大日本量子ちゃん2
僕は疾駆していた。
巨大なボーンドラゴン(ドラゴンを骨の標本にしたらこうなるだろうという姿です)に一瞬で間合いを詰め、跳躍。
首に短刀グラムを埋め込む。
そのまま絶えず疾駆。
一瞬で十連撃の斬撃を繰り出す。
「ギアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
ボーンドラゴンが吠える。
悲鳴の吠えの後にはドラゴンブレスが来る。
それについては熟知している。
青い炎を口から吐くボーンドラゴン。
だけど狙った先には既に僕はいない。
超過疾走システムの恩恵を受けている僕にしてみれば欠伸の出る速度だ。
再度跳躍。
頭部。
首。
心臓。
四つのクリティカルポイントの内三つのソレを切り裂いて、クリティカルヒットを発生させる。
それがボーンドラゴンの最後だった。
ポリゴンの欠片となって砕け散る。
だがそれで終わりではない。
無数のボーンゴーレムが僕を狙って現れた。
一瞬で凡その数を把握する。
多分五十強。
もとよりオーバードライブオンラインは無双ゲーである。
超過疾走システムを使って超常的な運動能力を以て雑魚を鎧袖一触に蹴散らす爽快感を求めるためのゲームなのである。
であるため五十強の程度の敵なぞ問題にならない。
僕は雑魚キャラの群れに突っ込んだ。
速度は敵の十倍。
固有時間も均一に広がる。
敵も。
世界も。
全てが置き去りだ。
「アアアアアアアアアアアッ!」
短刀グラムを振るう。
グラムは正確にボーンゴーレムのクリティカルポイントを切り裂いてクリティカルヒットを成立させる。
それは確殺だった。
元より僕の(正確には僕の操るアバターであるハイドがなんだけど)レベルは九百台なのである。
オドプレイヤーにおいても片手の指で数えられる程度の高みに僕はいる。
そしてレベル九百台のアバターに対応したクエストはまだ実装されていない。
であるため僕はレアアイテムの収集と売買を繰り返しているのだった。
まぁ趣味と実益を兼ねて……ということでもあるけど。
何せ僕のアバター……ハイドはシーフだ。
モンスターの所有するアイテムのスティールとドロップアイテムの収集には事欠かない。
さらにハイドはステータスの内『ラック』を極端に上げている。
であるためスティールとドロップのアイテムはほぼレアアイテムと相成る。
むほほほ。
幾らでも稼げるというものだ。
その代わり基本的なステータスは低レベルのソレなのだけど……ラックを上げるとクリティカルヒット時の攻撃力が上がる。
であるためクリティカルヒットにだけ焦点を当てれば一般的なレベル九百台と攻撃力の誤差は無い。
さらに僕はVRゲーム適性が高いためクリティカルヒットの発現なぞ造作もない。
敵のクリティカルポイントを的確にヒットできるのである。
故に攻撃力が低くても問題にならない。
そんなわけで、
「オオオオオオオオオオッ!」
僕は十把一絡げのキャラを鏖殺してのけるのだった。
二、三匹一気に殺すと追加分で更にボーンゴーレムが生まれる。
無尽蔵に産み出るソレらを切って捨てながら僕は前へ前へと進んでいく。
荒野の先を疾駆して雑魚キャラを薙ぎ倒す。
すると道の先に一つの大きな城が見えた。
そこがボスフロアであることを僕は誰より熟知している。
「「「「「キアアアアアアアアッ!」」」」」
「「「「「ダガアアアアアアアッ!」」」」」
ボーンゴーレムたちが、
「行かせまい」
と阻むけど問題にならない。
僕はボーンゴーレムの群れを蹴散らして城内に入る。
中にはボーンドラゴン三体とボスキャラがいた。
ボスキャラは女性のウィザードである。
クエストフィールド。
ボーンゴーレムが出たのだからこのボスの登場は必然だ。
僕は短刀グラムを構える。
「参る……!」
そして疾駆。
ボーンドラゴンのブレスとボスキャラの魔術が僕を襲う。
が、
「シッ!」
それより僕の反応の方が疾い。
ドラゴンブレスをかいくぐり、ボスキャラの魔術を避けて、僕はボーンドラゴンの一体に接近した。
クリティカルポイントに対して的確にグラムで切り裂く。
そしてボーンドラゴンは消滅した。
残るボーンドラゴンも同じ末路を辿る。
残るはボスキャラ。
が、相手の超過疾走システムの恩恵は五倍。
こちらの二分の一。
正直退屈な相手だった。
魔術の発動より先に僕の二十連撃の斬撃がボスキャラを襲う。
そのどれもがクリティカルヒット。
故にあっさりとボスキャラは死んだ。
レアアイテムを手に入れて僕はほっこり。




