恋も病も患うモノ2
「あれ? 凜ちゃん早いね」
オフィススーツのみゃっこがこっちに気付いた。
「色々ありまして」
肩をすくめる。
「生徒に手を出してないよね?」
「そこまで零落れてないわ」
心外だ。
主に信頼が。
「まぁいいんだけど」
みゃっこは私のネクタイを掴もうと手を伸ばす。
サラリとスルー。
学校側の私は立体映像だ。
アシスト機能は付けられるけど基本的に影法師。
「立体映像なの?」
「ええ」
「仕事的にソレはどうなの?」
「学園長の了解は取ってるし」
「どういった経緯で?」
「話して楽しい事でも無し」
ヒラヒラと手を振る。
「ダイレクトダイブするくらいならこっちに来てもいいんじゃない?」
ダイレクトダイブならね。
一応アバターは画面操作です。
「先生?」
今度は現実の方で呼ばれた。
「どうかした?」
「あの……ごめんなさい……」
「何が?」
「先生の優しさに甘えてしまってです」
「子どもは甘えるのが仕事よ」
片手で打鍵しながら、片手でそっとケイオスの頬に手を寄せる。
「あう……」
「可愛いケイオス」
「先生」
風邪とは違う紅潮をするケイオス。
愛らしいっちゃ愛らしい。
しばし投影機でアニメを見ながら時間を潰す。
私はケイオスの寝ているベッドのへりに座ってアバター操作。
「巨大人型ロボットの時代はまだ来ないのでしょうか?」
「いやぁ」
何年経っても来ない気が。
ブレインマシンインタフェースでは動かせるだろうけど、
「そもそも人型は制圧行為に向いていない」
という欠陥を抱える。
体を支える足を攻撃されれば倒れるしか無い。
ガンダムは格好良いけどあくまでアニメの世界だ。
「むぅ」
唸るケイオス。
「ブルーハートで開発したりはしないの?」
「一応メンツがありますので」
重畳。
仮にガンダムを作れば大顰蹙を買うだろう。
真面目に兵器産業を支える社員たちにも不満は積もるだろうし。
事業経営の第一歩は社員と同じ目線で働く事。
実際にコクピットでガンダムを動かすなら私レベルのインタフェース操作技術が必要になる。
人の形を限定された機関だけで動かすことはそれほど難しいのだ。
私は出来るけどね。
学校側は朝礼。
仕事の確認と意識の確認。
それから終業式。
「夏休みだからと云ってどうこう――」
「実家に帰ってもどうこう――」
「我が校の生徒という自覚をどうこう――」
こう云うとき教諭の言葉は非個性的になる。
別にプレジデントスピーチを求められる場でも無いので基本スルー。
家で優雅にコーヒーを飲みながら直立不動の姿勢。
終業式が終わった。
後はホームルーム。
私は古書館の執務室にアバターを投影して意識を現実に戻す。
「先生」
「はいはい」
「汗をかきました」
「はいはい……はい?」
「拭いてはくれませなんだか」
「裸だよね?」
「それはまぁ」
まぁ寝るときも全裸なんだけど。
この子は。
私はタオルを湯で濡らしてケイオスの汗を拭う。
ふくよかとは云えないけど儚げな美貌に似合う黄金比の体。
少しドキリとした。
見慣れたはずなのに。
一緒にお風呂に入ったりもするのに。
それなのに。
「…………」
何故かケイオスの汗をタオルで拭う事に背徳感が。
――何ででしょ?
「着替えを手伝ってくれませんか?」
「構わないけどさ」
使用人に言えばしてくれるんじゃないの?
多分、
「凜先生にして欲しい」
んだろうけど。
ブラとショーツを身につけさせパジャマを纏わせる。
「しっかりと汗をかきなさい」
「はい」
顔の赤みがもう少し濃くなった気がする。
その意味を私は考えなかった。




