休日の変質3
砕け散るエヴァンジェルアーマー。
「くっ。ニーチャー軍にあんな強敵がいたなんて!」
ひじりは、片膝をついて、息を荒々しく吐く。
――負けるのか?
「ここまで追い詰められても尚、貴様は神の祝福を信じるか?」
ニーチャー軍はひじりを追い詰める。
「理解できぬなら何度でも言おう」
ニーチャー軍の将軍が一角。
ジューダス将軍の言葉。
「神は死んだ」
「死んで……ない……」
ギリッと歯を噛みしめる。
「信仰が厚いのは結構なことだが、戦力差を信仰心で覆すのは無理があると思うがな」
「だからといって主の御心を否定されちゃたまらない……よ」
小学生の言葉ではない。
「ならあの世で神に懺悔しろ」
ジューダス将軍は、神滅剣を振りかざす。
「これで終わりだミラクルひじり!」
「主よ」
これで終わり。
ミラクルひじりは、役目を全うできなかった。
地獄に落ちるだろう。
主を辱めたのだから。
主の課した試練を、達成できなかったのだから。
だから最後に。
ジューダス将軍に殺される寸前までは。
主に祈ろう。
「ジーザス」
だが敬虔な女の子が神に祈れば、天使は必ず舞い降りる。
ガキン!
剣と剣が打ち合う音がした。
「なっ!」
驚いたのはひじりか。
いや、ジューダス将軍だ。
その持つ神滅剣が、ひじりの振るった聖剣に、防がれていた。
「祈り捧げる少女の元にこそ、我ら天使は舞い降りる」
ひじりの口が、そんな言葉を紡いだ。
「降霊!」
「憑依!」
ニーチャー軍が戦慄する。
砕けたエヴァンジェルアーマーが、光子となって、ひじりを包む。
「これは……?」
意識を取り戻したひじり。
彼女が、手にした聖剣と、光子のドレスを見やる。
「聞こえますかミスひじり」
心の奥底から聞こえてくる不思議な言葉に、
「あなたは?」
誰何するひじり。
「主の御使いです。そしてあなたの守護天使でもあります」
「私の……守護天使……」
「主は人を遍く救うもの。無論のこと敬虔なるミスひじりにだって、主の慈愛は陽光のように届いていますよ」
「う……うぅ……」
「今まで頑張りましたね。良く戦いました。もはやミラクルひじりは聖人の域に達しているでしょう」
「主の御心のままに」
「だからこそ……」
「だからこそ?」
「勝てる」
「アーマーも砕けてコアを破壊されて……それでも……」
「その信仰に偽りなければ……真実があなたを救うでしょう! さあ!」
守護天使は語る。
「喝采しましょう! 真実の愛を!」
「エンジェルアーマー展開!」
次の瞬間、ひじりの裸体を包んでいた光子が金属化して、新たなミラクルひじりの鎧と様変わりした。
騎士の甲冑と、淑女のドレスを、折衷したようなエンジェルアーマー。
その最大の特徴は、背中からフォトンウィングが展開されていることだろう。
自己修復も問題なく。
「さあミスひじり。飛びなさい! 飛び立ちなさい!」
「はい!」
そして、ひじりは、翼で風を打ち、空へと飛翔する。
「飛行能力だと!」
ジューダス将軍が狼狽える。
「これこそは主の代行! メギドブレイド!」
聖剣メギドブレイド。
ソを振るった、ひじりの剣閃をなぞる様に、炎の斬撃が飛んで、
「――――!」
「――――っ」
ニーチャー軍を滅ぼしていく。
「エンジェルアーマー……まさかその域に達したというのかミラクルひじり!」
「知らないけど」
小学生には理解が難しい。
だが必然ではあるのだ。
初期に巻き込まれて戦っていたひじりには出来なかった変身。
ニーチャー軍への抵抗に献身した今のひじりだからこそ……神に誉れを謳われた聖人のレベルに達した今のひじりだからこそ……守護天使の力を顕現し、主の代行者となれるのだ。
メギドフレイムを構えるひじり。
神滅剣を構えるジューダス将軍。
「全ては主の御心のままにぃー!」
高所からの加速落下。
翼で風を打ち据えて、流星の様に墜ちてくるひじり。
ジューダス将軍はソレを見上げる。
決着は一瞬だった。




