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とある日2


 もむもむ。


 僕は白米を食べる。


 それから鰹節と生姜の添えられた冷奴を咀嚼、嚥下する。


「うん。美味しい」


 僕がそう言うと、


「……っ!」


 秋子がパッと笑った。


 華やかな笑顔だ。


「ありがと!」


 こいつは~……。


「毎度毎度だけど朝御飯を作ってもらって感謝したいのはこっちなんだけどね?」


「雉ちゃんが美味しいって言ってくれるのが一番嬉しい! そのためにご飯を作ってるみたいなものだから!」


 さいでっか。


 残念だ。


 僕に言う資格も無いのだけども。


 もむもむ。


 白米と冷奴となめこの味噌汁。


 シンプルであるが故に身に染みた。


 秋子を嫁にとる人間は幸せだ。


 秋子が了承するかは別として。


「さてさて」


 ズズと味噌汁を飲む。


「秋子」


「なに? 雉ちゃん」


「今日の予定は?」


「午前中は雉ちゃんの家の掃除!」


 でっか。


 どこまでなんだこの子は。


 改めて僕に言う資格は無いのだけども。


「じゃあ午後はデートしよっか」


「……っ!」


 秋子の瞳孔が開く。


 驚愕しているのだろう。


 さもあらん。


 僕から提案するのは無いとは言わないけど珍しい。


 そもそも僕にとって秋子は、


「突き放したいけど突き放せない」


 という存在だ。


 だらだらと。


 ぬるま湯に浸かっているような感覚。


「これじゃいかん」


 と思いながら、


「これでいいかも」


 と思っている自分が恐い。


 全ては秋子に対する罪悪感によるモノなんだけどね。


 秋子も秋子で、


「雉ちゃんがいれば何もいらない」


 と公言しているため、


「何だかな」


 といった有様。


 閑話休題。


「じゃあ雉ちゃん……私とデートを?」


 そう言っている。


 口にはせず、


「…………」


 ズズとなめこの味噌汁を飲む僕だった。


「じゃあ気合入れないと……!」


 秋子の興奮に、


「そこまでのこってもないよ?」


 と言いたい。


 僕にしてみれば単なる暇潰しだ。


 喜ばれる要素が無い。


 概ね理解はしてるけどさ。


 それに言ってしまえば、


「別に君のためじゃないよ?」


 なんて。


 二人だと何だから秋子を誘っただけで、本質は別にある。


「…………」


 それを言おうかどうか迷ったけど、


「ご馳走様」


 言わないことにした。


 どっちもの不機嫌を買うことは承知してるけど今更だ。


 秋子にしても必至と言えるだろう。


 単純に、


「僕の性格が悪い」


 というだけのことだけど。


「時間は!?」


 秋子ははつらつ気味。


「じゃあ十二時に百貨繚乱で合流しよう」


 真っ当な意見だ。


「モールで昼食をとろうよ」


 量子変換の恩恵によって人は外出の必然性を失ったけど、現実でのデートまでは廃れていない。


 そのためモールやデートスポットは未だもって有り得ている。


 まぁそうでなくとも男女の睦言を囁く場は溢れかえっているのだけど。


「掃除している場合ではないね!」


 秋子は断じた。


「別に掃除してくれても構わないけど」


 僕はぼやいた。


「そんな暇はないよ!」


 でっか。


 嘆息する。


 そして食後のお茶を飲んで、


「何だかなぁ」


 と自分の罪を指折り数える。


「さて……」


 百回地獄に落ちた程度で済む罪だろうか?


 神のみぞ知るんだろうけど。


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