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傷はまだ瘡蓋残し6


「……っ!」


 タタタタァンと連続して銃声が鳴る。


「なんか……その……」


 言葉にならない。


 悪鬼羅刹の如く問答無用に敵キャラを銃殺していくミツナ。


 もちろんゲームの世界で、です。


 というか現実でやったら大問題だ。


 オーバードライブオンライン。


 超過疾走システムのアシストも有り、蹂躙と云う言葉が似合うほどの八面六臂。


 気持ちはわからないでもない。


 オドはVRMMOアクション。


 それも無双ゲー。


 誤解を承知で云うならば、


「大量殺戮を仮想体験できる」


 ゲームだ。


 つまり、


「憂さを晴らす」


 にちょうどいいと云うことでもある。


「……っ!」


 コスモガンが休憩も中断もなしに銃弾をばらまいて敵を鏖殺していく。


「なんか今日のミツナさん気合入ってるね……」


 空恐ろしさを感じているのはスミス。


 君が原因なんだけどね。


 言わないんだけどさ。


 で、僕ことハイドとコキアとスミスは後方支援と撃ち漏らしの処理に徹するのだった。


 シリョー?


 お仕事中。


 銃声。


 銃声。


 また銃声。


 無限の弾を吐き出すマスケット銃で湧き出る敵の悉くを銃殺していく。


 まぁそれで心的外傷が少しでも和らぐならそれにこしたことはないけど。


「キシャア!」


 此度の異世界エリア。


 群体で襲ってくるゴブリンの一匹が間合いを潰してミツナに襲い掛かる。


 が、遅きに過ぎる。


 元よりオドでの雑魚キャラは超過疾走システムの恩恵を受けられない。


 今後のアプデの予定については知らないので、一時的なモノか恒久的なモノかはわかんないんだけど。


 そのゴブリンの一体に隠し持っていたもう一丁の銃を向ける。


 というか銃口をゴブリンの額に突きつけて、


「…………」


 無情に引き金を引く。


 タァン。


 脳を撃ちやられて消失するゴブリン。


 クリティカルヒットだ。


「うわぁ」


 その心象は理解の埒外。


 が、想像できないわけじゃない。


 他者を害することに爽快感を覚えるのは人としての機能だ。


 良心の呵責を覚えない人間ほどその傾向が強まるのは言わずもがな。


 あるいはゲームと割り切っているのか。


 ゲームを始めた頃は敵キャラに怯えたり害することに抵抗を覚えていたミツナではあったけど今はもうそうではないということ。


 自身の憂さを晴らすために大量の生贄を必要とする。


 現実世界では不可能であるからゲームの世界で。


 そしてオドはそう云った環境を用意してくれる。


 であるためミツナの銃声は鳴りやまない。


 殺して殺して殺しつくす。


 衝動のままに。


 背中を押されて。


「何かあったのか?」


 僕にボソリと尋ねてくるスミス。


「まぁままならないこともあるよね」


 それが僕の答えだった。


 そしてほとんどの雑魚キャラを銃殺してクエストフィールドを進めばボスフロア。


 ボスは青い巨人だった。


 禿頭に棍棒。


 いわゆるトロール。


「手ぇ貸そうか?」


 僕が提案すると、


「必要……ありません」


 ギラついた目でトロールを捉えてけんもほろろ。


 そして加速。


 まるで疾風だ。


 トロールも超過疾走システムの恩恵を受けてはいるけどブーストの度合いが違う。


 連続して銃が吠える。


 繰り出された弾丸は正確にトロールを撃ち貫く。


「グギャア!」


 吠えて棍棒を振り下ろすトロール。


 それを紙一重で躱してトロールの棍棒の上に足をやるミツナ。


 そのまま棍棒……腕……肩へと身を移し、トロールの頭部に零距離射撃。


 後に離脱。


 跳躍によって高く高く跳び(超過疾走システムのアシストによって何倍もの高度を……である)土産に銃弾を数十発更に埋め込む。


「ギギャア!」


 吠えるトロール。


 ターゲットはミツナだったけど相手になるわけもなく。


 修羅の如き超過疾走するミツナと銃弾の前には有象無象の一つでしかなかった。


「うーん……」


 荒れてるなぁ。


 それが僕の率直な感想だった


 鬱憤が晴れるならそれはそれでよかろうけど……。


 結局このフィールドはミツナの独壇場だった。


 トロールさんに合掌。


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