あなたは涼風の様で1
だいたい今のコキアとミツナのレベルならローマエリアが最適だろう。
ということでローマのクエストフィールドにてここ数日イレイザーズは遊んでいた。
現れる敵は宗教の信者。
素手で襲い掛かってくる。
応対するはコキアとミツナ。
パパパパッと小さな炸裂音が鳴って魔弾が発射される。
ウィザード……コキアの魔法だ。
タタタタァンと甲高い炸裂音が鳴って銃弾が発射される。
ガンリアー……ミツナの銃撃だ。
アクションゲームを踏襲しているため、雑魚キャラは一切傷つかずにヒットポイントを減らし零になればフェードアウトするだけなのだけど、此処……ローマエリアでは良心の呵責と折り合いをつける必要がある。
何せ襲ってくるのがどう見たって一般ピーポー。
当然頭部や心臓を攻撃すればクリティカル判定が出るんだけど……意図してそこに攻撃できるかは別問題。
VRゲームが仮想犯罪と実質犯罪の境界を薄めるというプロパガンダをうっかり信じてしまいそうになるフィールドだ。
仮にそうした犯罪者が出たところで僕の知ったこっちゃないんだけど。
閑話休題。
「ホットレーザー!」
ボイススキップ機能で必殺技の名を叫ぶミツナ。
そしてミツナの銃からレーザーが射出される。
貫通力を持った超射程のレーザーだ。
「うりゃあです!」
ミツナは銃口を右から左に振った。
レーザーも銃口に合わせて右から左へ。
必然扇状に敵がやられていく。
残った敵は、
「チェインボム!」
コキアの魔法で吹っ飛ばされた。
爆発が爆発を呼び、百に届こうかと云う雑魚キャラの群れは駆逐されていく。
チェインボム。
ウィザードの持つ雑魚殲滅用の魔法だ。
対象を指定して爆殺し、その爆発に触れた対象を爆殺する。
それが連鎖の如く広がっていって雑魚キャラの群れを駆逐する広域殲滅スキル。
「うん。中々育ってきたね」
シリョーが嬉しそうに言った。
「コキアさん。MP回復しよっか?」
スミスが下心丸出しで言った。
「必要ありません」
コキアはけんもほろろ。
「疲れた。交代」
気苦労があるのだろう。
手を上げて疲労の吐息をつくのはミツナ。
「任されました」
僕はそんなミツナにハイタッチ。
先行するのは僕。
オーバードライブオンラインは無双ゲーであるため雨後の筍の如くポコポコと雑魚キャラが沸いて出る。
とは言っても雑魚は雑魚。
十把一絡げに相違ない。
「フォトンブレード」
手に持つナイフ……グラムの固有スキルを発動させる。
ナイフから光の刃(ぶっちゃけビームサーベル)が展開される。
その刀身は五メートルを超える。
広域殲滅用のスキル。
ちなみに装備固有のスキルであるためMPは消費しない。
そして僕は加速した。
疾風だ。
超過疾走システム。
その恩恵によって人間の持つフィジカルのきっかり十倍の出力を誇る。
湧いて出る雑魚キャラ……信者である人間型アバターを苦にもせず屠っていく。
グラムの刀身から伸びるビームサーベルは無数の群れとなった雑魚キャラを触れただけで滅ぼす。
一方的な虐殺だ。
血も出ないし苦鳴も聞こえないけど、
「殺人を行なっている」
ということは事実である。
仮想体験だけどね。
もっともそんなことをチクチクつつけばオドなんてやってらんないわけで。
良心の呵責とは既に折り合いをつけている。
「おおおおおおおおおおっ!」
目に付く雑魚キャラを殺して殺して殺しまわる。
そしてフィールドを進めていく。
半径五メートルを結界とし、
「斬殺領域」
と僕は呼んでいる。
グラムの固有スキルの一つ……フォトンブレードは装備者の意思によって幾らでも刀身を伸ばすことが可能だ。
ただし刀身……射程が伸びれば伸びるほど攻撃力が下がるんだけど。
いくらかの経験によって五メートルが最適だと僕は結論付けている。
切殺。
斬殺。
断殺。
疾駆と跳躍を繰り返して雑魚キャラの頭部を切り裂いていく。
「断じて行えば鬼神も之を避く」
ではないけど、まぁ似たようなモノだろう。
そして雑魚を殺しつくしてフィールドを進めると、
「邪教徒よ。神の怒りに触れるが良い」
ボスキャラが現れた。
ちなみに司教。
これがセカンドエリアやサードエリアともなると枢機卿や教皇猊下が出てくるんだけどね。
「はい。交代」
ミツナとハイタッチ。
ボスキャラはウィザード寄りの能力だ。
コキアのウィザードとミツナのガンリアーには互いに相性が良いだろう。
「ダムダムショット!」
ミツナがスキルを放つ。
それがボスとの最初の接触だった。




