人工天才1
「デートしましょう」
「嫌」
完。
「何ゆえです?」
「せっかくの休みだから」
そうなのだ。
学校は夏休みに入ったが、元来コレは教諭には適応されない。
色々と仕事は山積される。
一般的な教諭もそうであるし、
「良く言って税金泥棒」
の私もその通り。
夏休みの間も図書館は利用可能で在る必然、古書館担当の私にも仕事はある。
別段怠ける場所が家か執務室かの違いなだけではあるけど。
それでも久方ぶりに休みが取れたのだから家でまったりしたい。
「凜先生~」
「せめてセカンドアース」
「ならソレで」
簡単に妥協された。
それもどうよ?
そんなわけで二人揃ってクーラーの効いた寝室のベッドに寝転ぶ。
ケイオスは私に抱きついてご満悦。
「リンクスタート」
フルリンク。
電子世界の土を踏む。
場所は私の家。
特別指定されたわけでもないので此処に。
隣にはケイオス。
スッとタクトの様に伸ばした食指をケイオスは私に振る。
アドレスが記載されたメッセだ。
そこに飛べ。
そういうことだろう。
そんなわけで座標移動。
ことセカンドアースには距離という概念が存在しない。
好きなときに好きな場所へ。
おかげでヴェローナにはアベックが集まるんだけど。
ともあれ着いた先は某都。
その一等地。
一応セカンドアースにも地価は存在する。
現実より良心的ではあるが、勝手にデータを構築して領土を持つ事は許されていない。
その上で某都一等地である。
「何処此処?」
もっともな疑問だった。
「知り合いの家」
ケイオスはサクッと言う。
和風の屋敷だ。
門戸があり壁がどこまでも広い屋敷を囲んでいる。
この場所にコレだけ広い家を持つという時点で私の領域外の世界ではあった。
「もし?」
「お晩でございます」
問いかけにケイオスが答えると扉が自動で開いた。
中は桜吹雪だった。
あくまでデータとはいえ……と注釈を付けて。
木製による『自然』と『人工』の調和が図られた武家屋敷。
そこで季節外れに咲くさくらが散って吹雪となっている。
もう、
「何をかいわんや」
である。
「ようこそおいでなさいましたお嬢様」
「はい。お世話になります」
慇懃に出迎えに丁寧にケイオスは答えた。
出迎えた人間の視線がこちらに向く。
「須磨先生でいらっしゃいますね。どうぞゆるりとおくつろぎください。精一杯おもてなしさせていただきます」
「ども」
既に把握されているらしい。
別段驚く事でも無い。
ブルーハート財閥関係なのは見て取れる。
とはいえ何だかね。
「先生」
とケイオスが出迎えを指し示す。
「こちらはブルーハート財閥の日本代理人です。名は兵藤小鳩さん」
「よろしく御願いします」
慇懃に一礼された。
出迎えこと兵藤さんは感じのいい人だった。
「須磨凜です。よろしく御願いします」
私も名乗る。
先述した様に把握はされていても。
「兵藤さん」
ケイオスが話を進める。
「庭を貸して貰えませんか?」
「どうぞ。お嬢様の御願いを聞くためにこの屋敷を構築したのですから」
おだやかに兵藤さんは笑った。
本当に感じのいい人だ。
そんなわけで武家屋敷を歩く。
着いた先は大きな桜の樹が起立している中庭だった。
桜吹雪も依然変わりなく。
「ほわ~」
演出としては中々のものだ。
ブルジョアジー。




