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フラグ交差点3


「ガソダム見ました?」


 唐突な言葉。


 隣の席の夏美のモノだ。


「一通り」


 何のことかと言えばアニメの話である。


 夏美は赤い髪に赤い瞳を持つ。


 いわゆる一つのデザイナーチルドレン。


 主に胎児の時点で遺伝子を操作して内外問わず優秀にする施術をされた業の深い子どもたちを指す。


 その恩恵を持って夏美は美少女と相成った。


 髪と瞳が赤いのもそのせい。


 が、これはこれで紅蓮の様な印象を与えて一部の隙もない感想を相手に与える。


 新入生の中でも抜きんでた美少女と云える。


 秋子と夏美。


 新入生可愛い女生徒の双璧を為す二人だ。


 そして二人そろってがっかりでもある。


 秋子については今更。


 そして夏美はいわゆるサブカルオタクなのだ。


 無論ネット社会が形成されたこの現代において電子世界への傾倒は珍しくもないけど、アニメや漫画の話をする《今時の女子高生》は少ないわけで。


 その辺の意識は過去の日本から推移していない。


 オシャレ。


 ブランド。


 香水。


 ドラマ。


 恋愛。


 カラオケ。


 今時の女子はそんな話ばっかりをするため夏美は思いっきり浮いた。


 もうちょっと云うのなら女子グループに入れてもらえなかった。


 が、元より夏美は多数に迎合するような人間ではない。


 そういう意味ではやっぱりがっかりなのだ。


 閑話休題。


「アフロとツャアがアラァを取り合って揉めてるのには首を傾げたけど全体的には面白かったよ」


「どこが一番だった?」


「質量を持つ残像かな。まぁ主人公が一番真っ当だったってのもあるけど」


「でもキャラとしては弱いでしょ?」


 アクが強ければいいってものでもないけど……。


 それから僕と夏美はアニメについてアレコレ考察をした。


 全てを語り終えた後、


「ん。ちゃんと理解してるみたいね」


 満足そうに夏美は笑った。


「その笑顔を他の人間にも見せればいいのに」


 戯言だけど。


「だって墨洲くんにオタクだってばれたくないし……」


「それで切り捨てるならそれだけの存在ってことじゃない?」


「…………」


 ジト目になる夏美。


 赤い瞳が僕を穿つ。


「墨洲くんを悪く言うのは止めて」


 小さな声だった。


 まぁ大にして言うものでもないけど。


「はいはい」


 背伸びしながら僕は受け流す。


「しかして墨洲くんね……」


 チラとそっちに視線をやる。


 黒い髪の短髪は僕と一緒だけどスポーツマン的な爽やかさがあった。


 たしか帰宅部と聞いたはずだけど。


 秋子と夏美を除くスクールカースト最高位と、


『今時』


 の話をして駄弁っている。


 リア充め。


 氏ねばいいのに。


 あえて言葉は選ぶんだけどさ。


 それでも爽やか少年墨洲くんは、落ちぶれ少年春雉くんにとって相容れない関係性と言える。


 さてさて。


「夏美」


 僕は夏美の名を呼ぶ。


「何?」


 答えられる。


「オシャレやファッションやドラマに開眼したら?」


 そうしたら墨洲くんの輪に入れるんじゃなかろうか?


 そんなことを言うと、


「だって興味ないんだもん……」


 ブスッとした表情の夏美。


「元々美少女に生まれたからオシャレには頓着しないしドラマは見ても面白くないし」


 涙さえ誘う。


 蓼食う虫も好き好き。


 本人が承知してるなら僕から言うことは何も無い。


「雉ちゃん? 何の話なんだよ?」


「今時の女子高生の感性について」


「うーん。雉ちゃんらしくないね」


「僕じゃなくて夏美に言ってください」


「夏美ちゃんは迎合しないの?」


「しません」


 いっそ清々しい。


「でもそれが墨洲くん攻略に一番手っ取り早いと思うけどな」


 同意。


 もっとも秋子の言には別の意味も込められているだろうけど。


 曰く、


「雉ちゃんに近づくな」


 である。


 僕?


 もちろん気づかないふり。


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