あなたに恋をしてみました3
「ごち」
一拍して食事を終える。
「むぅ」
とか、
「あう」
とか百面相のみゃっこ。
そこに、
「プリンセス」
と別の声が掛かる。
女生徒のソレだ。
私。
ケイオス。
並びにみゃっこ。
三人が声の主を見やる。
黒髪黒眼の普遍的な生徒。
当然ながら妃ノ守は女学園であるため生徒も百パーセント女子。
「?」
いまいち理解していないケイオス。
「凜先生?」
「なに?」
「プリンセスって?」
「まぁそんなところだろうね」
苦笑。
本当は笑っていい案件では無いのだけど。
「ケイオスの事だよ」
金髪を撫でる。
「プリンセス……」
ぼんやりと独白
「お返事を伺いたく存じます」
生徒はそう言った。
「?」
首を傾げるケイオスだった。
「あー」
事情に精通しているのは私くらいのモノだろう。
「とりあえず」
嘆息。
「ケイオスの返事を待っていると?」
「です」
「何故?」
これはケイオス。
「懸想文のお返事を賜りたく」
「懸想文……」
当然ケイオスの記憶には存在しない。
人工天才。
脳のオーバーフロー。
「須磨凜」
という例外を除いて、
「能動記憶を覚えられない」
というカルマ。
当然、ラブレターを受け取った事すら覚えていないのだろう。
その辺を小声で説明すると、
「謹んでごめんなさい」
とケイオスは謝った。
「何故ですか?」
追撃する女生徒。
「僕は凜先生が好きだから」
臆面も無く言ってのける。
「……っ!」
女生徒が息を呑み、
「…………」
みゃっこが双眸を細めた。
女生徒は私を睨む。
「教師が生徒を籠絡していいとでも!」
「全く思っておりません」
食後の茶を飲みながら私は飄々と言った。
この持っている気持ちとは裏腹に。
ケイオスへの愛おしさ。
そこに再現は無いけど、
「倫理を無視する事」
を私はしない。
別にケイオスを軽んじているつもりは無い。
ただ恋にも色んな形が在るとだけ。
ケイオスほど愛らしい女の子に惚れられて、何も思わなければそっちが嘘だ。
最初は困惑。
次に疑念。
哀惜を通り越して感激へ。
罪の在処を問うならば、それは私より兵藤さんに傾くだろう。
その想いを知らなければ私はケイオスを持て余していただろうから。
ケイオスを想う。
それは事実。
「恋愛が惚れた方の負け」
なら私は惨敗している。
無論ケイオスの方もそうだろう。
一応両想いであるため、
「業が深い」
でフィニッシュ。
「プリンセスケイオス! 私と付き合ってください! 幸せにして見せます!」
「他の人間に言って」
特に斟酌もしない。
モブ眼鏡こと凜先生にぞっこんなケイオスであるのだから。
「にゃは」
笑みを漏らして金髪をクシャクシャ。
どうしても笑ってしまう。
ケイオスの純情が愛らしすぎて。
こんなにも想われているのに……。
私には究極的にケイオスを救う術がない。
ズキリと心が痛む。
心的潰瘍。
その根源と言えた。




