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夏美のぼっち事情6


 結局懐かれたのだろう。


 そう思う。


 誰にって夏美に。


 何故にってオタクを否定しなかったから。


 ……だと思う。


 で、夏美と好きなアニメやゲームの話をしながらゲーセンで友誼を深めた後、日が沈む前に僕らは解散した。


 解散と言っても僕と秋子はお隣さんだから途中まで一緒……、


「というか」


 土井さん家の夕餉を用意するため途中もクソも最後まで一緒なんだけど。


 フェラーリは個人駐車場に自動で送ってある。


 で、


「…………」


 僕は秋子の淹れた紅茶を飲みながらボーっとしていた。


 うん。


 この時間は至福だ。


 少なくとも僕にとっては。


 食材は質量変換だけど秋子は料理については妥協しない。


 故に食材はともあれ料理の過程は全て手ずから、だ。


 トントントンと包丁がまな板を叩く音が聞こえてくる。


 エプロン姿の秋子が食材を切る音だ。


「秋子~?」


「はいな?」


「お茶~」


 僕は茶を飲み干したティーカップをカチンとテーブルに置いて、次の茶の用意を秋子に進言する。


「はいな」


 秋子は嬉々として茶を用意してくれた。


「何かリクエストはありますか?」


 と問う秋子に、


「梅こぶ茶」


 と端的に答える。


 ティーカップが回収され湯のみが置かれる。


 これあるを悟っている秋子が沸かしていた湯によるものだ。


 茶をすすりながら僕は問うた。


「今日の御飯は?」


 もう完璧にダメ人間の発言だけど幸い責める声は何処からも聞こえない。


「豚汁だよ」


「ん。美味しそうだね」


「雉ちゃんの口にあえばいいな」


「大丈夫だよ」


 僕は楽観論。


「秋子の料理はどれも美味しいから」


「そう?」


「そうとも」


「えへへ……」


 はにかんで笑う秋子の顔が鮮明に思い描ける。


 僕に奉仕できるのが秋子にとっては至福なのだ。


 理解不能の世界だけど、


「まぁいいか」


 というのが僕の結論。


 ええ。


 わかってますよ。


 これじゃ駄目だってことは。


 でも邪険にするわけにもいかず、


「秋子は可愛いね」


 梅こぶ茶を飲みながら秋子のご機嫌をとるくらいしか僕には出来ないのだった。


「あとは浅漬けでいい?」


 あいあい。


「いいですよ~」


 肯定して茶をすする。


 基本的に僕は和食党だ。


 であるため秋子は毎度毎度日本食を作ってくれる。


 別にパスタもフォンデュもステーキも食べれはするけど肉や乳製品は胃に重い。


 必然日本食に傾倒することになる。


 胃に優しいし健康にもいい。


 豚汁なら根菜もとれる。


 良い事尽くめだ。


「白米?」


「だよ」


「御飯の御供は?」


「あー、特に用意してないけど」


「お願い」


「辛子明太子でいい?」


「ばっちり」


 そういうことになった。


 それから三杯ほど茶を飲んでいたら秋子の作った夕餉が振る舞われる。


 白米。


 辛子明太子。


 キュウリの浅漬け。


 豚汁。


 ちなみに僕と秋子の分。


 秋子が僕の世話をすることは秋子の家……紺青さん家の両親には伝わっている。


 それを認めている辺りが何だかな。


 事情が事情だけに簡潔に済まされる問題でもないと思うけど……。


 面倒事は嫌いだから口にはしない。


 そして一拍。


「いただきます」


 白米を明太子と一緒に食べて、口直しに浅漬けを噛み、豚汁で流し込む。


「うむ。美味い」


 率直に僕が言うと、


「ありがと。雉ちゃん」


 秋子はニコニコ。


「でも良かったの?」


 何のこと?


「夏美ちゃんを友達にして」


 憂慮するようなこと?


「だよ」


 秋子に躊躇いは無かった。


 多分秋子のことだから、


「夏美が春雉にほだされないか……」


 と問いたいのだろう。


「そも前提からして夏美は墨洲とやらに近づきたいがためにオドをプレイしようとしてるんでしょ? なら夏美の想い人は墨洲とやらだろうさ」


「過去は未来を約束しないよ?」


 それを君が言う?


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