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あなたは太陽の様で2


 季節は夏。


 地球の地軸の傾きによって日本には四季が存在する。


「だから何だ」


 って言われればそれまでだけど暑いものは暑い。


 夏季休暇も近づく最中。


 僕はエアコン全開の寝室で微睡んでいて、


「雉ちゃん! 朝だよ! 起きる!」


 毎度毎度秋子に叩き起こされるのだった。


 ちなみに夏季休暇が近づいてはいるけど今現在の教育ではテストと呼ばれる単位処置は絶えて久しい。


 理由は簡単。


 ブレインアドミニストレータによる量コン化とブレインユビキタスネットワークへの接続によって正確な学力が計ることが困難になったためだ。


「テストを受けるのにスパコンとネットを使っていいですよ」


 ではテストがテストの意味を為さないのである。


 あえてテストに出来るモノと云えばリベラルアーツと体育くらいだろう。


 そしてそんなものは今現在の人類にとって毒にもならない。


 閑話休題。


「秋子。コーヒー」


「ホット? アイス?」


「アイス」


「はいな。すぐに準備するからね。二度寝しちゃだめだよ?」


「あい」


 頷いてフラフラとベッドから転げ落ちる。


 のそのそと立ち上がってダイニングへ。


「はい。コーヒー」


 アイスコーヒーが目の前に置かれる。


「あんがと」


 感謝してストローでコーヒーを飲む。


 眠気が払拭されるまではまだ時間がかかるだろう。


「ん。むにぃ」


 くしくしと目をこする。


「また夜更かし?」


「仕事が入ってね」


「難儀だね」


「…………」


 否定はしない。


 というか出来ない。


 ちなみに今日の朝食は海苔巻とサラダとフレッシュジュースだった。


「いただきます」


 パンと一拍。


 もむもむ。


「簡素なメニューでごめんね」


 的外れの謝罪。


 当然秋子のモノだ。


「嬉しいよ?」


 僕は心底そう言う。


「本当?」


「本当」


 またもむもむ。


 中略。


 朝食をとり終えると僕は瀬野三の制服に着替える。


 秋子は食器の片付け。


 いちいち紺青さんには頭が上がらない。


 申し訳ない。


 おじさん。


 おばさん。


 当人がすすんでやってることは百も承知だけど、その根幹にある感情を僕が許容できないという点で万死に値する。


「知ったこっちゃない」


 というのも一つの回答ではあるけど。


 で、準備を終えると僕と秋子は肩を並べて登校……しようとして、


「今日はサボろう」


 自暴自棄的に僕は言った。


「駄目」


 けんもほろろな秋子。


「とは言ってもさぁ」


 暑い。


 それに尽きる。


 入道雲を西の空に見て太陽の日差しを浴びる。


 焦熱地獄とはこのことだ。


 仏教徒ではないんだけど。


 でも両親ともに形式上は浄土宗だし僕が死んだら浄土宗で供養されるのだろうけど。


 とまれ、


「クーラーの結界から出たくないよ~」


 というのが僕の本音。


「教室に着けばエアコンが効いてるよ」


 だろうけどさ。


 エネルギー先進国の日本らしい大盤振る舞いと云ったところだ。


 エントロピーって何だろね?


「あう~」


 焼ける。


 茹る。


「はい雉ちゃん。濡れタオル。首に巻くといいよ」


 当たり前のように秋子はそう言った。


 手には濡れタオル。


 量子質量変換によるものだろう。


 すでに僕は秋子に支配されている。


「秋子は良いお嫁さんになるね」


 首に濡れタオルを巻きながら僕は言った。


「雉ちゃんになら……いいよ?」


 さいでっか。


 精神的疲労を覚えながら夏の熱気にもうんざりとする。


 早く教室に着きたい。


 クーラーを。


 僕に冷気を。


 それだけが僕の思念だった。


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