表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/318

とある日1


 タタタタァン!


 と連続して銃声が鳴る。


 霧の都。


 ロンドン。


 そこに現れるシャドウマンというモンスターが銃声が鳴る度に殺されていく。


 影男の名の通り全身が光を反射しないのっぺりとした黒色の人型だ。


「黒いマネキン」


 という表現がしっくりくる姿である。


 濃霧に包まれているため視界は悪いけどシャドウマンの数が百を下ることはないだろう。


 多分。


 だけどこの件に関する限り質は量に勝る。


 なんのことかと言えばオドである。


 正式名称はオーバードライブオンライン。


 並み居る十把一絡げを倒しまくって無双するVRMMORPG。


 そのクエストフィールド。


 ロンドンエリア。


 産業革命時代の時代考証だ。


 タタタタァン!


 タタタタァン!


「あはは!」


 ミツナが笑う。


 赤い長髪が翻り、赤い瞳の中で炎が翻り、トリガーハッピーのようにマスケット銃を連射する。


 撃たれたシャドウマンはヒットポイントを零にして元の影へと還っていく。


 ちなみにガンリアーの銃は例えマスケット銃でもコスモガンであることを明記しておこう。


 タン!


 と軽やかな音を立ててミツナが跳躍。


 空中に身を置いたけど容易に落ちてこない。


 それもそのはず。


 超過疾走システムと電子犯罪の恩恵によってオドにおけるミツナの反射速度、疾走速度、跳躍能力、発射される弾速、諸々が十倍速に相成っている。


「気持ちいいですね~」


 空中で上下逆の体勢になりシャドウマンの群れを俯瞰。


 そして雨の様に銃弾を天空から地上へ降らせる。


 トリガーハッピーだ。


 避けようにも音速の三十倍の速度で発射される弾丸は人間やモンスターのアルゴリズムの埒外である。


「あはは!」


 タタタタァン!


 タタタタァン!


「クイックドロウ」


 なんて言葉も追いつかないほどの連射速度だ。


 身体能力や銃弾能力が十倍に膨れ上がったとなれば決して驚くべきことでもないのかもしれないけど。


 ミツナの(僕を挟んで)反対側でも無双は行われていた。


 コキアだ。


 水流の様な青い長髪の美少女。


 翻る青のカクテルドレス。


 手に持つは魔法の杖。


 ウィザードである。


 その放つウィザード唯一の呪文詠唱のいらない基本攻撃……フィンの一撃はマジックパワーを消費せず遠距離攻撃が行なえる。


 こちらもパパパパッと杖の先が明滅して魔術の弾丸を連続して撃っている。


 それにともないシャドウマンも影へと戻っていく。


 魔法を弾丸に例えるならこちらもトリガーハッピーに相違ない。


 ウィザードはステータスの一つであるスピードが足りないとよく言われるけど、ことコキアに限っては例外だ。


 なにせこっちも一般的な身体能力の十倍で動いているのだから。


 黙々と魔法の弾丸を撃ちながらシャドウマンの数を減らしていく。


 速くなっているのは身体能力や反射速度だけではない。


 ミツナの銃弾の様にコキアの魔法もまた発生速度や発射速度が十倍と相成っている。


 襲いくる無数のシャドウマンに一切の接近を許さず魔法で撃ち滅ぼしていく。


「あはは!」


 タタタタァン!


「…………」


 パパパパッ。


 銃弾と魔法が敵を殲滅していく。


 ロンドンエリアはさほどレベルを必要としていないため超過疾走システムの恩恵を受けているコキアやミツナなら楽勝だろう。


 僕?


 僕はたまにコキアやミツナの撃ち漏らしを処理するに留める。


 コキアはともあれ……なんにせよミツナには高レベルになってもらわなければならない。


 それが契約だから。


 あくまで友誼的な……ね?


 というかこのレベルの雑魚を倒しても僕に入る経験値はしれたものだ。


 で、ある以上やる気が出ないのも必然で。


「やれやれ」


 こちらに襲い掛かってきたシャドウマンを斬り滅ぼす。


 ミラクルレアのグラムに僕のシステムが乗ればこの程度は造作もない。


 そしてフィールドは移り、ボスの出る区域へと進む。


 出てくるボスを僕は知っていた。


 ジャック・ザ・リッパー。


 世界中に名を轟かせる連続殺人犯。


 ロンドンエリアに相応しいボスと言えよう。


 金髪の男が包丁とナイフの二刀流を以て襲い掛かってくる。


 が、


「遅い」


 それが僕の率直な感想だ。


 それは僕だけではなくコキアやミツナの代弁でもあった。


 超過疾走システムの恩恵は二倍。


 つまり僕らの五分の一。


 スピードのステータスにはそれなりに補正されているけど僕たちの反射速度を超えるには至らない。


 そして、


 タタタタァン!


 パパパパッ!


 ミツナとコキアの攻撃がジャックを捉えた。


 滅ぼすまでに大層な時間は必要なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ