七糸の逆襲5
「とりあえずパンツを穿きなさい」
脱ぎたてほやほやのパンツを、七糸に返す。
「先生が穿かせてください」
「…………」
口が、への字に歪んだ。
「性的な目で見ていないのでしょう?」
「そうだけど」
「なら興奮の余地も無いですよね?」
「あんまり警察のお世話にもなりたくないかなぁ……」
本音だ。
社会的立場は、あまり気にしていないけど、不名誉を被るのは、歓迎すべき事柄でも無かろう。
無念。
「どうぞ」
スカートをたくし上げる七糸。
ノーパンの素股が見えた。
ダイショを撮ったら、犯罪の証拠になるため、自重。
「じゃあまず右足を上げて」
足に、パンツを通す。
「次は左足」
同文。
それからスススとせり上げて、パンツを完全に装着させる。
「先生」
そんなパンツ越しの股間が、私の顔にダイブしてきた。
パンツを穿かせるために、足を曲げて、低姿勢になっていたため、私の頭部の高度が、七糸の股間の海抜と、イコールで結ばれていたのだ。
「あん」
股間に刺激を感じて、鳴く七糸。
「先生のえっち」
「どういう意味よ」
不名誉極まりない。
「いっそ最後までしませんか?」
「他の人を見繕って」
そんな私の手を取って、自身の胸に押し付けてくる七糸。
「先生にならオールオーケーですので」
「光栄ね」
肩をすくめる。
「禁断の恋も良いものですよ?」
「自認してはいるのね」
疲れるなぁ。
「須磨先生は不能じゃありませんよね?」
「まぁ一応健全ではあるわ」
おぼこだけど。
「初めては是非私に!」
「却下」
「むぅ」
何で残念そうな顔が出来るのよ?
「青春は夢のために使いなさい」
「むぅ」
また残念そうな顔だった。
「何か趣味は無いの?」
「絵画です」
「高尚だわね」
素直に、そう思う。
「一応美術部員ですので」
「裸婦画とか描くの?」
「先生がモデルになるなら幾らでも」
それもなんだかなぁ。
「先生は自分の世界を持ってますか?」
「あまりそうでもないわね」
「私は持っているんです」
別に珍しいことでも無い。
思春期の精神は、そんなものだ。
「その感じる世界は小宇宙だとしたら大宇宙に出力するのに技術が要ります」
「その手段として絵画を?」
「はい」
「将来の夢は画家?」
「えへへ。まぁ。一応」
はにかむ七糸。
私はコーヒーを一口飲んで、
「夢を語る笑顔の方が誘惑してくる打算の笑顔よりよっぽど魅力的よ?」
「そうなのですか……?」
「ええ」
優雅に頷いて、またコーヒー。
「じゃあ先生の裸婦画を描かせてください!」
「あ、また俗物に戻った」
「むぅ」
何がよ?
「ま、世界の出力なら絵画は妥当だと思うけど」
私の場合は、それがプログラムだっただけで。
何を拠り所にするかは、人それぞれだ。
もっとも、世界を持っていない大人も、結構な数だけ居たりするけど。
その辺は語ると、ややこしいので割愛。
「美術部ね」
あんまり審美眼を持っていない身としては、遠くの出来事だ。
「そうなんですか……」
少しがっかりした様な七糸の言。
「まぁ頑張りなさいな」
気休めを口にする。
「先生?」
「何でしょう」
「パンツを見せてください」
「面倒」
私は、トラウザースを穿いて、ベルトを締めている。
男用のスーツだ。
「愛しの先生のパンツを見られれば、絵画のイメージが湧くと思うんです」
何その残念な感性。




