表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/318

ちょっとした深刻な変化1


「ケーツエン! ショーリャクッ! エーモユーエシーッ!」


 目覚ましにかける音楽を間違えた。


 昨夜の僕は何を考えていたんだ。


 いや、わかってはいる。


 久しぶりにフルメタルジャケットを見た影響だろう。


「あう」


 ハートマン軍曹の幻影に急き立てられながら僕はコロコロ転がってベッドから落ちる。


「きーじーちゃん?」


 ちょうどよく秋子が起こしにやってきた。


 そしてベッドからはみ出した僕を見て、


「なんだ。起きてるんだ。偉い偉い」


 そんなたわごと。


 時間通りに起きて、


「偉い」


 と褒められるのは高校生にも通じるんでしょうか?


 気にすると負けだから意識から除外するけど。


「あう……」


 僕は唸る。


「ほら立って。朝食出来てるよ?」


「ちなみに?」


「御飯と納豆と豆腐の御味噌汁」


「梅干し付けて」


「はいはい」


 某ゲームの影響でたまに納豆に梅干しを混ぜるのが僕のアイデンティティ。


 あるでしょ?


 そういう自分ルールって。


 さてさて、


「くあ……」


 欠伸をしてパジャマを脱ぐ。


 そろそろ初夏を感じさせる気温に僕は熱を覚えた。


 明日の目覚ましは茶摘み歌にでもしようかな?


 くだらないことを考えながらダイニングへ。


 朝食の良い香りが鼻孔をくすぐる。


 特に味噌。


 香り立つ匂いは芳醇だ。


 で、


「いただきます」


 とダイニングテーブルについて僕は合掌。


 梅干しを納豆に落として混ぜる。


 梅の香りと納豆の匂いが混じりあって爽やかな演出。


 白米でかきこむ。


 味噌汁を飲む。


 そんなこんなをやってあらかた朝食を片付けると、


「ご馳走様でした」


 一拍。


「お粗末様でした」


 ニコリと秋子が笑う。


「じゃあ寝室に着替え用意してるから」


「毎度ありがと」


「雉ちゃんさえ良ければ着替えを手伝いたいな」


 こら。


「調子に乗らない」


「はいはい。わかってますよ」


 とばかりに秋子は食器の片付けに入った。


「やれやれ」


 僕はのろのろと寝室に逆戻り。


 アイロンをかけてくれたのだろうシャツを着て、パンツ、ブレザーと纏っていく。


 ネクタイも忘れずに。


 それからキッチンへ。


「秋子~」


「なぁに雉ちゃん?」


「コーヒー」


「はいはーい」


 あっさりと言って準備を始める。


「別に量子変換でもいいよ?」


「時間には余裕があるし私がしたいの。駄目?」


「まさか」


 僕は否定する。


「秋子は可愛いね」


 ニッコリと笑みを見せると、


「ふややっ!」


 秋子は簡単に狼狽した。


 うん。


 可愛い可愛い。


 無論動揺したとて手元を狂わす秋子でもなかったけど。


 それから秋子お手製のコーヒーを二人で飲む。


 秋子はねぇ。


 僕の結論は知ってるだろうに。


 勿体ない。


 まぁ秋子に依存している僕が言うことでもないけど。


 まるで、


「秋子は僕のお嫁さんみたいだね」


 コーヒーを飲みながらしみじみと。


「~~~~っ!」


 秋子はコーヒーを喉に詰まらせた。


 無理もない。


「ゲホ! ゴホ! ゲホ!」


 むせる。


「雉ちゃん……!」


「そんな動揺することかなぁ」


 誰が見ても出来の良い大和撫子なんだけど。


 しかも可愛い。


 しかも一途。


 しかも巨乳。


 僕が僕じゃなかったら間違いなく抱いている。


 でも僕は僕で。


 秋子は秋子で。


 だから僕らは混じりあえない。


 何だかなぁ。


 コーヒーを飲んでホッと一息。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ