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夏美のぼっち事情4


「ところで」


「なぁに? 雉ちゃん……」


「気になったんだけど」


「何が?」


 まぁ、


「雉ちゃんがいれば他にはいらない」


 な秋子さんには些事だろうけど、


「夏美」


 僕は僕の隣の席で『一人で』弁当を食べている夏美に声をかける。


「何です?」


 夏美が答える。


「夏美には友達いないの?」


「それに何か問題が?」


「断じて行えば鬼神も之を避く」


 とはいうものの、ぼっちに信念も無かろう。


「君なら女子グループが放っとかないんじゃないかな?」


「会話が合わないんだもん」


 どゆことよ?


 夏美はもむもむと弁当を食べて嚥下。


 それから、


「私、オタクなんですよ」


 そんな言葉が爆発する。


 所謂一つの、


「暴露」


 と云う奴だ。


「私はアニメやゲームの話をしたいんですけど……今頃の女子はオシャレとかドラマの話ばっかりで」


「あー」


 やばい。


 泣きそう。


 哀悼の意を捧げたい。


「で」


 夏美は結論付ける。


「結局女子と交わっても面白くないから……」


「ぼっち……と……」


「そゆこと」


 コックリと頷かれる。


 駄目だこいつ……早くなんとかしないと……。


「そもそも私、ドラマの出演者の見分けつきませんし」


 あ。


「それはわかる」


 僕もマスクドライダーを見ていて誰が誰かわからない時がある。


 結局興味ない人間以外は見分けがつかないということだ。


 草加さんは別だけど。


 閑話休題。


「てきとうに話を合せるわけにはいかないの?」


「苦痛です」


 さいですか。


 重症だ。


「そも春雉に言われたくありません」


「なんでさ?」


「春雉と秋子も二人ぼっちでしょう」


「…………」


 一分一厘反論の余地が無い。


「隣で夫婦漫才を聞かされるぼっちの身にもなってください」


「雉ちゃん雉ちゃん」


「何でっしゃろ?」


「夫婦だって」


 秋子は少し興奮しているようだ。


 何が嬉しいかは、


「ま」


 わからんじゃないけど。


「じゃあ僕たちと友達になろう」


「ふえ?」


「ふえ?」


 まったく同じ反応をする秋子と夏美。


 それから、


「むぅ……」


 と秋子が不機嫌になり、


「はやや……っ」


 と夏美が赤面した。


「ともだち……?」


 頬を赤らめてチラチラとこちらに視線をやる夏美。


 うん。


 趣がある。


「でも私オタクだよ? 気持ち悪くないの?」


「別に僕は気にしないしなぁ」


「私は気にするよぅ」


「秋子の意見は却下で」


「うぅ」


「そんなわけでとりあえず一緒に昼食をとろう。ほら、弁当と椅子をこっちに寄せて」


「いいの?」


「むしろ悪い点を探すのが難しいなぁ」


「ふぅん」


 しぶしぶと云った様子で僕の机に弁当を置き直して椅子を接舷させると、僕と秋子と夏美のトリオとなった。


 クラスの人間がざわめく。


 デザイナーチルドレン。


 赤い髪に赤い瞳の美少女。


 信濃夏美。


 黒髪ロングに黒い真珠のような瞳の美少女。


 大和撫子の顕現。


 紺青秋子。


 美少女の中でもトップクラスに位置する二人が冴えない男子(僕のことである)と昼食を共にしているのだ。


 昼休み故学食に移動している生徒が多かったけど教室に全くいないわけではない。


 邪推されるに十分な状況だ。


 無論、


「知ったこっちゃないけどね」


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