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夏美のぼっち事情5


「くあ……」


 欠伸。


 やっぱり授業……というか勉強という奴は何時になっても冗長なモノらしい。


 古典青春ラブコメでも、


「授業大好き!」


 なんてキャラはあまり見ない。


 僕としては学業は二の次なんだけど教育が国力の基礎であるからどうあっても未成年は刻苦勉励を強要される。


 鬱陶しい。


 愚痴って解決する問題でもないけどね。


「雉ちゃん雉ちゃん」


 秋子がニコニコ笑顔で僕を呼んだ。


 心なしか歩き方が弾んでいる。


 それにともなって巨乳も弾んでいるんだけど、おそらく自覚はあるまい。


 六根清浄六根清浄。


 ちなみにブレインアドミニストレータによって脳の量コン化が確立している現代において黒板の説明をノートに移したり教科書をカバンに詰めて家と学校を行ったり来たりと云うことはありえなくなっている。


 データは全て頭の中。


 脳の並列化は(例外は……まぁあるんだけど)禁止されているため結局アーティフィシャルインテリジェンスの授業を聞いて理解する他ない。


 閑話休題。


「きーじーちゃん?」


「なーあーにっ?」


「何処に遊びに行こっか?」


 遊びに行くことは決定事項らしい。


 らしいっちゃらしい。


「春雉。秋子」


 僕と秋子を呼ぶ声が聞こえた。


 すぐ隣の席から。


 当然夏美だ。


「なに?」


「私たちは友達ですよね?」


「だね」


 口頭のモノであって契約書の類は用意してないけど。


「じゃあ私とも一緒に遊んでくれない?」


「――――!」


「いいよ」


 何か言おうとした秋子の口を塞いで僕は肯定した。


 どうせ秋子のことだから、


「雉ちゃんと私の邪魔をするな」


 といった内容を一字一句には違いがあるものの言おうとしたのだろう。


 実際に夏美の提案を受け入れた僕を、


「……っ!」


 秋子は非難がましく見つめた。


 視線にあるのは失望と嫉妬だ。


 ちなみに見つめただけで睨み付けなかったのは……業によるものだろう。


「どこ行く?」


 僕が尋ねる。


「雉ちゃんの行きたいところ」


 秋子は先を見つめてはいないらしい。


「…………」


 仕方なく僕は視線を夏美にやる。


「え? 私が決めていいんですか?」


 コックリ。


 中略。


「ゲーセンとはね」


 レトロだ。


 派手なネオン満載の看板と外まで聞こえてくる大音量の名残が出迎えてくれる。


 ちなみに現在においてゲーセン……ゲームセンターはあまり実入りの良い経営とは言えない。


 いわゆる一つのレガシー。


 そんなことしなくともブレインユビキタスネットワークを介して量コンにゲームをダウンロードすれば幾らでも遊び方があるのだ。


 ほとんどVRゲームだけど。


 いちいちゲーセンに行く理由が見当たらない。


 とはいえVRゲームと違いインタフェースを介したゲーム操作に美学を感じる人間もいるわけで。


 夏美もその一人らしかった。


 僕としてはVRゲームに傾倒しているためコントローラによるゲームは苦手なんだけど別に付き合いだと思えば意識することもない。


 ゲーセンの店内に入ると広告のイメージウィンドウが視界に幾つも表示される。


 色々と節操がない広告だ。


 一昔前……ゲームセンターはお金を消費して遊ぶものだったらしい。


「らしい」


 というのは僕がその世代じゃないからわからないだけだ。


 風聞で「そういうことだ」と聞いている。


 が現在におけるゲーセンのゲームは概ね無料で遊べる。


 その代わりにゲームで遊ぶにあたってスポンサーの広告がイメージウィンドウの形をとって表示されるというわけだ。


 ポップする広告を端から削除している僕と秋子を引っ張って夏美は一つの台に着いた。


 見るに、


「魔法少女大戦」


 と銘打たれたゲームだ。


 古今東西の魔法少女を(既に過去の遺物である)ドット絵にて表現して平面格闘ゲームに昇華した代物の様だ。


 当たり前だけどネット対戦可能。


 夏美は伴之もみじというキャラを選択してネットの向こう側のプレイヤーと対戦を繰り広げる。


 後から聞いた話だけど、伴之もみじは『外法少女オニ狩ルもみじ』と呼ばれるマイナー魔法少女作品のキャラとのこと。


 夏美はオニ狩ルもみじが好きらしく、伴之もみじを操作しながら作品の素晴らしさを僕と秋子に語った。


 まぁ確かにこれなら、


『今時の女子の会話(オシャレや服飾や芸能界などなど)』


 に加われないのも必然だ。


 本人が楽しそうだから言わないけどさ。


 僕と秋子はと言えば、てきと~に夏美のゲームプレイを見たりUFOキャッチャーをしたりとそんな感じだった。


 物珍しさもあったしね。


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