充足と虚無の境界線5
とりあえずお盆という事でコミマに参加。
色々な世界の人間がお台場に集まる。
正確にはお台場を模したセカンドアース……にではあるけど。
私たちもその一角。
アバターでお台場へリンク。
とりあえず詳しくは語らないけどアニメキャラを再現させて貰った。
ダイショを撮られて電子世界に拡散されるのもなんだし。
というかセカンドアースのコミマは基本的にサブカルアバターが常だ。
「ふわぁ」
とか、
「うおぅ」
などと七糸は目を白黒させている。
電子世界で在りながら現実にも劣らない熱気はなるほど驚愕に値するだろう。
それからデータの同人誌を購入していく私たち。
「ははぁ」
とか、
「なるほど」
は七糸の言。
色々なイラストが所狭しと並んでいるのだ。
絵心を持つ人間には新鮮だろう。
私とケイオスはミラクルひじりの同人誌を買い漁っているのみだったけど。
対する七糸は絵と表現で同人誌を評価し、気に入った物を買っていくスタイルであるらしい。
サブカルのイラストも一種のジャンルだ。
食わず嫌いはしないタチのようである。
当然十八禁の同人誌には、
「はぅあ!」
と赤面していたけど。
色々と気苦労が絶えないお嬢様である。
私たちは待ち合わせ場所を指定して一時解散と相成った。
私は企業ブースに行く。
エロゲの新作が売られている。
ついでに関連商品も。
データフィギュアとかデータ抱き枕とか。
もちろん購入した後、粒子変換で物理的に再現も出来はする。
前者はともあれ後者は物理の方に効果が高いのは通念だ。
フィギュアについてはデータでセカンドアースの自己世界に並べて悦に浸るくらいで済むのだけども。
そんな感じでコミマを楽しむ。
凄まじい人の量。
人口密度過多。
世界中のオタクが集まるとも為れば、
「しょうがない」
の一言で済むのだけど。
そして参加者のほとんどがサブカルアバターであるのも一つの業だろう。
同人誌を買い漁った後、私はいち早く待ち合わせの場所に腰掛けた。
時間的には午後だが、まぁ二人はまだ来ないだろう。
そんなわけで私はオドを起動した。
電子世界での画面プレイ。
その程度は呼吸の様に出来る。
「やほ」
私はメッセを送る。
宛先は混沌。
「ええ」
返信。
「今どこ?」
「妖精郷です」
「じゃあそっちに」
そして混沌と合流。
今更だけど銀髪蒼眼のイケメン。
私のオドでの夫だ。
「最近ログインが減りましたか?」
「少し現実がゴタゴタしてね」
事実だ。
ケイオスに惚れたり七糸に惚れられたり。
「リア充で?」
「さすがにそこまでは」
その通りならオドで結婚なぞしない。
混沌とオドをプレイしながらケイオスと七糸とも連絡を取る。
「にゃは~」
とケイオス。
「凄いです。オリジナルより愛らしいイラストです」
と七糸。
「好き勝手に漁りなさいな」
とは私の言。
それからオドで混沌とクエストに挑戦する。
雑魚キャラ相手に無双しながらゲームを進めていく。
「コミマね……」
混沌は考える様にそう云った。
「参加した事は?」
問うた私。
「色々と……」
何やら迂遠な言葉。
まぁオドに今ログインしてる辺りコミマにはいないだろうけど。
まだ一日目だし。
「なんなら一緒に回る?」
「遠慮する」
「別にアバターがソレならいいんじゃない?」
「南無」
どういう意味だっ?
「色々とあるんです」
不分な感じ。
とはいえリアルを割るのは禁則だ。
「さいでっか」
それで済ませる私だった。
大剣を振るって悪魔を駆逐していく。
ついでにバフをかけ回復魔法をかける。
混沌の剣が悪魔の集団を蹴散らす。
討ち漏らしを私が掃討する。
画面プレイでこの高揚感なのだから、
「VRなら如何に?」
とも思う。
「いいんだけどさ」
「何が?」
聡く混沌が問う。
「いえ……何でも」
誤魔化す私。
そんなオドプレイ中に、
「せーんせっ」
とケイオスが声をかけてきた。




