あなたに恋をしてみました５
「とりあえず泡盛」
初っぱなから飛ばすね。
それが私の感想だ。
「凜ちゃんは？」
「とりあえずベルギービール」
「そう？」
「酒には付き合うけど追従はしないわよ」
一緒のペースで飲めば急性アル中で死ぬ。
その日の夜。
二人でバーに来ていた。
とりあえずお盆前に仕事が終わったらしく、
「夜に暇が出来たので飲まない？」
と誘われた。
何時ものバーだ。
バーテンダーとも顔見知りになった。
基本的に二人で飲むときはみゃっこは自重しない。
別に飲み会で自重しているわけでも無いけど、付き合いでビールから入る形だ。
当人曰く、
「酒を飲んでいる気がしない」
という、
「気を違えたか？」
と疑問を持ってしまう剛の者だ。
「とりあえず乾杯」
「お疲れ様でした」
泡盛とビールのグラスで乾杯して飲む。
つまみはチーズクラッカーとカプレーゼとビーフジャーキー。
まぁ妥当な所。
何か家飲みとあまり変わらないけど、出てくる酒が美味いので良しとする。
「凜ちゃん」
ビールを飲んでいるとみゃっこが据わった目でこっちを見ていた。
幾ら泡盛でも酒豪超人みゃっこを酔わせる事は出来ないため、要するに素面だ。
「ブルーハートさんがそんなに魅力的？」
「バレてる？」
「ブルーハートさんを見る目が愛しいって言ってる」
「何でそう思うの？」
「凜ちゃんの事をよく見てるから」
「でっか」
あまり快い事でも無いけど、みゃっこが言うのならそうなのだろう。
「もしかしてケイオスにもバレてるのかな？」
「さぁてねぇ」
そこまでは。
そう言ってみゃっこは泡盛を飲む。
「言っとくけど通報案件よ？」
「障害は大きいほど恋慕の炎の燃料となる」
手を出す気はサラサラ無いけど。
とはいえディープキスしたりお風呂に一緒に入ったり。
ある種の禁忌は犯している自覚もある。
言わないけどね。
「ブルーハートさんの何が良いの？」
「存在」
「あれ？ 凜ちゃんってそんなロマンチストだっけ？」
失敬な。
「恋くらいは私もするわよ」
みゃっこは私を何だと思っているのだろう？
「私じゃ駄目？」
「けんもほろろ」
「教師同士なら大人の責任で済むでしょ？」
「その通り」
頷いてビールを飲む。
「生徒に手を出したら犯罪よ？」
「弁えてはいるわよ」
「凜ちゃん」
泡盛を飲みながらみゃっこは言う。
「本気で私と付き合って」
「ジョークでは無く？ ガチで？ え？ 本当にそっち系？」
「凜ちゃんには云われたくないなぁ」
まぁね。
私はソレにプラスしてロリコンが加わる。
本当に通報案件だなぁ。
警察がブルーハート財閥に逆らうならばと条件は付くけど。
「やっぱり付き合うなら金持ちが良いの？」
ブルーハート財閥の令嬢と六菱工業の社長令嬢。
好意の那辺については問わないけど、妙な縁には相違ない。
グイとビールを飲み干す。
とりあえず次はジンリッキー。
クラッカーをサクサク食べる。
「そもみゃっこは私の何処が好きなの？」
「存在」
「以前にも聞いたなぁ」
主に自身の口から。
「光栄で良いのかな？」
「私の物になって」
「謹んでごめんなさい」
「むぅ」
悔しげな声に隠し味として哀惜が少し。
「凜ちゃんの悪趣味」
「反論の余地も無いね」
する気も無いけど。
「じゃあせめて一回くらい抱いてよ」
「基本的にそっちのケは無いもので」
「今更ソレを言う？」
「好きになった人がたまたま女の子だっただけで別に同性愛を信条にしているわけではありません」
「説得力無いよ」
知ってる。
「なんか梅雨ぐらいから凜ちゃんの周りが賑やかになったね」
「不快を催したのなら申し訳ない」
「言っとくけど私が凜ちゃんを好きになったのは凜ちゃんのせいなんだからね？」
そなの？
