三つの心と一つの想い8
新しく装備した大剣を薙ぐ。
それだけで敵がポリゴンの破片となる。
無双。
そう呼ばれる戦闘力だ。
蹴散らす。
薙ぎ払う。
吹き飛ばす。
「なるほどなぁ」
混沌が敵を狩りながら感嘆としていた。
「マリンはモテるのですね」
マリン。
オドに於ける私のアバター名だ。
「夫としてはその辺どう?」
「ゲームで結婚できれば別にって感じですか。ラジオスターの悲劇ってこういうときに使うんでしたっけ?」
――斬撃。斬撃。また斬撃。切り。突き。穿ち。裂き。
経験値とゲームマネーが貯まっていく。
後はスキルの熟練度も。
混沌にヒールを掛ける。
体力……ヒットポイントの回復。
「ども」
ウィンクされた。
銀髪蒼眼のイケメン。
金髪赤眼のケイオスと対照的な容貌だ。
まぁ意図してそうなったわけでもなかろうけど。
剣を振るう。
十体纏めて敵を斬り滅ぼす。
「結局キープ的な?」
「心外だ」
そこまで悪徳じゃ無い。
いや……「じゃあ何だ」と言われると答えに窮するのも一側面として事実ではあろうとも。
「ならいいんですけど」
いいのかなぁ?
「全員が諦めれば正しく潰えるんだけど……」
「それだとマリンが寂しくないですか?」
「ソレなんだよねぇ」
ハムスターは寂しいと死ぬ。
私も似た様な物だ。
「マサチューセッツなら同性婚も出来るでしょう?」
「それを解決策と言いますか」
皮肉にしても痛烈だ。
「玉の輿」
「ソレは普通男を相手にするときじゃあ……」
「まぁそなんですけど」
苦笑いの混沌だった。
銀髪がなびく。
剣の閃きは一瞬。
全く間に軍勢をかき分ける。
その背中に突いていきながらバフを掛けて雑魚を蹴散らす私。
「うちの嫁は頼りになります」
とは混沌の言。
「まぁそういう職業な物で。結構長くやっているから、互いのフォローは万全よね。比翼連理もここに極まって……」
私は苦笑する。
それから悪魔将軍と対峙する。
大剣を構えて襲いかかってくる。
「現実もこれくらいシンプルだったらなぁ」
そんな事を思う。
別にファンタジーにならんでいいから、
「良い事をしたら対象の好感度が上がる」
という仕様なら私の性格ももう少し穏当になるんだけど。
クイと眼鏡のブリッジを押し上げる。
はい。
いつもの画面プレイです。
将軍の猛攻も凄まじかったけど、混沌も引けを取っていない。
もちろん私も。
妖精郷エリアなら正直、小慣れた。
――レアアイテムが出ると良いなぁ。
そんな感じ。
とりあえず攻撃しながら回復と支援にもパーセンテージを割く。
前衛は混沌だ。
私は援護。
無論大剣持っている以上戦いもするけれど。
ボスキャラの他に雑魚キャラも出る。
ソレらも、まぁ相手にする。
放っておいても支障は無いけど、攻撃をくらうと一瞬アクションが止まる。
であるため露払いは必要だ。
「どうしたものかな」
我関せず呟いていた。
超過疾走システムの恩恵。
最速の領域。
神速で剣を振るいながら混沌が問うた。
「ゲームが?」
「現実が」
「まぁ好意を寄せる人は大切にすべきじゃないですか?」
「名演説」
「本心ですけど……ね……」
そりゃ申し訳ない。
けれど、
「あまり人に好かれると云う事に慣れていない」
これは私のテーゼだ。
でなければコンプレックスまみれの性格は熟成しないのだから。
「業が深いね」
全く以て。




