傷はまだ瘡蓋残し2
「駄目なことしちゃ駄目だからね!」
そんな秋子の声に引っ張られながら僕は外出した。
隣には量子。
ただしアバターは紫髪のセミロング美少女のそれ。
プライベートにおいては規制が緩くとも対外的において二次ェクトはある程度規制されている。
別にそれが理由じゃないんだけどブラックセミロングツインテールの『大日本量子ちゃん』アバターで注目を集めるのは心臓に悪い。
そんなわけで立体映像らしく簡潔に描写を変更してのデートだ。
まぁ電子犯罪に目を瞑ってもらえているから、これくらいの返礼は良しとせなばならないだろう。
無論好意と云う面も無きにしはあらず……ともいうけどね。
「じゃあどこ行く?」
「モール!」
百貨繚乱ね。
そっちに向かって歩き出す。
「ところで雉ちゃん?」
「何でっしゃろ?」
「夏美ちゃんの件はどうなったの?」
「一応フォローはしたけど結果自体は知ったこっちゃないなぁ」
本音だ。
多分恨まれているだろうけど損得感情のソロバン弾くまでには至らない。
「ふぅん?」
どこか探るような量子の言。
「じゃあ夏美ちゃんを気に入ってるとかは無いわけ?」
「そりゃ超絶美少女だし睦言を囁かれたら僕とて平静ではいられないと思うけど」
「むぅ」
量子の気持ちもわからないではない。
そもそもにして秋子と云う強力なライバルがいるのだ。
この上夏美まで参戦されることは避けたいのだろう。
ありえないけどね。
元より恨まれて何ぼの身だ。
良く言って馬鹿。
悪く言って悪者。
少なくとも先日の夏美の罵倒は本心からだろう。
一分たりとも気にちゃいないけど、それ故に夏美が僕に心を仮託するのは有り得ない。
多分。
そんなこんなで百貨繚乱。
大型ショッピングモールに着く。
さて、
「どうする?」
問う僕に、
「とりあえずお茶」
妥当な提案。
モールに展開されているコーヒースタンドに入って僕はコーヒーを頼む。
量子はコーヒーとケーキ。
ただしデータ上の。
元より立体映像なのだから当然っちゃ当然。
ネットマネーで支払って席に。
「ん。上々」
コーヒー(データだけど)を飲んで量子が論評。
「値段相応には美味しいね」
僕も諸手は挙げないけど評価はする。
「この後どうする?」
「うーん。夏用の服を見てまわりたいな」
「立体映像が何を言うか」
なんて思ったけど言葉にしないだけの分別は持っている。
元より量子は着飾らなくとも十分に可愛い。
それも口にはしないけど。
調子づかれても困るし。
「雉ちゃんの服も見繕ってあげる」
「そりゃ光栄で」
皮肉気に笑ってしまった。
それからスタンドでまったりした後、僕と量子はモールの服飾コーナーを回る予定を立てた。
そしてその通りに行動する。
「これどうかな?」
ブランド服を試着して量子が問う。
「僕はこういうことに疎いからなぁ……」
本音全開。
「可愛いの是非を問うてるの!」
「地が良いから何着ても似合うと思うけど」
「あう……」
照れ照れ。
一丁前に量子が照れる。
こういうところは可愛らしい。
「似合ってるの?」
「まぁ可愛いとは思うよ?」
「本当に?」
「嘘でもいいけどね」
肩をすくめてみせる。
「淡白……」
「自覚はあるよ」
元より眼の良い方ではない。
それから二、三の服飾店を回って量子と議論しながら服を購入していくのだった。
「じゃ、次は雉ちゃんの番ね」
「本当に買うの?」
「任せて」
別に着られれば何でもいいんだけどな。
「お金は有り余ってるし」
「立派なヒモだなぁ」
心底そう思う。
「じゃ、とりあえずセレクトショップに行こうよ」
「あいあい」
反論するのも億劫で僕は量子につき従った。
オシャレに関してなら量子の感性に任せて大丈夫だろう。




