三つ巴2
「プリンセス!」
校舎側に向かって歩いていると、そんな声が聞こえた。
「何か」
と問えば学園の生徒のソレだ。
「おはようございますプリンセス」
「はぁ。おはようございます」
気の抜けたケイオスの返事。
ギュッと私の腕に抱きついて力を込める。
「須磨先生。おはようございます」
「はい。おはよさん」
ヒラヒラと手を振る私。
「お二方は如何様な?」
それは私が聞きたい。
「まさか須磨先生……プリンセスを籠絡して……!」
すっごい不本意。
ケイオスに至っては警戒してるし。
「プリンセス。参りましょう?」
クラスメイトだろう生徒がそう云った。
「先生?」
ケイオスが私を見上げる。
「生徒は授業に臨むこと」
素っ気なく言う。
「はい」
聞き分けよく頷いてケイオスは生徒たちに引っ張りだこ。
「人気あるなぁ」
さすがは転校初日でプリンセス。
「須磨先生」
執務棟に向かっていると、そんなお声がかかる。
「?」
声のした方を見やる。
六菱さんが居た。
六菱七糸。
アルビノの白い瞳。
ケイオスに肩を並べる美貌。
それから濡れ羽色のポニーテール。
ワンブレスで、
「美少女」
と言える生徒だ。
ちなみにプリンセスでもある。
ケイオスと六菱さん。
二人の美貌が飛び抜けていてプリンセスをどちらにするかは生徒の話題……あるいはニュースでもある。
「ケイオスさんと一緒に登校しましたね?」
「だぁねぇ」
「お付き合いを?」
「いいえ?」
そこは確かだ。
「プリンセスに気に入られているのですか?」
「そういうことになるのかな?」
肩をすくめる。
「ケイオスは先生を?」
「好きみたいだね」
さりとて私はそっち系じゃないのだけど。
「ふむ……」
思索に励む六菱さん。
「プリンセスの座が脅かされて困ってるの?」
「まぁそんなところです」
先日まで、
「プリンセス」
と持て囃されていたのだ。
立つ瀬がないのは自然だろう。
ケイオスは至高の座……プリンセスに転校初日から格上げされたのだから。
「イジメは堪忍ね」
釘を刺す。
「ゴッドアイシステムが働いてるから」
「そんなことはしませんよ」
「なら良し」
事態は解決してないけど。
「先生はケイオスさんをどう思っているのですか?」
「尊敬すべき人」
他に無い。
「尊敬?」
胡乱げな瞳。
まぁドクターカオスを知らなければ然程でもないだろうけど。
そこまでをお嬢様学校の生徒に求めるのは酷だ。
「色々ありまして」
「…………」
少し懸念するような企むような顔の六菱さん。
「何か思う所でも?」
「ないと言えば嘘になりますが」
「六菱さんとしても高校生なんですから大人の対応を求めますよ」
「七糸です」
「ん?」
「七糸と呼んでください」
「七糸さん?」
「さんはいりません」
「七糸?」
「結構です」
「あまり礼儀を覚えられない呼び方だね……」
ケイオスも呼び捨ててるし。
七糸が良いなら良いんだけど。
とりあえずはまぁ、
「勉強を頑張りなさい」
ポンポンと頭を軽く叩いて七糸に激励。
「はい」
頷いて場を立ち去る七糸だった。




