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墨洲の提案5


「ええと……」


 スミスは困惑気味だ。


 オドにおける江戸エリアのクエストフィールド。


 三百人体制で襲い掛かってくる足軽たち相手に無双しているコキアとミツナに胡乱げな視線をやる。


 ちなみにスミスはソードマンである。


 ステータスはそこそこ。


 装備もそこそこ。


 アバター操作はこなれている。


 超過疾走システムへの適性も中々のモノ。


 ただ、


「コキアさんとミツナさんは本当に初心者?」


 あくまで中々程度。


 そんなスミスの言は当然だろう。


 スミスの超過疾走システムのアシストは三倍ちょっとといったところだ。


 で僕ことハイドとコキアとミツナとシリョーは十倍きっかり。


 今後のアプデによってどうなるかはわからないけど現時点のオーバードライブオンラインにおける超過疾走システムの極みである。


 近距離の苦手な魔法使いのコキアと銃兵のミツナではあるけど、あまりに素早いクイックドロウによって三百人体制の足軽を寄せ付けず無双する。


 新生ギルド所属かつグループを組んでいるため誰が倒しても平等に経験値は入るんだけど、こういったVRゲームに慣れさせるため僕らは傍観していた。


 パパパパッ!


 コキアの魔法連続行使と、


 タタタタァン!


 ミツナのコスモガンによる連続クイックドロウが火を噴く。


 瞬く間に雑魚が蹴散らされていく。


 僕とシリョーとスミスは討ち漏らしに対して攻撃をするのみだ。


 基本的に超過疾走システムは慣れるまでが大変だ。


 電子世界においてフィジカルは理論上容易に無視できる要素ではあるんだけど認識は脳に絶対服従。


 であるため超常的加速……つまり超過疾走システムに初心者プレイヤーは対応することが出来ない。


「自身の能力を十倍まで引き上げる」


 と言うは易いんだけど、


「自分には出来る」


 と実にするには難い。


 どうしても、


「そんなことが出来るはずもない」


 という自然界における絶対的常識論が敵となる。


 それを否定できる人間がオドでトッププレイヤーと相成るわけだ。


 その点で云えば僕やシリョーの例外を除いて、あるいはコキアやミツナの様な脳処理並列化によるチートを除いて、自身で超過疾走システムの恩恵を具現化させているスミスは十分にすごい。


 レベル100の限界を突破するのも必然と言えよう。


 ただ環境と相手が悪いというだけだ。


 先述したけど超過疾走システムの恩恵は何も疾駆に限った話ではない。


 跳躍力、反応速度、弾速や魔法の発動および発射速度にまで影響する。


 雑魚キャラの百人や三百人ごとき物の数ではないのだ。


「もしかしてこの中で俺が一番遅いのか?」


 正解ですスミスくん。


 少なくともイレイザーズにおいて君は僕らの疾走の三分の一程度でしかない。


 能力そのものは認めるけどね。


 そんなわけで足軽を蹴散らして僕らは江戸城に侵入する。


 ボスキャラは徳川将軍。


 色々と文句や苦情の出そうな敵である。


 うっかり歴史に名を残すと後世の人間に嬲り者にされるという典型例だ。


 合掌。


 ともあれボスキャラは中々に低レベルプレイヤーには荷が重かった。


 だからって助けるわけでもないんだけどね。


 ウィザードのコキア。


 ガンリアーのミツナ。


 剣技を修めた徳川将軍。


 そしてフィールドは江戸城の狭い一室。


 当然近接戦闘特化型職業の方が有利だ。


 肝心の超過疾走システムも畳の間では十分に効果を発揮できはしない。


 てなわけで、


「おおおおおっ!」


 スミスが特攻した。


 手に持つ剣はスーパーレアアイテム……ジュワユーズ。


 ま、そこそこに珍しい剣だ。


 僕も何度か手に入れて売り捌いたことがある。


「ギルガメスラッシュ!」


 金髪の美少年アバター……スミスの髪色と同じ斬光が剣から溢れて燐光を漏らす。


 ギルガメスラッシュ。


 ソードマンの高位レベルスキルだ。


 高速の二十連撃。


 レベルによるステータスの差異もあって徳川将軍のヒットポイントをガリガリ削り……削り切る。


 元よりレベル20相当のボスだ。


 レベル170台のスミスの敵ではあるまい。


 僕?


 シリョーと一緒に見学。


 というか放置。


「ハイドちゃん」


 これはシリョー。


「スミスちゃんはクラスメイトなのよね?」


「まぁ」


「ミツナ……夏美ちゃんの想い人」


「まぁ」


「ちょっと不審じゃない?」


「まぁ」


「下心が透けて見えるというか……」


「まぁ」


 コピペで返す。


「コキアさん大丈夫?」


 スミスはコキアに心配げな言葉をかけるのだった。


 コキアはおざなりに返事をして僕の方へと歩み寄る。


「どうだったハイドちゃん?」


「なかなかこなれてきているなっては感じてる」


「そっか」


 えへへぇとコキアが笑う。


 可愛いなぁ。


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