三つの心と一つの想い3
それからブルーハート財閥の使用人によって準備された夕餉を取ると、私は外着に着替えた。
「何処かに行くんですか?」
「飲み会」
定期的なイベントだ。
珍しくも無い。
「サボっちゃえばどうでしょう?」
「ケイオスが酒に付き合えるならね」
プニッとケイオスの鼻先を指で押し込める。
「むぅ……」
「大人には大人のルールがあるのよ」
「オナニーくらいなら出来ますけど?」
「毛が生えたらもう一度言って」
「それは……」
「それは?」
「いえ。何でもありません」
「?」
少し意味不明だった。
赤い瞳の宿す光は哀惜にも似て。
「何かしらに追い詰められている」
そんな感じ。
「大丈夫?」
そっと頬に手を添える。
「僕は……まぁ……」
嘘八百。
追求する気も無いけど。
「早めに帰ってくるから」
元々二次会に行く予定も無い。
「絶対ですよ?」
「オナニーでもして待ってなさい」
「はい」
そこで肯定するのかぁ。
色々と残念だ。
「そんなときの量子ちゃん!」
いきなりマイルームの投影機に干渉が入った。
セミロングのツインテールが眩しい美少女(映像)が映し出される。
「量子ちゃん……」
「話は聞いたよ!」
何処でだ。
真摯な疑問だったけど口には出来なかった。
少し怖い。
「ケイオスは私と遊びましょう」
「いいの?」
「暇してるんで」
ソレもどうよ。
「大丈夫です」
胸を叩く。
「番組のスケジュールにも空きがありますし、監視体制は並列して行なってます故」
「…………」
盤石なのは良いことだ。
監視社会の悪癖でもあるけど。
「というわけでケイオス?」
量子ちゃんは気安く呼ぶ。
「どのエロゲをしますか?」
エロゲなんだ。
それもどうよ?
「先生に似たヒロインが出てくる奴で」
モブ眼鏡がエロゲに出てくるの?
基本的に私の自己評価は低い。
少なくともケイオスのそれよりは断然に。
「ま、いいか」
好きにさせることにした。
量子ちゃんなら万が一も無いだろう。
スパコンの演算に支障が無ければ。
たまに哲学的ゾンビじゃない気がするのは、
「杞憂かな?」
少し疑ったりして。
「では良い子にしててね」
再度金髪を撫でてから外に出る。
熱帯夜。
真夏の夜。
「地球全体にクーラーをかけるというのはどうだろう?」
そんなことを思った。
反動の余熱は宇宙に逃がして。
輻射熱で絶対零度では無いけど宇宙が寒いのも事実。
であればクーラーの余熱程度ではどうにもならないだろう。
ここに地球温暖化は解決する、
「と良いなぁ」
そんな馬鹿なことを考えた。
ピコンと電子音が鳴る。
みゃっこからだ。
「もう始まってるよ~」
そんなメッセ。
「はいはい」
返事を返す。
何時もなら速攻で会場に行くのだけど、今日は使用人の夕餉を取っていたため、乾杯に間に合わせるのは諦めていた。
なおケイオスの懐き具合もコレに乗算される。
私を想うケイオスの純情はかき立てられる物がある。
そっちのケは無いつもりだったけど、
「何かと純情で一生懸命だしなぁ」
ぼんやりと心情を呟く。
誰にも聞こえない様に。
とりあえずはランドアークを借りて乗者。
酒の夜に向かう私だった。




