墨洲の告白4
「で」
やってきました百貨繚乱。
「雉ちゃん雉ちゃん」
「何でっしゃろ?」
「何処にいる?」
「モール」
思念言語で会話する僕ら。
「りょ~か~い」
そしてゴッドアイシステムを利用して立体映像が投射される。
紫色のセミロングの美少女が立体映像として現れた。
「誰?」
同じく百貨繚乱に来ている夏美が問う。
「量子ちゃんはまた……」
こちらは秋子。
「量子って……」
狼狽える夏美に、
「そ」
コックリと頷いてやる。
二次ェクトがアングラな技術である以上、そうおいそれと大日本量子ちゃんの正式アバターを使うわけにもいかない。
で、先の大日本量子ちゃんのライブでの調整の際に作った疑似アバターを量子はいたく気に入ったらしく、こうやって使っている始末。
そこまで語ると、
「ほえあ~」
と夏美は呆然とした。
ちなみに衆人環視の視線は気にしないことにする。
巨乳にして大和撫子の秋子。
デザイナーチルドレンの夏美。
立体映像とはいえ美少女の量子。
それぞれとび抜けた容姿を持つかしまし娘。
妬み嫉みの視線を受けるのも必然だし、
「もう慣れた」
というのが本音だ。
苦笑してしまう。
「何その邪悪な笑み?」
量子がジト目になる。
「恵まれてるなぁ……ってね」
本音を語る。
「ふやっ!」
と秋子が赤面する。
「…………」
夏美が唇をむずむずさせる。
若干頬が赤い。
「私とデートできるのは世界中探しても雉ちゃんだけだよ?」
量子は不遜に言った。
まぁそうだろうけどさ。
僕は灰色のパンツに押し込んでいるメモ用紙の切れ端をクシャッと握りしめる。
「じゃあどこ行く?」
僕が尋ねる。
ショッピングモール百貨繚乱なのでウィンドウショッピングからゲーセンまで多種多様にある。
「デートですね」
嬉しそうに秋子が言う。
いつも通り腕に抱き付いてこようとしたので、
「よっ……と……」
サラリと躱す。
「何でよう……」
自分の豊かな胸に聞け。
「デート……ですか……」
照れ照れと夏美。
「僕とデートするの……嫌?」
「そんなことはありません。春雉は……その……格好いいですし……」
「そうかなぁ?」
「そうだよ」
「そうです」
「そうなんだよ」
かしまし娘が肯定する。
「じゃあ夏美が僕に惚れる可能性もあるわけだ」
「ふえ……」
反論もせず狼狽することしきりな夏美だった。
あれ?
脈在り?
まぁ秋子と量子が許さないだろうけど。
「雉ちゃん!」
「雉ちゃん!」
やっぱりこうなるのね。
「雉ちゃんは私だけ見てればいいの!」
「以下同文!」
と言われてもなぁ。
夏美は十分に「美少女」の範囲だし。
胸が残念だけど容姿だけならトップクラスだ。
それもモデル体型。
遺伝子操作なぞ片手間に行なえる時代であるけど、故に美少女は量産されるが常だ。
「夏美は可愛いね」
「そういうの禁止」
なに故よ?
「私は墨洲くんが好きなの」
「頭固いなぁ」
それが本音だった。
「あう……」
赤面する夏美。
うん。
可愛い。
一歩間違えれば惚れしまいそうだ。
閑話休題。
僕らは百貨繚乱のウィンドウショッピングを楽しむのだった。
かしまし娘は誰も彼もが容姿的に超一級だ。
であるため服の試着には僕も魅入らざるを得なかった。




