三つ巴5
それから四人でテーブルを囲む。
私こと須磨凜。
ケイオス=ブルーハート。
六菱七糸。
みゃっこ。
これで四人だ。
内、後半の三人は、美人と呼んで良かった。
モブ眼鏡の私が、逆の意味で異彩を放っているかのように。
三者三様に私に興味があるみたいだ。
有りがたいことである。
出来れば他人事として楽しみたかった。
まったき当事者の切なる願い。
「凜先生?」
ケイオスが呼ぶ。
「何でがしょ?」
「あーん」
スプーンでオムライスを掬って私の口元へ。
「…………」
沈思黙考。
「何のつもり?」
「愛の証明」
確かにその通りではあろうけど。
「須磨先生」
「凜ちゃん」
「何でっしゃろ?」
「あーん」
「あーん」
それぞれに料理を掬ったスプーンを私の口元へ。
ミシィと空間が軋んだ。
三者三様に人気のある人物がモブ眼鏡に、
「あーん」
である。
そりゃ空気も軋む。
「冗談は余生春爛漫」
「凜先生は僕のです……!」
「凜ちゃんは私の!」
「須磨先生は渡しません」
「キシャー!」
「カフーッ!」
「フニャー!」
三つ巴だった。
「モテる女も大変だ」
鴨ざる蕎麦をたぐってすする。
本当に、
「このモブ眼鏡の何が良いのか?」
理屈が破綻している。
乙女心は複雑とは云うけれど。
それにしたって一週間後の天気の方がまだ読みやすい。
そんなことを思っていると、
「凜先生」
「凜ちゃん」
「須磨先生」
「…………」
蕎麦をズビビ。
「何か?」
「「「この二人は何なんですか?」」」
知らんよ。
そんなもん。
本気の本気でその通りだ。
ぶっちゃけた話、
「何が彼女らをそうさせるのか?」
それが証明不能だ。
蕎麦をズビビ。
「で」
簡潔に言う。
「お三方は冷静に」
空気が軋んで仕方ない。
「無茶を」
「言い」
「ますね」
だろうけどね。
「須磨先生?」
これは七糸。
「私の嫁になられれば一生養って差し上げます」
「ズルい!」
みゃっこが叫んだ。
七糸。
六菱七糸。
日本を代表する六菱工業。
その社長令嬢だ。
さすがにブルーハート財閥には敵わないにしても、
「日本の最強の一角」
には違いない。
六菱の令嬢。
であるためチヤホヤもされる。
「別に良いかなぁ」
私としては、金銭に困っているわけでもないから、その辺はどうでもいい。
「凜先生?」
「はいはい?」
「僕と結婚したらアニメ見放題だよ?」
「マジで?」
魅力的な提案だった。
「そこに食いつくの?」
「そこに食いつくんですか?」
「まぁ」
サブカルオタクですし。
あと科学オタク。
隠しているわけじゃないけど積極的に話すことでもない。
南無三宝。




