人の夢と書いて2
適当にピコピコとゲームプレイ。
基本的に古書館は私の城だ。
授業中は生徒が来ない。
休み時間には来たら来たで教師のツッコミが出来ない行為にふける。
ソレらについてはスルー。
結果として据え置きされている量子変換機でコーヒーを嗜みながらゲームに没頭が私の日常。
時間が加速する。
「凜」
ケイオスが顔を出した。
視界モニタで時間確認。
昼だった。
「食堂に行きましょう?」
「あいあい」
そんなわけで昼食。
私とケイオスは食堂を利用した。
「凜先生」
「ケイオス先生」
一応名物らしい。
私とケイオスの関係は。
まぁある種の到達点ではある。
実際に結婚してるしね。
いいんだけど。
「今日のメニューは何にしましょう?」
ケイオスはそんな事で悩んでいた。
小さな悩みの一つ。
まぁ幸福の範疇に入るだろう。
「凜は?」
「和風ハンバーグ」
「ではその隣のプッカネスカにしましょう」
そんな感じ。
とりあえず主に感謝して食事を開始する。
適当に切り分けてハンバーグをアグリ。
ケイオスはフォークでパスタを絡め取り一口で食べる。
「ていうかすすっちゃ駄目なパスタは何で麺の形をしているのだろう?」
ラーメンやうどんは豪快にすすれるのに。
「製造が簡単だからじゃないですか?」
ごもっとも。
「はい凜」
パスタを巻き取ったフォークを私の口元に寄せてくる。
「あーん」
「……あーん」
まぁわかってはいたよ?
いたけどさ……。
生徒たちがキャイキャイ騒ぐ。
何だかなぁ。
ゴシップの種。
私とケイオスの関係は乙女の領域に於いては理想の一つなのだろう。
私にそっちのケは無いのだけど。
単に絆された相手がケイオスだっただけで。
何せケイオスは……、
――ズキリ
えーと……あれ……なんだっけ?
「どうかされました?」
ニコニコとケイオス。
「何だろ?」
私としても不思議な感覚。
とりあえず切り分けたハンバーグをフォークで串刺しにしてケイオスの口元へ。
「あーん」
「あーん」
そんな感じ。
食後のコーヒーを飲みながら駄弁る。
「ケイオスは職員室に行かなくて良いの?」
紅茶を飲んでいるケイオスは優雅に笑んだ。
「仕事は片付けましたから」
「要領の良い事で」
皮肉にも為ろう。
可愛くて聡明で財閥令嬢で手際が良いと来た。
なんで私なんかに惚れたんだか。
理屈は……あれ……なんだっけ?
またズキリ。
偏頭痛か?
表情には出さずとりあえずコーヒーを嗜む。
「私なんかには勿体ないなぁ」
ある種の可能性の潰えだ。
「なら一緒にマサチューセッツに行きませんか?」
「面倒」
これに尽きる。
「ですね」
ケイオスとしても冗談だったのだろう。
微笑みがソレを証明していた。
「凜先生と一緒に居る事が僕の幸せですから」
「先生?」
ケイオスは私を呼び捨てるはずだ。
「ま、これもデートという事で」
「デートなら何時でも……何時でも……何回でも……」
したっけ?
また意識にもやが掛かる。
「ちょっと体験したかったんです」
「何を?」
「先生のお嫁さん」
「?」
「もう一人の僕も付き合ってくれてありがと」
「?」
意味不明。
「楽しい夢はすぐ終わる、か。劇と同じですね」
苦笑したケイオスは、年齢相応の少女だった。




