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転換点4


 今日のオド……オーバードライブオンラインは僕ことハイドとコキアとシリョーとスミスの四人体制である。


 ミツナ?


 ログインすらしていない。


 気持ちはわかるけど気にしているのは僕だけ。


 コキアはジャングルステージで火属性の魔法をバンバン撃ちまくって大火災を発生させているしスミスはそんなコキアのフォローを一所懸命やっている。


「阿っている」


 というのが一番正しいだろうか。


 無論コキアとスミスについてだ。


 コキアはミツナと云うライバルがいなくなって清々している。


 スミスはコキアをフォローすることで取り入ろうとしている。


 そもそも論になるけど、


「意味ないよ君たち」


 と云いたいのを僕はグッとこらえるのだった。


「あっつぅ……」


 大火災に見舞われている(無論全員がそうであるのだけど)シリョーが手を団扇代わりにパタパタと振って冷気を胸元に送り込む。


 そりゃまぁ樹々の密集したジャングルステージで火属性の魔法なぞ使えばこうなることは目に見えている。


 あからさまだ。


 が、ダメージ判定は僕たちだけじゃなく敵キャラにも及ぶ。


 再確認するけどオドは無双ゲーだ。


 である以上、少なくとも雑魚キャラはレベル相応に弱い。


 炎に包まれた密林においては炎がそのまま攻撃となる。


 あっさりとボスキャラのいるところまで僕たちは辿り着くのだった。


「そういえば」


 今更なスミスの言。


「ミツナさんはどうしたの?」


 君がそれを聞くかい?


 ツッコみたかったけどグッとこらえる。


 少なくとも昨夜の出来事は……僕と総一郎との間にだけで交わされた秘密の会合だということで決着がついている。


 コキアはスミスに嫌悪感を持つし、ミツナはログインしてないけど、


「それらとフィジカルとを関連付けられるはずもなかろう」


 というのが結論。


 まぁミツナについてはフォローを入れるつもりではあるけど。


「……っ!」


 コキアが意識を高める。


 ボスキャラの登場だ。


 シルバーバック。


 凶悪なゴリラのソレ。


 大火災の中でも意気揚々と僕らに襲い掛かってくる。


「っ」


 コキアがフィンの一撃を連打する。


「ちぃ!」


 スミスが剣を構えて特攻する。


「よくやるねぇ」


「だね」


 シリョーと僕が安寧としてコキアとスミスの奮闘を流し見る。


「フラッシュボム!」


 コキアがボイススキップで魔法を行使する。


「グアアアアアアアッ!」


 シルバーバックは怯んだ。


 その隙に、


「ギルガメスラッシュ!」


 スミスが特攻する。


 そこそこのレベルの連続攻撃にシルバーバックは倒れるのだった。


 とっぴんぱらりのぷう。


 中略。


「これでコキアさんはレベル25か。頑張ったね」


 ヴェネチアエリア。


 そのゴンドラの上で僕とコキアとシリョーとスミスはお茶を飲んでいた。


「コキアさんやシリョーさんはどうやって超過疾走システムに適応したの?」


 ここに僕の名前が入らない辺りスミスの意図が見て取れる。


「特に意識はしてませんね」


「同じく」


 コキアとシリョーはけんもほろろ。


 まぁ……あんな宣言を聞かされた後じゃね。


 しょうがないっちゃない。


「そんなこと言わずにさぁ」


 スミスは食い下がったけど、


「後はハイドちゃんにお願い」


「以下同文」


 コキアとシリョーは愛想が無かった。


 まぁ僕に惚れてる手前、他の男性に興味が無いというのもあるだろうけど。


 でも、


「まぁ」


 それ以上に、


「先の宣言が強烈だったよなぁ」


 とも思わざるを得ないわけで。


「やれやれ」


 じゃがバターを食べながら僕は嘆息する。


「じゃあこれからどうする? またさっきのクエストやる?」


 仕切るようにスミス。


 さすがにリア充はこういうことにおいて的確だ。


 僕は時間を見る。


 午後の十一時半。


「僕は用事があるからこの辺で……」


 後ろめたく言ってみる。


「用事?」


 三人が問うてきた。


「僕にも色々ありまして」


 お茶を濁す。


 スミスはともあれ少なくともコキアとシリョーには知られたくなかったがためだ。


「怪しい」


「妖しい」


 コキアとシリョーがジト目になる。


 勘が良いね……君たち。


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