表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/318

転換点3


 今日の学業も滞りなく終わる。


 いつも変わらぬウェストミンスターチャイム。


 放課後だ。


「きーじーちゃん!」


 秋子が抱き付いてきた。


 僕の胸板に秋子の胸が押し付けられる。


 が、困りはしても揺らぎはしない。


 六根清浄。


 ていうかたまにお互い全裸で風呂に入る仲だし。


 秋子のアピールとしては服を着ている分だけ易しいモノだろう。


 僕と秋子で完結する。


 前にも言ったけど『そんな空気』が僕らにはある。


「雉ちゃん雉ちゃん」


「はいはいはい?」


「デートしよ?」


「いいですけど」


「うふぇ……」


 どういう喜びの表現?


 そして秋子は一対一の抱擁を解いて、僕の腕に抱き付いてくる。


 振り払ってもよかったけど今日は秋子の好きにさせよう。


 もはやバカップルと揶揄されてもしょうがないラブコメっぷりだ。


 今更ではあるけどね。


 と、


「ああ。春雉。秋子さん」


 そんな声がかけられる。


 当然総一郎だ。


「っ!」


 秋子の視線が鋭くなる。


 警戒。


 まぁ必然。


 おっぱい星人に自身の巨乳が狙われていると分かれば誰だって態度を硬化させるのは当たり前……と。


 もっとも秋子と夏美と量子は昨夜の総一郎おっぱい宣言については、


「見ても聞いてもいなかった」


 ことになっているからその辺りも加味した態度をとってほしいのだけど。


 為ん方ないのはわかってる。


 まぁこればっかりは秋子の問題だろう。


「俺たちのグループでカラオケに行くことにしたんだよね。よかったら春雉と秋子さんもどう? 親睦深めない?」


 にこやかに笑ってくれるのはいいけど総一郎くん……君の腹の内は全てバレちゃっていますよ?


 言葉にするほどサービス精神に満ちてはいないけど。


「僕は勘弁」


 そもそもスクールカーストの底辺。


 天辺と付き合っても得る物は無さそうだ。


「そう? じゃあ秋子さんだけでも……」


 だろうね。


「断ります」


 だろうね。


「まぁそう言わず。秋子さんなら俺らの中枢にまで入れるよ?」


 だろうね。


「そんなことに意味はありませんから」


 だろうね。


「ま、そういうわけで」


 僕はヒラヒラと手を振る。


「僕らに構わず楽しんでおいで」


「それでは失礼します」


 堅苦しく言って秋子は僕の腕に強く抱き付く。


 ムニュウ。


 フニュン。


 六根清浄六根清浄。


 総一郎はチラリとだけ僕を睨み付けた。


 気持ちはわからんでもない。


 けど僕とて被害者だ。


 少なくとも現時点においては。


 考慮の余地は……無いだろうけどね。


「じゃあ行こ雉ちゃん」


 けんもほろろ。


 秋子は僕を引っ張って昇降口まで行く。


「デートどこ行く?」


 秋子の頭は僕とのデートでいっぱいらしい。


「何がそこまで?」


 とは思うけど、


「乙女理論には敵わない」


 のも事実で。


 結局、


「百貨繚乱でいいんじゃない?」


 という結論に至る。


 そして僕と秋子は百貨繚乱に向かう。


 とは言ってもウィンドウショッピングに終始するだけなのさ。


 金銭はあるけど秋子は元より僕の金を使うことに対して否定的だ。


 開いた口が塞がらないくらい紺青家に心付けをしていることにさえ否定的だ。


「気にしなくていい」


 とは云うものの、


「気にしなくていい」


 と云われ返されて。


 結局現状を続けるしか他にないってわけ。


 だから僕と秋子はショッピングモールを回るだけ回って時間を潰すのだった。


「雉ちゃん雉ちゃん」


「買いたいものでも見つかった?」


「そうじゃなくて」


 そうじゃなくて?


「今日の晩御飯何が良い?」


「じゃあ豆ごはん」


「ん。わかったよ」


 そして秋子はアレコレと今日の夕食について戦略を立てていった。


 別に僕の御飯を用意しなくともいいんだけど……。


 言って聞くわけじゃなかろうから僕としても流されるんだけどね。


 まぁ心付けの変化球と思えば納得できる……のかな?


 いや、わかんないけどさ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ