ちょっとした深刻な変化3
ザーザーと雨の降る。
今日の体育は体育館で。
サッと自動で仕切り網が体育館の内部を二分割。
片方が男子で片方が女子。
男子はバスケ。
女子はバレー。
ちなみに僕と総一郎は別チーム。
僕のディフェンスを総一郎は鮮やかに抜いていった。
こういうフィジカルな面においてインドア派の僕はイケメンスポーツキャラの総一郎に逆立ちしたってかなわない。
というか物理的に逆立ちして勝てる勝負があるなら聞いてみたいものだ。
電子世界での法則は現実世界には適応されないのは重々承知しているけど、それにしたってなぁ。
体力くらいつけるべきだろうか?
基本的にバスケは走りっぱなしのスポーツだ。
体育の授業であるため一試合十分と定められているけど、それでも、
「……もう……だめ」
試合が終わる頃には肩で息をする僕だった。
最後のブザービーターに総一郎がダンクを決める。
さすがにイケメンキャラ。
こういうシチュエーションが様になる。
「「「「「墨洲くーん!」」」」」
女子はワーキャー。
総一郎のプレイに興奮したらしい。
「ども。ども」
総一郎はにこやかに返す。
女の子慣れしている奴……。
ともあれ僕のチームの試合は終わった。
「お疲れ~」
チームメイトに義理の言葉を放って体育館の隅っこに移動する。
そして、
「やれやれ……」
疲労故に座り込んだ。
「雉ちゃん」
秋子が声をかけてくる。
近づいてくるのは悟っていたから驚くことでもない。
「はい。お茶」
水筒を持っていた秋子がカップにお茶を注いで渡してくる。
「ども」
受け取る。
「秋子は良いお嫁さんになれるね」
「ふえ! ふややっ!」
目に見えて狼狽えられる。
可愛いなぁ。
赤面する秋子は本当に愛らしい。
「頑張ったね雉ちゃん」
皮肉か。
「何にも出来なかったけどね」
茶を飲む。
「ほら、汗ふいてあげる」
タオルも持っていた。
「タオル渡して」
「だぁめ」
「自分で出来る」
「照れることないじゃん。私と雉ちゃんの仲だよ?」
対外的な反応を考えてほしい。
「…………」
すぐ諦めたけど。
僕は秋子のふるまった茶を飲んで秋子に汗を拭かせている。
「どこの亭主関白だよ」
って話だ。
男子の視線に含まれるのは羨望と嫉妬。
女子の視線に含まれるのは呆れと胡乱。
要するに、
「衆人環視の中でよくイチャコラ出来るな」
である。
わかってはいるけど無下に出来ないのも心理で。
であるから僕と秋子はクラスで……というより学校で孤立していた。
「紺青さーん。次うちらだよー」
女子の一人が秋子を呼ぶ。
「ほら、呼ばれてるよ?」
「うん。じゃあ行くよ。ちゃんと水分とって汗ふいてね? 脱水症状起こしたり風邪ひいたりしたら嫌だよ?」
「あいあい」
首にタオルを巻いて茶を飲む。
秋子はパタパタと女子エリアに戻っていってバレーの試合に加わった。
「至れり尽くせりだな」
今度はそんな嫌味が飛んでくる。
総一郎だ。
黒髪ショートをウニの様にツンツン尖らせているのはやはりワックスの類だろうか?
そういうことには興味が無いので詳しくは知らないんだけど。
「秋子さんと付き合ってんのか?」
「いいや?」
「にしては仲良いな」
「幼馴染でね」
「本当にそれだけか?」
「気になるの?」
「そりゃなるだろ」
ですよねー。
そんなこんなで秋子の試合が始まる。
レシーブやサーブをするたびに豊満な胸が体操服越しにもわかるほど大波に揺れる。
「秋子さんの胸パないな」
そんな総一郎の言。
否定はしない。
僕は黙って茶を飲む。
男子のほとんどが弾み揺れる秋子の巨乳に視線を奪われていた。
おっぱい星人どもめ。
まあ顔のつくりが良くてスタイルも良いとなれば憧れない男子なぞ例外を除いていやしないんだろうけど。




