休日の変質1
ビバ日曜日。
教師にはあまり縁のない休日だけど、今日はしっかり休みだった。
図書館の司書も、いつもの半分の体制。
というわけで今日は一日暇している。
で、あれば、
「せーんせっ」
ケイオスがつけ込まないわけがない。
「デートしましょう?」
朝食中。
いとも平然と誘ってくる。
「でも教師と生徒だしなぁ……」
そういうことだ。
「僕は気にしませんよ?」
「私が気にするの」
ていうか女同士だし。
食後のコーヒーを飲む。
「で、デートって何するの?」
「今日から公開される劇場アニメ……『奇蹟少女ミラクルひじり』のチケットが何故か三人分……」
「マジで!?」
奇蹟少女ミラクルひじり。
所謂一つの魔法少女物。
ただ宗教色が濃い作品であるため、宗教観の薄い日本人だからこそ創れたとも云える傑作にして怪作。
タイトルから察せるように一神教をテーマの主軸としている。
当然サブカルオタクとしては、見に行かないわけも無い。
ただチケット取れなかったんだよね……。
そのチケットが質量として目の前にある。
「凜先生の一考次第で」
「譲ってくださいケイオス様!」
ガシッとチケットを持っているケイオスの手を両手で包み込む。
「そこまで簡単に墜ちるとは思いませんでした」
「ミラクルひじりファンです故」
「面白いですよね?」
「うん。名作」
「エヴァンジェルアーマーエロいですし」
「いや、エロいというならニーチャー軍の女将軍閣下のコスチュームこそ」
とりあえずミラクルひじりで語り合う。
「さすが凜先生。わかっていますね」
「そういうケイオスもね」
それからふと気付く。
「お国的にケイオスに反感は無いの?」
「僕は空飛ぶスパゲッティモンスター教ですから」
宗教そのものを信じていないと。
「神なんて所詮偶像です。本当に善良な神が居るのなら宗教家が一財産築く事が既に矛盾していますでしょう?」
「まぁね」
宗教に於けるパラドックスだ。
貧乏人ほど良く拝む。
そんな皆知ってるのにあえて口にしないことを平然とケイオスは口にした。
「善良と道徳を説くのは支配者の特権です。ブルーハート財閥が表向き一神教を称えているのは帝王学の一環ですよ。民衆が暴動を起こさないように良心を持たせて不幸や貧乏を『自分の信仰心が足りないから』と自己弁護させるための……ですね」
そこまでわかっているのも帝王学の一環か。
空恐ろしい。
「というわけで見に行きましょう」
「セカンドアース?」
「ええ」
実際の映画館もないではないけど、劇場アニメもアイドルのコンサートのようにセカンドアースが主軸ではある。
「例えば大日本量子ちゃんとか」
「呼んだ?」
声が聞こえた。
存分に聞き覚えのある声。
主にテレビやニュースで良く聞く声。
投影機がヴンと音をさせて、女の子が映し出される。
「…………」
ケイオスも大概だけど、投影機で映された少女も相当だった。
セミロングのツインテール。
圧倒される美貌。
カジュアルで、かつセンスのある服装。
お茶の間アイドル。
大日本量子ちゃんその人だった。
「え?」
困惑。
「ケイオス?」
「なんでしょう?」
「二次ェクトは禁止よ?」
「知っています」
「量子ちゃんの版権は特に厳しいから……」
「ソレも知っています」
「…………」
しばし沈黙。
「二次ェクトでは無いと?」
チラリと量子ちゃんのアバターを見る。
「電子犯罪ダメ、ゼッタイ! 日本の国民のあなたの大日本量子ちゃんだぞ」
指鉄砲をバキューン。
クラッカーを弾いたように、映像演出として色紙と紙吹雪が、量子ちゃんの指先から飛び出した。
「え?」
モノホン?




