14.買い物と異世界
我に返った美加はすぐに昭博に釘を刺すことを忘れなかった。
「分かっていると思うけど、それ人前で使うこと禁止だから。それともう一つ。テンション上がって買い物するなら、自分のお小遣い内にしてよ。ご近所に突然色んな物を買っているのがバレたら、何を言われるかわからないから」
昭博は目に見えてシュンとした。
それぐらいは分かっていると思っていたけど、やっぱりわかってなかったのね。
これから先、大丈夫かな?
ハルの言う通り一度向こうに行って現実を知れば、昭博も落ち着くかもしれない。知らないから恐怖も不安もなく、憧れだけが膨れていくのだ。
うん。きっとそうだ。
では、早速明日有給休暇の申請をしなければ。
「お小遣いって、少しは上がる?」
「上がらない。家のローン返すのが先」
「でも!月々余裕出るよね?!」
「これで、貯金が出来るね」
あ、凹んだ。
「臨時ボーナスは出すから」
「どれくらい!」
立ち直りははやっ!
「10万かな?」
「よっしゃー‼」
あ、これくらいで良かったんだ。可愛い奴め。
多分ベストとかズボンとか、帽子などを買うんだろうな。それに自動浄化と自動修復が付与できるかどうか、試してみたいな。
美加は自分もスキルがあることに慣れてきていることに、気づいていなかった。
次の日、有給届を出して昨日と同じように驚愕された。上司にそんな顔させるほど、社畜してたわけ私?
それはちょっと悲しい事実だった。
そんなわけで来週の金曜日とそのまた一週間後の金曜日を休みにした。状況によってはそのまま買い物して、準備が整ったなら向こうの世界を覗いてみるのもいいと思っている。
無事当選した宝くじの換金を終え、ホッと一息ついていた。2億5千万は2億と5千万にわけて貯金した。残りの5千万のうち三千万は家のローンに充てるということで、普通預金に。2千万は危ないと言われながら、持って帰ることにした。
私にはアイテムボックスという強い味方がある。強盗にあっても手に持っていないのだから、誰にも奪われることはない。
きっとこの最強の金庫を持っているのは地球上で私だけだろうと思うと、なんだかワクワクする。もう昭博の事笑えない。
さてお金も手にしたことだし、約束通り斑にお肉を買わなければ!
後は新幹線に乗って帰るだけだから、豪華に東京のしかも銀座で買い物して帰ることにした。地元で高いお肉を買うとか、誰かに見られていたらすぐに噂になる。そんな危険を冒せない。
それに…何たって、お肉も魚もアイテムボックスへ収納すれば、腐らない!
魔法万歳!
善は急げ!
金額見ないで買ったのなんて、初めてだよ。
いつもなら値段見てどこかケチ付けて買わなかったものを、こんなもんね。なーんて、買えるこの快感。味わったら堪らないね。東京に住んでなくて良かった。
お肉のそれも神戸牛や松阪牛のステーキA53㎏中トロの短冊5㎏とか思わず目をむいてしまった。
それでもしれっとカードを出して払うスキルをなんとか身につけた。今度があれば、もっとスマートに買いたい。
ああ、慣れない高い買い物をした後は、一気に疲れる。後は地元で買ってもおかしくない物ばかりだから、スーパーで買うことにした。お野菜、お水など飲み物は大事だからね。
どこに避難するのだと思う量の飲み物でちょっと目立った物の、車に詰め込んでしまえば後はアイテムボックスへ収納で、なんて楽ちん!
さあ、家に帰って斑をお肉分もふるよ。
って、ねえ。
気持ち悪い。これってなんかに酔った感じ?ぐるぐるする。
ちょっと覗いてみようとは思ったわよ?
思ったけど、なんでいきなりなのさ!
どういうことよ!ハル!!
人を食ったような顔で車を出たところを狙って、人を拉致するんじゃないよ!
気分が悪すぎて声にならなくて、心で抗議する。
「主よ、なんでグッタリなのだ」
「あんたのせいに決まってるでしょ!」
ダメだ。大声出したら、もっと気持ち悪くなった。
まだらー、斑は何処―。枕になれ―。
「ん、主どうした…ここは」
「おお、斑か。主の魔力は桁が違う」
「ハル!お前主に何した」
「こっちに来てみても良いカナーって言っているのを聞いたんでな、連れてきた」
「お前な-、ここと向こうのマナの量が違うことを忘れていたな」
「忘れとった…」
「我も戻ってきて思い出したのだが…主大丈夫か?」
「だいじょうぶじゃない」
「そうみたいだな」
取り敢えず、ベッドに寝かせて休ませるしかないが…。
「ハル、お前が運べ」
こうして美加の初異世界は、時空間移動酔いでベッドに張り付くことになった。
まだらー、まだらはここ。
主美加の要望により、斑は枕となった。
美加異世界一日目は、極上のもふもふで寝ることで終わった。
取り敢えず書けたから投稿。
後で直すかもしれないけど。