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オーバードライブオンライン  作者: 揚羽常時
『OverDriveOnlineAnother』Episode2:フォーリンカオスラブ
313/318

人の夢と書いて1


「凜。起きて」


 聞き覚えのある声。


「むに」


 春の気温は悪戯だ。


 朝は寒く、昼は陽気。


 そして夜に情熱が。


「凜。朝ご飯ですよ」


 ムニッとほっぺを抓られる。


「痛い」


 刺激を感じて目を覚ます。


「あれ?」


 そして困惑。


 金髪赤眼の女性が裸ワイシャツで私の傍らに座っていた。


 ダブルベッドの……そのへりに。


「誰?」


「まだ寝ぼけてますか? ケイオスですよ」


「ケイオス……ブルーハート……」


 云われてみればその通り。


 輝く金色。


 情熱の赤色。


 等しくケイオスの物だ。


 が、


「あれ?」


 困惑せざるを得なかった。


「えーと……?」


「まだ目が覚めてないみたですね。コーヒーを用意してますから」


 そんなわけでダイニングに。


 私は下着の上にシャツを一枚。


 ケイオスも似た様な物だ。


 コーヒーを飲みながら認識の確認。


 私とケイオスは妃ノ守女学園の教諭。


 ケイオスが卒業してから籍を入れた。


 それから……えーと……、


「何だっけ?」


 細かい記憶を辿ろうとするともやが掛かる。


「一緒に住んでるんだっけ?」


「でなければ起こせないでしょう?」


 ごもっとも。


「ケイオスはMITに所属しなくて良かったの?」


「凜がいる所が僕のいる所ですので」


 さくっとのろけられた。


「何と返せば?」


「さぁ」


 悪戯っぽく笑うのだ。


 その表情が愛おしくて何やら無性に腹立たしい。


「ケイオスの健康は大丈夫なの?」


「でなければ入院してますよ」






 ――ズキリ





「?」


 脳が軋んだ気がした。


 目眩。


「大丈夫ですか? 顔色が優れませんが……」


 サッと不安を表情で描く。


「学園長にはこちらから話を通しますので今日は休まれては?」


「大丈夫」


 こめかみを押さえて深呼吸。


「なんか変な夢を見てたみたい」


「夢……ですか……」


「聞きたい?」


「いえ」


 さっぱりと否定された。


「あんまり面白い話にはなりそうにありませんし」


「かもね」


 苦笑する。


 とりあえず今を享受する。


 朝食は欧州風。


 トーストとハムエッグとサラダとスープ。


 テキパキ片付ける。


 食べ終わる頃には世界とのピントも合っていた。


「もし私がMITに戻ったらケイオスはついてくるの?」


「ええ」


 いっそ穏やかな言葉。


 じんわりと染み入る。


「ケイオスは温かいね」


「凜ほどではありませんけれど」


 誰にとっての何なのか?


 それが分かるのは嬉しい事だ。


 ワイシャツ。


 黒のトラウザース。


 黒ネクタイ。


 喪服だけど着崩しているため葬式用では無い。


 ジャケットに袖だけ通す。


 眼鏡のブリッジを押し上げて視界の調整。


「うん」


 何時ものモブ眼鏡。


「ケイオス?」


 オフィスレディ風のスーツを纏ったケイオスがこちらを見て微笑んでいた。


「お綺麗です」


「ケイオスもね」


「恐縮です」


「こちらこそ」


 そして私とケイオスは、


「行ってらっしゃい」


 のキスを二回して部屋を出る。


 教諭なのだから当然学校で生徒を指導する義務がある。


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