたよ。

なるようにしかならないと思えているし、地球に居る時より、体にエネルギーが充満しているのがわかる。

これが異世界補正?


手の先に意識を集中させると、ぼわっと指先が光った。

これはなに?

自分でやっておいて、これはなに?はないだろうけど、本当になによ、これ!

段々と光が強くなるんだけど、どうやって止めるの?!


「斑!」

叫んだのが引き金になった様で、その光は膨張し続け部屋の屋根を通り過ぎていった。

呆けている場合じゃない。

「あれ、どこへ行ったの?」

「我が聞きたいわ、あれはなんだ?」

「斑が知らないんじゃ、誰もわかんないって」

部屋のドアを勢いよく開け、光を追うべく外に出た。ドアの前で待っていたハルを突き飛ばして。

「邪魔」


他にも美加が目覚めるのを待っていた人々が居たようだが、そんな余裕はなかった。

「主、あれだ」


空高く真っすぐに上がっていく光。夜ならば花火のようで綺麗だと言っただろう。

「ハル!」

美加は迷わずハルを目の前に召喚した。

「あれを追って」

「背中に捕まれ」

人型の背中に乗るとそのまま龍へと変貌していった。


その光をハルと追いかけていると、ある地点でそれは止まった。

光はそのままゆっくりと更に大きくなっていく。自分が出したとは思えないほどそれは温かい。

例えば寒い夜に温かなお風呂に浸かった時のように、ホッとする感じだといえばいいか。


光をじっと見ていたら、それが何か分かった。

「ハル、後はお願いしてもいい?」

「…任された」

「本当に頼んだわよ。私には羽が付いてないんだから」


美加はその光に手を向けた。

もっと、もっと大きくなっていい。そう、いい子ね。もう少し…、あと少し。

これでいい。

「浄化」


体から急激に抜けていく何かに、美加はふらつく。ハルはしっかりと美加を固定していたが、眩暈にも似たぐらつきと魔力不足に目を開けておくのが精一杯だった。

最後まで見ていたい。

空に大倫の花が咲き誇る。それは多くの人の目に移り、幻想的な美しさに手を合わせた。

まるで神の降臨だと言われるほどに。

またある人は新たな神が生まれたとも称した。


咲き誇った花がゆっくりと散り、その花びらが空一面に舞った。

声にならない。涙が勝手に出てくる。

流れていく涙を拭うことなく、美加は魅入った。


花びらは平等に、山に谷に森に川に草原に、街に村にあらゆる場所に舞い落ちる。

その花びらが触れたものから黒い靄が滲み出てきて、やがて靄は大気に溶けるようになくなった。

私、頑張った。

ハルの背中に突伏してそれを見守った。

時間にしてどれくらいなのか見当もつかない。

終わった、よね?

耳をすませば、下では人々の歓喜の声が聞こえる。段々とその声が大きくなっていくにつれて、美加は自分が今どんな状態でいるのかを、認識させられた。


あ、まずい。

意識失っていればよかった。


意識してしまえば、自分の状況を嫌でも認識してしまう。

どうしよう。

どうしよう。

どうしよう。


自分が高所恐怖症だということを、思い出してしまった。



「主、皆に手を振ってやってくれ」

「ムリ」

「何でだ。主は凄いことをやってのけたのだ。皆の尊敬の念を受け取ってやって欲しい」

「でも、ムリ」

「この騒ぎが…」

「だから、無理なんだって。高いのダメなの」

「我に」

「そんなの必死だったからに決まってるでしょ。下を向くとか私に死ねということと同じことよ」

「我は主を振り落とすなど」

「ここで漏らしてもいいなら」

「…ああ、どこかで降りてから斑に」

「わかったならいい」


なんで私がこんなところで、羞恥心に悶えなければならないわけ?

もう、最悪っ。

頭はぐるぐるするし、手にも足にも力が入らないし、もう寝たい。


ハルに誰もいない山間に降りてもらい、斑を呼び出した。

「まだらー、枕」

それだけ言うと、美加は意識を失った。





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